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ライアン・レイノルズからセルフプロデュース術を学べ!(1)

ハリウッドスターにはどうすればなれる? そもそも映画スターなんてなりたいからといってなれるものではない。しかし幾多の失敗を重ねながら、独自のセルフプロデュースでスターの階段を駆け上がった男がいる。人気シリーズの最新作『デッドプール&ウルヴァリン』の公開を今夏に控えたライアン・レイノルズだ。

現在47歳のレイノルズは、1976年カナダのバンクーバー生まれ。子役としてティーン向けのソープオペラでデビューしたのち、ハリウッドに拠点を移し、1998年にはTVシリーズ『ふたりの男とひとりの女』(ジム・キャリー主演のコメディ映画とは別作品)でメインキャストのひとりを演じてお茶の間の人気者となった。映画初主演作『ヴァン・ワイルダー』(2002年)は批評家から酷評されたものの興行面では成功を収め、主にコメディ畑で存在感を強めていく。

2004年にはウェズリー・スナイプス主演のダークヒーロー映画『ブレイド3』でアクションにも進出。出世街道をばく進するかと思いきや、コメディジャンルでは主演ポジションでも、その先にある大ブレイクにはいま一歩届かず……という状態が続いた。2009年には『X-MEN』シリーズのスピンオフ『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』では、後の当たり役となるデッドプールを演じているが、この作品のデッドプールはあくまでも脇役。早々に殺されるも改造手術によって超人兵器に変えられてしまう敵キャラにすぎなかった。

レイノルズ自身も、ハネそうでハネないキャリアにフラストレーションが溜まっていたのではないか。というのも、違う方向性を模索するかのように、スペインの低予算スリラー『[リミット]』(2010年)に参加し、ほぼ全編一人芝居という非常にチャレンジングな役柄に挑んでいるからだ。

『[リミット]』の主人公は、目が覚めたら棺桶のような箱に入れられ、地中に埋められていた緊急事態すぎる男。手元にあるのは携帯電話とライターのみ。棺の中の酸素がなくなる前に、なんとか外界と連絡を取って助けを呼び、地中から脱出しなくてはならないのだ。

物語は最初から最後まで棺の中だけで進んでいく。95分の上映時間で、画面にはレイノルズしか映らない。まさにワンアイデアを貫き通す、異色のパニックスリラーである。レイノルズの大熱演もあって非常にスリリングなエンタメに仕上がっているが、スペイン人の無名監督による小規模なインディペンデント作はかなりの賭けだったはず。おそらくレイノルズは、型通りの映画スターでは終わらないぞという決意をアピールしたかったのではないか。

とはいえ、ハリウッドもレイノルズのポテンシャルを無視していたわけではなかった。ついに超大作の主演スターへとステップアップしたのが、DCコミックのヒーロー映画『グリーン・ランタン』(2011年)。ところがコレが、もう笑うしかないほどに酷評&大コケ! さらに、明らかにシリーズ化を狙っていたアメコミ原作のアクション映画『ゴースト・エージェント/R.I.P.D.』(2013年)も、1億3千万ドルという巨費を投じながら、世界中の興行収入を合わせても半分ほどしか回収できなかった。

文=村山章 text:Akira Murayama
photo by AFLO


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