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さへる畑も出店しました! 「第3回難民・移民フェス」レポート

草の根支援から始まった、多くの人々が集まる異文化交流の場

さまざまな国々や民族文化のルーツを持つ人たちと支援者が一緒になって、その土地ゆかりの食事やお菓子、ドリンク、雑貨、アート、書籍などを紹介しながら販売する、「難民・移民フェス(Refugee & Migrant Festival)」。2023年5月20日(土)には第3回フェスが開かれ、平成つつじ公園(東京都練馬区)で大いに盛り上がりを見せました。

当日は少しパラつく雨が心配されたものの、約3,600人もの来場者(主催者発表)でにぎわいました

公園の敷地内いっぱいに約28組の出店がずらりと並び、ステージでの歌や楽器演奏、対談トーク、そして最後を締めくくる綱引きなど、バラエティーに富んだイベント企画が盛りだくさん。我らが「さへる畑」も、その中の1組として出店させていただきました。私たちの参加は、昨年11月の第2回フェス(埼玉県川口市開催)に引き続き、これが二度目です。

第2回フェスのレポートはこちら

残念ながら、この日はサヘルさん自身がお仕事で大阪に出張中のため、参加できなかったのです……(涙)。しかし、畑メンの有志の皆さんが、代わりに見事なチームワークを発揮してくれました。Her heart is always with us!(離れていても、心は一つ!)

それでは、「さへる畑」が出品した愛すべき雑貨やお菓子をご紹介しましょう。

  • ビビグルさんのドーナツ

  • ブラウス(アレズさんの手作り)

  • ネックレス(同上)

  • カバン(ヤズディ教徒の女性たちが手作り)

  • 毛糸の籠(同上)

  • 薔薇のえんぴつ(同上)

  • 鉢植えの薔薇(黄・白・ピンク)

  • 佐世保特産「三川内焼(みかわちやき)」アロマランプ


イラクの難民キャンプから日本へ ~託された品々と思い~

今年4月、サヘルさんは単身でイラクに渡り、現地で難民生活を余儀なくされている人々との再会を果たしました。

アレズさんとヤズディ教徒の女性。彼女たちが手作りした品物をサヘルさんがお預かりし、日本へ持ち帰って代理販売をすることで、持続可能な支援につながるのではないか――。これは、「“一方的にお金を与える”ことが支援なのではない。本当の支援とは、本人がゆくゆくは自立できる形になるまで、その手助けをしていくこと」という強い信念を持つ、サヘルさんならではのアイデアでした。

イラクでの医療活動を支援する「JIM-NET(ジムネット)」とも親しい関係にあるサヘルさんは、数年前にここで患者の一人だったクルド系イラン人のシャハワンさんと出会いました。アレズさんはシャワハンさんの妹で、彼が亡くなった後、サヘルさんと今でも親交を続けています。今回、アレズさんは彼女自身が手作りしたブラウスとネックレスを提供してくれました。

中東の美しい装飾があしらわれた、アレズさんの手作りブラウスとネックレス


ヤズディ教徒の女性たちの声を届けるために

ほとんど知られることのなかった、ヤズディ教徒の存在。しかし2018年、イラク北部出身の人権活動家ナディア・ムラド氏がノーベル平和賞を受賞したことは、まだ記憶に新しいと思います。ムラド氏もまた、ヤズディ教徒のクルド人女性であり、最初に声を挙げて自らの迫害体験を語ったことが、国際的な注目を集めました。

「ヤズディ」(ヤジディ、ヤジドなどとも呼ばれる)とは、古代メソポタミア信仰の流れを汲むとされる宗教で、現在はイラク北部などに住む一部のクルド人が信者だといわれています。しかし民族的に少数派のクルド人である彼らは、長い間、弾圧の対象とされてきました。

辛い難民生活を送りながらも、クルドの女性たちが毛糸を編んで手作りしたカバンや籠が、サヘルさんの手に託され、日本に渡って私たちの手に届く。一つ一つの品物には、このように数奇な縁でつながった、切実な人々の思いが詰まっています。

これらの品々を作った女性たちは、現在、イラク・ドホークの難民キャンプで生活しています


故郷を想いながら、ビビグルさんが手作りしたドーナツ

一方、アフガニスタンでも、今なお未曾有の民族的迫害が起こっています。タリバン復権前には、国立音楽院を卒業し、オーケストラでフルート奏者を務めていた兄ジャムシッドさんと、柔道選手として東京オリンピック代表候補にも選ばれていた妹ラティファさん。彼らをほとんど女手一つで育てたのが、ビビグルさんでした。

ジャムシッドさんとラティファさんは、それぞれ音楽家・スポーツ選手という理由でタリバンに命を狙われたために、2021年には一家で来日を余儀なくされました(2022年8月に難民認定)。

難民認定されたとはいえ、日本で不自由な生活を強いられているビビグルさん一家のために、何か身近なことでサポートできないだろうか? しかも、一方的な支援ではなく、彼らと私たちが相互に参加できる形で。

幸いにも、二人のお子さんたちはプロフェッショナルな才能に恵まれましたが、ビビグルさんご自身は、アフガニスタンで満足な教育を受けられなかった世代。そこで、サヘルさんが提案したのは、ビビグルさんの得意料理を生かすことでした。

そして出来上がったのが、ビビグルさん直伝のレシピを教わりながら、料理の得意な畑メンもお手伝いし、丹精して作り上げたアフガニスタン発のドーナツ。「第2回難民・移民フェス」で、さへる畑が初めて出店して売り出したところ、これが大好評を博したのです。

今回も迷わず、ビビグルさんに協力を依頼したところ、ご快諾をいただきました。160個のドーナツは、見事に完売。《ビビグルさんのドーナツ》は、今やさへる畑の名物となっています。

「人生初めて、誰かの役に立てたことがうれしい」――。女性が虐げられる時代を生きざるを得なかった、年老いたビビグルさんの言葉です。

ゆくゆくは《ビビグルさんのドーナツ》を通販などで販売し、持続可能なサポートを確立できるように、ただいま模索中です。

ラベルに貼られているのは、イラストレーターの畑メンが描いたビビグルさんの似顔絵


鉢植えの薔薇/三川内焼のアロマランプ

さへる畑にとって欠かせないキーワードは、なんといっても「薔薇」です。養母から授かった名前《サヘル・ローズ》は、「砂漠に咲くバラ」という意味。色とりどりの鉢植えの薔薇も、それぞれの小さな苗木が、将来大きく花を咲かせるようにとの希望が込められています。

これらの薔薇は、サヘルさんを応援しているファンのお父様が手作りしたもの。世界が平和であってほしいけれど、今なお難民の人々が苦境に追いやられている現実に疑問を持ち、「困っている人のために自分は何ができるのか?」と、手先が器用なお父さんが思い立って、作ってくださったのだそうです。自問自答しながら、一つ一つ丁寧に鉢植えされた花の清楚な美しさは、お父さんの真心の表れでもありますね。

そして最後のアイテムは、長崎県佐世保の特産である「三川内焼」のアロマランプ。生産していた会社が経営難に陥ってしまったと、サヘルさんが知人から聞いて、それらの作品を自費で買い取りました。「光を灯すランプ。これが世界を包みますように」と祈りながら。

花と光は、平和への祈りの象徴でもあります

今回の出店で得られた売上は、全額フェスに寄付されることになっています。

イラクや日本などで苦しい境遇を強いられている難民の人たちの暮らしが、少しでも楽になれば――。戦禍を生き抜き、自らも同じ体験をしてきた、サヘルさんの願いです。


【関連情報】

「第3回難民・移民フェス」全体の様子については、下記をご覧ください。

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