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パラレル介護ヘルパー歳時記】小満 『蚕起きて桑を食う』西宮

二十四節気、小満にはいった。
夏の香りに近づく。

蚕が起きて桑を食う。
その蚕も、なかなか見ることのないこの世で。
水蒸気多めの空、
少しずつ虫が飛ぶようになる。

肉体に残る、
そろそろ最後の力を振り絞っても
痰を切るのも難しい人
しかしおむつを変えられるのを苛烈に拒む人

重力を縛り付けた糸が切れる時
身を離れる時、
それとなく安らかであるようにと思う。

最近、聞かれることも少ないだろう、
蚕が桑を食う音はどんな音だったか。
僕が日々たてている音との違いはあるだろうか。雲が大きくなっていく。

蚕が起きて桑を食う時期に入った。
僕や私はやたらとばたばたと、
無駄にナツの準備をしはじめる。

そんなこと耳を澄まさなくてもわかる。


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