細胞骨格

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りっぱな人物でももてなきゃ虚しいじゃないか『ぼくは勉強ができない』山田詠美

 人気者で成績が悪い時田秀美を主人公にした短編集。成績の良さとその人の頭の良さは別だと私は思っていて、時田秀美は成績は悪いけど頭はいいタイプの人間だった。そういう人はだいたい話が面白い。例に漏れず時田秀美の一人称で書かれた地の文が最高に面白かった。  初出が1991年でもう30年以上前の小説なんだけれど、いつの世ももてるのは陽キャなんだな。頭の良い陽キャは強い。ぼくたちは調子に乗るのが好きなのだ、って言っちゃうのがなんかいい。私も頭のいい陽キャならもっとまともな感想が書けた

    • 読んでいない本と、内容を忘れた本

      引っ越して部屋に本棚を置くようになってから、買ったけど読んでいない本が増えた。東京には色々な本屋があるので、初めて行った本屋では記念として必ず1冊は買ってしまう。古本屋で良い感じの本があった時はここぞとばかりに買う。そういうことをしていると本棚のほとんどが、まだ読んでいない本と読んだけど内容を忘れた本になってしまう。感想を書くのも苦手だからよく分からない感想になってしまって、あとから読んでもよく分からない。 関係ないけど、この本めっちゃ良かったなーという本ほど、図書館で借りて

      • 圧倒的情けない大人小説 『愛が嫌い』町屋良平

        半年くらい前に神田古書祭り的なので買ったまま放置していた『愛が嫌い』を読んだ。最近あらすじを読んでもよく分からない本ばかり読んでいる気がする。 『愛が嫌い』は深夜のファミレスバイトで生計を立てている小林が、友人の息子のひろを保育園に迎えに行って友人が帰ってくるまでの30分間を一緒に過ごす話だった。ひろは2歳だけどまだ話せなくて、小林はひろのまだ話せないという非社会的状況とフリーターである自分の非社会的状況を重ね合わせて甘えている……らしい。正直難しすぎてあんまりよく分からなか

        • 茄子の輝きと花束みたいな恋をした

          東京に来たときくらいに買った滝口悠生の『茄子の輝き』をやっと読んだ。 滝口悠生の本は『高架線』も読んだ。滝口悠生の小説はあまり会話文がなく語り手の取り留めのない思考をそのまま書いたような文章で読みやすくはないんだけれど、ストーリーより気持ちを書いているからそういう文体の方がいいのかもしれない。『茄子の輝き』は10年前に妻と離婚した市瀬という34歳の男性が、離婚してから数年勤めた会社のこととか、たまたま飲み屋で会った女の子のこととかをほぼほぼ1人で喋っている小説だった。序盤は

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