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【小説】神々の集い、聖なる城へ
シオンはいついかなる時でも、フィノを第一に考える男であった。
歩幅は常に彼女に合わせ、彼女が歩き疲れていないかどうか、さりげなく様子を見る。路銀は街の不良からふんだくるしかないので、あまり稼ぎは期待できない。そんなはした金の内、フィノのために使われるのが七割ほど。喫茶店のランチをフィノが食べるなら、シオンは小さなケーキ一つで空腹をごまかした。
それほどまでにフィノを思う彼が、フィノを置いてず
【小説】罪の終着、川の向こうへ
「で。どうしてこうなったかはわかるわよね?」
フィノは腕を組んで仁王立ちし、地面に座り込んだシオンを上から睨んでいる。
ウォルホーンを出て隣町のクライオンへ着いたはいいものの、隣町ぐらいであればマフィアたちの手が容易に届くのは想像に難くない。フィノを狙う輩の襲撃を次々と受けて、さすがの一匹狼も疲弊の色を見せていた。
どうにか追っ手を振り切って裏道に隠れていたところ、フィノはシオンに考えの浅
【小説】狼との旅立ち、果てしない草原へ
一つの国には必ず、荒れた地域あるいは街がある。ウォルホーンも例にもれず、この国の無法地帯であった。
表通りでさえ埃にまみれ、一歩裏道に入れば、昼間でも闇のような恐ろしさが心によどむ。力無き者は一瞬にして獣たちの餌食となり、二度とここから出られない。
この街を生き抜く術は限られている。強き者に従うか。力を持って憚るか。
強き者といえば、この街を長きに渡って支配していたマフィアがいる。彼の圧