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箱根駅伝から東京一極集中を考える

今日も抜きつ抜かれつドラマがあった箱根駅伝、正式名称を東京箱根間往復大学駅伝競走という。1920年から続く1/2-1/3の三が日に開かれる歴史ある大会で、主催は関東学連である。
陸上をかじっている人なら常識だが、箱根駅伝は全国大会ではない。大学生の地方大会なのであるが、何故か持て囃され(1/1に開かれるニューイヤー駅伝の方が実業団駅伝の全国大会なので本来格上)、陸上競技が一年で最も注目されるタイミングとなっている。

大学陸上男子長距離の勢力図は、もはや異常だ。

熱心なファンの方が10000mの大学別上位10名の平均タイムを算出していたので見てみると、一位から、駒澤、青学、中央、創価と箱根駅伝でも上位の顔ぶれが並ぶ。まあ関東は日本の中心、ある程度は競合大学が成立するのも無理はないが、関東外のトップはなんと35位の関西学院大学。平均タイムは29分48秒と、1位の駒澤大学とは1分30秒以上離れている。実際のレースでも全日本駅伝関東外トップの関西学院大学はトップ駒澤と19分差の17位。関西学院大含めて関東外のチームは全て繰り上げスタートになってしまった。

国公立と私立の差も歴然である。国公立大学トップは29位の筑波大学で29分22秒。関東外の国公立大学のトップでは53位の名古屋大学で30分44秒となっている。

https://www.morino-miyako.com/items/allrecord.pdf 全日本大学女子駅伝result

女子の方はというと、平均タイムのデータが見当たらなかったので今年の全日本大学女子駅伝を参考にすると、優勝が愛知の名城大、準優勝が滋賀の立命館大、3位が大阪の大阪学院大と、関東外の大学でもしっかり上位に立っている。
中学駅伝は男子は千葉の酒井根中、女子は兵庫の稲美中が優勝。高校駅伝は男子は岡山の倉敷高、女子は長野の長野東高が優勝しているので、潜在的に関東にばかり速い選手がいるという訳ではないはずなのである。

こんなデータもあった。出身都道府県(高校所在地)別では確かに関東が多いものの、出身高校別では宮城の仙台育英、広島の世羅、京都の洛南、福島の学法石川…と全国に分散している。(まあ出身中学は別の県なケースも多いですが)

つまり箱根駅伝が過度に注目を集めた為に商業化し、1/2-3の日テレは関東私立大が名を売る場所となり、いかに好待遇を用意して速い選手を呼べるかの課金ゲームになってしまっている節があるのだ。

勿論、貴重な大学4年間を己とチームの肉体の限界を追求する為に捧げるのはたいへん尊いし、毎月数百㌔、多い月で千㌔を超える過酷な練習を耐え抜き、自分は3㌔持てば良い方(最盛期)だった1㌔3分ペースで平気で20㌔刻むような選手は憧れの対象で、毎年ランニング欲を駆り立ててきたものだが、
上京コンプを拗らせて、東京一極集中批判主義に立つと、年始から「日本は東京・関東を中心に回っていて、何かで成果を残したいなら東京・関東が絶対的優位」だと刷り込まれてる気持ちになるのだ。

実際、主たる放映メディアであるテレビ業界は大学陸上男子長距離と同じような酷い東京一極集中っぷりで、普段から東京キー局が作った関東ローカルコンテンツ番組を全国にお届けしてるわけだが、東京の経済中枢たる大手町を発ち、関東民にとっては馴染みのある横浜や湘南を通って、関東を代表する観光地である箱根に、あまり縁の無い関東の私立大学のユニフォームを纏った若者が向かう風景を往復11時間映されると、「自分は所詮エンジョイランナー、こんなに速くは走れないなあ」という気持ちはともかく「関西は所詮地方、こんなに注目はされないなあ」という気持ちをも抱いてしまうのである。(関西版箱根駅伝である丹後駅伝の存在はみなさん知っているのでしょうか…?)

流石に学連も問題意識があるのか、来年の第100回大会では試行的に予選会の門を全国に開くらしい。ただ、前述のように大きな実力差があるので、殆どの関東外の大学は予選会出場がやっとで、本戦出場は厳しいのでは無いかと思う(今となっては予選会出場標準10000m 34分すら切れない体なのに上から目線で申し訳ない)

箱根駅伝が注目を浴びるのは
・視聴者が見やすい正月開催
・時期的に四年生は引退レース
・100年を超える長い歴史
・波瀾万丈の起こりやすい1区間20㌔
・大都会から急登まで変化に富んだコース
などが理由で、関東限定だからということでは決して無いのだろう。(現状の伊勢路の全日本が箱根以上に注目度を得るよりも、箱根が全国化する方がスムーズだと思う)ただ、関東ばかりが持て囃される現状に、東北出身関西民として疑問を感じたという話である。


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