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【実録】40歳バツイチ女がマッチングアプリで年下彼氏に出会うまで(4)

いらっしゃいませ!さえこです。いつもお疲れ様です。今夜もゆるりと読んでいってくださいね。

【実録】シリーズ連載4回目。前回の記事はコチラです☆

https://note.com/saeko_111/n/nfff675b09cfe

【前回までのあらすじ】
39歳バツイチのさえこは、マッチングアプリで知り合った大ウソつきのヒロくんに「実は既婚者なんだ」と告白される。
ショックを受けるも、それから数ヶ月にわたり、別れることができず関係は続いていた。そんなある日、彼がマッチングアプリに登録していることが判明する。「さえこがいなくなる恐怖に耐えられない」とのたまう彼の手のひらで転がされる日々。このままでいいのか。どうするさえこ。

===

金曜の夜。今日はヒロくんとのデートの日だ。
待ち合わせは6時。仕事終わりの彼と一緒に夕食をとることになっていた。

案の定、金曜の渋谷はどこもかしこも混んでいた。探し歩いたあげく、安めの居酒屋に入ることにする。
大学生だろうか。若い集団の笑い声がすごくて、彼の声がよく聞こえない。
いいな…楽しそう。きっと、私みたいな、こんな不毛な恋愛とは無縁なんだろう。
私だって…なりたくてこうなったわけじゃないのに…。

「さえこ、今日なんだか、元気無いね」
「…そうかな…」

いつもそうだ。会えるのを楽しみにしてたのに、いざ会うと、心からは楽しめない。
彼には家庭がある。会っている時どんなに楽しそうにしていても、結局は奥さんのところに帰っていく。そのことを考えずにはいられないからだ。

「あまり考えすぎないでよ。いまを楽しもう? 10年先も一緒にいようよ。そうしたら一緒になれるかもしれないし」

かもしれない……

この人は、そんなペラペラの言葉で、私を安心させられるとでも思っているのだろうか。

彼が既婚者だとわかるまで、私たちは対等なカップルだった。でも今は明確に力関係が変わってしまった。私はモヤモヤとした不安に包まれ、すっかり弱い存在になり果てている。

待つ立場と待たせる立場。
圧倒的に私の敗けだ。

やがて、彼は腕時計に目を落とす。
「もう行かないと」
「えっ…まだ、8時半だよ?」

「実はさ、このあとお客さんの会社に顔出さなきゃならなくて」

こんな時間から?お客さんなの?…本当に?

ああ、彼がマッチングアプリに登録していることを知ってから、ますます疑心暗鬼になっている。

「…大変だね。頑張って」

けれど、彼を問いただすこともできないのだった。

駅の改札近くで彼と別れた。
「またね」
私は笑顔で手を振り、雑踏に紛れる。

彼がこちらを振り返らないのを確認して…

いよいよ、尾行開始である。

彼が既婚者かどうかを疑っていた頃にも、尾行しようと思いつめたことは何度かあった。
でも実際に行動に移したことは無い。

そして今、私でも奥さんでもない、第三の女の存在を疑って、彼の後をつけていくーーー

私と別れてからしばらくの間、彼は、道の端に立って何やらスマホを操作していた。やがて、駅の改札とは反対方面に歩き始める。

訓練を受けたわけでもなんでもない素人の尾行は覚束ない。壁や柱といった物陰にどうにか身を隠しながら、長身の彼の後ろ姿を追いかけた。
早足で歩く彼に引き離されないようにするのは大変だった。自然と小走りになる。すれ違う人に何度も怪訝な表情で眺められつつ、なんとかついていく。

「……はぁっ……はぁっ……」
いつしか、すっかり息が切れていた。

大通りに出ると彼はタクシーを捕まえる。

ああっ! しまった…!

ドラマみたいに「あの車を追ってください!」とやりたかったが、タクシー乗り場じゃあるまいし、そんな簡単に流しのタクシーはつかまらない。

やがて、彼の乗った車は遠ざかり見えなくなった。私はスマホをバッグから取り出し、よせばいいのにLINEしてしまう。

『こんな時間から、タクシーに乗ってどこにいくの?』

(続く)

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