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短編小説

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短編小説『結婚記念日』

短編小説『結婚記念日』

「ねえちょっと、あんたどう思う?」

午前2時、北千束のマンションからクミコが電話をかけてきた。

「どうって」 

主文あと回し。主語がないのは、ほんとうに腹が立っている時のクミコの癖だ。

「テツオがね、あたしに今日、花束を買ってきたのよ」

テツオというのは口数少ないクミコの夫のことだった。何度か会わされているが、わたしはこれまで彼が三言以上喋っているのをいちども聞いたことがない。

「お花

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