創作怪談 参 『廃旅館に響く』
関谷さんは梅雨の時期になると毎年思い出す出来事がある。
彼が10年ほど前に廃墟巡りを趣味にしていた頃、当時彼は実家暮らしの大学生で運転免許証も取ったばかりだったため家族共用の車を運転してあちこちの廃墟へ探索に出掛けていた。
廃墟の退廃的な空気が好きで県内の廃墟はあらかた制覇していたほどの熱の入れようだったらしいのだが、ある廃墟での出来事をきっかけにその趣味をぱったりとやめてしまったという。
関谷さんがその廃墟を訪れたのは6月の中旬。梅雨ということで毎日雨が降りジメジメした