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儚くて美しい物語り

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繊細で儚くて美しいものが大好き♡ そんな物語をまとめました SAIワールド全開でどうぞ('◇')ゞ
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赤い金魚と僕の物語り

風が止み、夕焼けが空を染める頃、静かな町の一角に佇む古びた家。 早くに両親を亡くし、姉は嫁ぎ、広い家にただ一人。生きるために生きている。三十路を目前にし、僕は考えることを諦めていたそんな人生について向き合っていた。金魚鉢の前に座り、水槽の中で穏やかに泳ぐ「金魚」に話しかけて。それは、投影していたのかもしれない。金魚鉢で飼いならされる金魚と僕を。 姪っ子がお祭りで手に入れたその金魚は、飼い猫を理由に僕のもとへと託された。とても小柄で泳ぎ方が少しだけ変な真っ赤な金魚。定期的に水

君のこの人生を

君が欲しかったものは何だい 君が望んでいた世界はどこだい 君がそれを目にしたとき その美しさに、涙を流すほどの 感動が手に入らないのは なぜだと思うかい 近道しようと縮めた空間は 悲しいだけで何も生まれないよ ふわふわと浮遊しながら泳いでは 意味がないと嘆くことを もう終わりにしよう 一筋の揺れる光は、心の中にあって まるで君の信念のように揺れてしまっているよ 月を見てはため息をつく君は 自分の世界に閉じこもり 頭の中は理想で埋めつくされ 独りよがりの世界に浸り 侵入者を

昨日までの僕が、僕を沈める

沈む、沈む、浮かび上がろうと、また沈む 昨日までの僕が、僕を沈める こんなに静かな朝だというのに、変わろうと決心したのに まだ同じ世界線にいる僕は、昨日までの「僕」にまた静かに沈まされる 口笛を吹いて新しい世界へ生まれ変わりたいと決意したけれど すり減った僕の何かは息苦しいままだった だから、「同じ道を歩こう」と僕の中の僕が言う 地に足をつけたはずだったけど、この浮遊感はなんだろう まるで砂時計のようにこぼれ落ちていく僕の夢は そこにあるのに掴めないような感覚に陥る 「そ

うつろい儚く散れますように

声が、声が。出そうとしているのに出てこない。どうしてこうなったのか全く覚えていないけれど、私はどうやら死んでしまったようだ。そして病む私。死んでも病んじゃうんだ、つらい。 目の前には夫が私の名前を呼びながら泣いている、ねぇ私ここにいるよ? もう何十回何百回、いや何万回と叫んだけど私の声は届かなくてそれでも彼の時間は進み続けることに後悔している。 知らなければよかった、あなたがこんなに私を思っていただなんて。私が死んで20年。変わらず私を愛してくれている。なんでそこまで私にこ

君と僕との価値観が同じなら良かったのに

言葉の羅列から生まれるストーリー 無造作に無作為に言葉を羅列する そのままの順番でストーリーを作る 今日はこの羅列↓↓↓ この物語の結末は誰も知らない。僕と青空の間で君は大きな瞳を太陽のように輝かせて笑いかけてきた。君と僕との価値観が同じなら良かったのに。 ほっぺから湯気が出そうなほどに見つめてくる君という「存在感」は、何かの魂胆があるんじゃないかと僕をヒヤヒヤさせる。趣味も年齢も全く違う僕たちは君とのギャップで精神的な差を自覚させられる。敬愛する君の母上に「私の娘という

真っ赤な傘の下で

昔、おかしなことばかり言う女の子がいた 「おばあちゃん、明日しんじゃうよ」 「あなたの赤ちゃんもう長くないわ」 村人たちは気味悪がりました。その少女の言う通りになるからです。 あの子は魔女の子だわ、村中で噂になりました。 そんな女の子の不思議なお話し。 彼女には家族はなく、いつも一人でいました。おかしなことばかり言うので村人からは毛嫌いされています。彼女は2つ目の村に住んでいて、1つ目の村からは不吉な少女として村長から追い払われました。 彼女は不吉な予言をし、いつも真っ赤

音楽と花の間で

星空の下、キーボードの音が響く 夜空で雲は流れ、遠い日の思い出を振り返る 砂時計は瞬く間に吸い込まれ、着信で我に返る 会話の向こう側で描く色鉛筆、オレンジ色の夕焼け 好きな音楽Spotify、一輪の花を挿した花瓶が鏡に映る 踏切の音と甘いチョコレート片手に、地図アプリで遊ぶ指 花瓶のバラが香る夜1時、時計の針の音が静寂を包む 去年見た花火の色は何色だったんだろう、パソコンの画面をスクロール あの時食べたりんご飴の味をノートに記した 紅茶を飲みながら過ごすこの時間さえもカ

炭酸刺繍【企画に参加】

水槽のポンプからは炭酸のように泡がぶくぶく 金魚は刺激的に泳ぐ 泡の中に映るは、過去の記憶の断片 記憶の糸を紡ぐように、泡があふれ出す しゅわしゅわはじけ飛ぶ泡は自由に舞いあがり まるで手仕事の織り成される刺繍のように 繊細で美しい緻密なデザインは 甘美な思い出をそのままに 光を反射し心を動かすキラキラ あの人を思い出させる記憶がパチパチと 目に浮かぶ笑顔、忘れもしないあの日 抜けてしまった炭酸が手のひらでじっとりと まとわりつく、水ですべて流せればいいのに 淡く切ない

解放される音

「私は違う人の人生を生きてる」 理想の世界が現実と交差する お金持ちの一人っ子として描かれた私の夢物語り しかし、現実は予期せぬ道を辿る 自由とともに生きる美少女、それが私の理想的物語り 予定と違う現実が私を縛り付ける だからこれは私じゃない だっておかしいじゃん、こんなはずじゃなかった 幼い頃に思い描いていた夢とのギャップ 私の物語りの主人公は 金持ちの一人っ子 白くて長毛のボルゾイを飼って 不自由なんて知らない 自由とともに生きる美少女 それが何一つ叶わない世

彼女の色

ワクワクってどうやるんだっけ ドキドキってどういう気持ちだっけ 感情を忘れるためにかけたフィルターは 何枚何十枚いろんな色を重ね カラフルだった心はいつしか 限りなく黒に近くなった 「どうしたの?」 柔らかい笑顔で見つめる彼女に声をかけた 「桜の花びら持ってきてくれたの?」 僕の肩にそれはついていて 「手にしてみたいかなって思って」 桜を彼女の指にそっと乗せる 咄嗟に出た言葉だった 「触りたかったの、ありがとう」 そういって満面の笑みを浮かべる 梅雨のある雨の日に会い

凍てつく想い

息をのんだ 君は見えてはいけない人なのかと思うほどに 美しく、透明な、悲しい目をしてた なぜそんなに悲しんでいるんだい 何をそんなに見つめているんだい 君の視線を独り占めしたいと思ってしまった 光にかざしたビー玉のような美しさも 今にも泣きそうなその悲しみさえも 触れたいと思ってしまった 君の冷たい手が僕の肌に触れると まるで氷のような冷たさが僕を貫通し 身体の奥までしみ込んでいった あとがき 恋は一瞬