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解放される音

「私は違う人の人生を生きてる」

理想の世界が現実と交差する
お金持ちの一人っ子として描かれた私の夢物語り

しかし、現実は予期せぬ道を辿る

自由とともに生きる美少女、それが私の理想的物語り

予定と違う現実が私を縛り付ける
だからこれは私じゃない
だっておかしいじゃん、こんなはずじゃなかった

幼い頃に思い描いていた夢とのギャップ
私の物語りの主人公は
金持ちの一人っ子
白くて長毛のボルゾイを飼って
不自由なんて知らない
自由とともに生きる美少女

それが何一つ叶わない世界に
現実逃避で自分を縛り付けた

我が家の犬様は柴犬のごん太
脳内ではボルゾイのベン
誰も私を知らない道を探して歩く散歩
そこへ理想を絵にかいたような男の子がいた

彼の存在は羨望の的だった
立派なおうち、真っ白な大きな犬
きっと名前はベンね。
オーラから違うイケメン

自分の理想がそこにあった
そして自分の現実が更に惨めに感じた

自然とこのルートで散歩することが多くなった
彼はいつも長袖を着ている
細身で色白の彼はたまに大きな庭で
犬と戯れている
今日は春なのに汗ばむほど温かく
そんな日でも彼は長袖を着ていた

だけど今日だけは違った
腕まくりをした彼の腕に隠された秘密
おどろおどろしいがしゃどくろが
美しい腕の中からこちらを見ている

彼が私に気づき近寄ってきて
人差し指を口に当て、しーって
「秘密ね」と言った彼からは
柵越しにひどく甘く優しい闇の香りがした

彼のその仕草、香り、がしゃどくろ
全てが私の理想を超えてきた春。

縛り付けていた自分が、解放される音がした

あとがき
自分が変わる瞬間って
いつやってくるか分からないから
面白い!


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