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沼火垂まふ

夏もよき 秋芳於福にますみます大神 はたたうち み麻岩が正片ちりくだけりて 砂上のぼるれ地に銀漢 ぬばたまの月なし夜に吠ゆ 亜麻色流るる中の川 子守児なつかしの歌…

雪男
3時間前

緑夜に

虹橋たつ 厚保みね美祢の山したたる音 代かきの尻をはたいて 万石峠を越えゆば 露傘の、華とひらく黒牡丹 狐火たる月影が落つ 西円の桜散る今生 うちが郷の蛍は来るら…

雪男
1日前

緑雨

秋のみのり多からう 稲ふねのぼる大崎の きりりたつ 岩出山不動明王が背をかりぬ くれ墨したたる南沢に 山姥は子をおき忘れかし たそ 古川すむちう竜蛇の、おそれ智慧…

雪男
2日前

かきつばた

あからひく 吉備赤磐の朝は山若葉しうるはし からころも 姫売りいる鬼の旅籠のところまで 小原にまさるや神々、おはします森、み祠らのもと 山紫水明くたするなかれ そ…

雪男
3日前

花かんば

ちはやぶる かんばら草木の塔にふく 夏のくるはせ 川西ますぐに森の風くゆる 黒岩に羚羊母子の なつかし 俤たちて 瞬きぬうちの微笑みかへさね たらちねのころの お…

雪男
4日前

瓜盗人

皐月もゆる日向塩見の、神ひかる深山 観音菩薩が見おろしや ひょっとこ隠るる炭竃の 火吹き風は雲わたり わだつみ蓬莱山をわたり 七宝囂囂 布袋が懐の瀧壺におつ こひ…

雪男
5日前

むすめ十一

鹿島烏﨑 ゆふつつみ 白浜ぞし美し歌よ 海老のせ曲がるまで 真野ならふ松の代まで 潮騒とけぬ 童すむ声 なつかしき砂の城から 姫うつぎさく木漏れ日 戯れし足跡かな …

雪男
6日前

女王蜂

しろたへの 浪江うまざけ酒井は緑なつかしく 高瀬につづくや つばくろのことも夢のあとから 時鳥さます空は五月色 真鯉およぐ山を吹き流し さりて風まわす矢車草 露と…

雪男
7日前

なつ立ちぬ

阿月わだつみ瀬戸内の 鼓つき美し沙の浜 剣は白浪五衆をうちかへし 熊も岩戸の骨なりや ようらの石にもにて黒黒 勇魚が背ごと 日見る朝焼けまぼろか 縄文の火ぞ輝夜か…

雪男
8日前

恋つばめ

ささなみの、浪江谷津田 緑やまねが健やかく 高瀬あらふ、清水に垂るる藤が来世、ゆらと占ぶれば 空羽振り、妻おふ、仔らは土壁のしみか つばくら背が笑ろふ 秣たへなば…

雪男
9日前

山椒の木

くすだまゆるる 五月の風は無に禊ぎ澄みて 南やましろ北大河原 砂田から 押原から 鬼虫はらあう あとにみの清らかく涼しからん 月ヶ瀬 うつす山は来世や、何くろぐろ…

雪男
10日前

半仙戯

はるかせとよむ 三次秋町は山々に美し、と こぎ詠うは遥けし沖の 生けとし名もなき者の 承久のことを忘れじ、此のことも忘れじ 御みおろされ給ひて はるかせとよむ い…

雪男
11日前

ふぢの花

采女の垂るる足見川、あらひ、なみ清らかく 小山田の丘に雲雀、恋きそふ声 いち高くよし はればれ 空をわすれ 家をわすれ 遺した雲の下にあらん 吾が皐月の花に埋もる…

雪男
12日前

たちばな

あまくさ垂れる、水俣長野の花橘の香は甘く 不動明王 七曲り登りはてぬる枝の空まで 棄てて帰らんや 日輪が蜜の壺からこぼる黄金 緑木漏れる風と吹きぬけよ よろこび山…

雪男
13日前

紫蘭ふる

かぎろひ春霞ぞし美しき 豊田とよとみ井ノ口の あれに失ふ、三河三ツ足貉となり落ち、ながれて あぶらながらの火に焼かれ、なめりの郷をただ、ただ たちかたく 雲居かか…

雪男
2週間前

もののめ

はやぶさの 阿蘇高森は春くれて ちる花水木が白白 青雲に巫女がまひとね にぎる弟の爪小さきに 袖つかむが姉ご 牛神くはすは根子鬼ぞ、垂乳根山を振り向きなそ 山は緑…

雪男
2週間前

沼火垂まふ

夏もよき 秋芳於福にますみます大神 はたたうち み麻岩が正片ちりくだけりて 砂上のぼるれ地に銀漢 ぬばたまの月なし夜に吠ゆ 亜麻色流るる中の川 子守児なつかしの歌をきき 露もわすれし 十六のなつ うれし手をうつ うしろから

緑夜に

虹橋たつ 厚保みね美祢の山したたる音 代かきの尻をはたいて 万石峠を越えゆば 露傘の、華とひらく黒牡丹 狐火たる月影が落つ 西円の桜散る今生 うちが郷の蛍は来るらんや そでぬる宵の よいもあけさめ わすれぬ人を 鶏がよぶ

緑雨

秋のみのり多からう 稲ふねのぼる大崎の きりりたつ 岩出山不動明王が背をかりぬ くれ墨したたる南沢に 山姥は子をおき忘れかし たそ 古川すむちう竜蛇の、おそれ智慧をかりるなむ 千鳥なくよや わが背子こひし 山ぎうき雲 かなしくも

かきつばた

あからひく 吉備赤磐の朝は山若葉しうるはし からころも 姫売りいる鬼の旅籠のところまで 小原にまさるや神々、おはします森、み祠らのもと 山紫水明くたするなかれ その御代しまひとも かたにおかれた どこゆく夜か 月もはずかし 雲がくれ

花かんば

ちはやぶる かんばら草木の塔にふく 夏のくるはせ 川西ますぐに森の風くゆる 黒岩に羚羊母子の なつかし 俤たちて 瞬きぬうちの微笑みかへさね たらちねのころの おへど花火は にげかくられて はぐれ抱かるる ちさきかた

瓜盗人

皐月もゆる日向塩見の、神ひかる深山 観音菩薩が見おろしや ひょっとこ隠るる炭竃の 火吹き風は雲わたり わだつみ蓬莱山をわたり 七宝囂囂 布袋が懐の瀧壺におつ こひて恋ひしや つまづくつまの おいた小石が いじわろし

むすめ十一

鹿島烏﨑 ゆふつつみ 白浜ぞし美し歌よ 海老のせ曲がるまで 真野ならふ松の代まで 潮騒とけぬ 童すむ声 なつかしき砂の城から 姫うつぎさく木漏れ日 戯れし足跡かな 月づきのぼる やまねの山や はじめての背を こひておひ

女王蜂

しろたへの 浪江うまざけ酒井は緑なつかしく 高瀬につづくや つばくろのことも夢のあとから 時鳥さます空は五月色 真鯉およぐ山を吹き流し さりて風まわす矢車草 露と垂るるは魚の泪かな 夢にだかれて 夏のきぬぎぬ 鶏よつげなそ つきおちな

なつ立ちぬ

阿月わだつみ瀬戸内の 鼓つき美し沙の浜 剣は白浪五衆をうちかへし 熊も岩戸の骨なりや ようらの石にもにて黒黒 勇魚が背ごと 日見る朝焼けまぼろか 縄文の火ぞ輝夜かし こぎゆく舟の あといく日か 浪にゆらるる ぬくもらせ

恋つばめ

ささなみの、浪江谷津田 緑やまねが健やかく 高瀬あらふ、清水に垂るる藤が来世、ゆらと占ぶれば 空羽振り、妻おふ、仔らは土壁のしみか つばくら背が笑ろふ 秣たへなば駒も消ぬべし、と ほしのふるぼし 切な切なと 腕にならべて 夜伽ぎばな

山椒の木

くすだまゆるる 五月の風は無に禊ぎ澄みて 南やましろ北大河原 砂田から 押原から 鬼虫はらあう あとにみの清らかく涼しからん 月ヶ瀬 うつす山は来世や、何くろぐろし 雲あかぬ夜よ 月はいずくと 愛し悲しや 君ほしや

半仙戯

はるかせとよむ 三次秋町は山々に美し、と こぎ詠うは遥けし沖の 生けとし名もなき者の 承久のことを忘れじ、此のことも忘れじ 御みおろされ給ひて はるかせとよむ いしまつ森の はぐれ松にて 衣わすれぬ 君が香や

ふぢの花

采女の垂るる足見川、あらひ、なみ清らかく 小山田の丘に雲雀、恋きそふ声 いち高くよし はればれ 空をわすれ 家をわすれ 遺した雲の下にあらん 吾が皐月の花に埋もる塚 一つが二つ わかれゆく道 また逢ひもがな 岩の姫

たちばな

あまくさ垂れる、水俣長野の花橘の香は甘く 不動明王 七曲り登りはてぬる枝の空まで 棄てて帰らんや 日輪が蜜の壺からこぼる黄金 緑木漏れる風と吹きぬけよ よろこび山山が洋洋たり  かくす雲あれ あかす夜あり かげが二つの よる一つ

紫蘭ふる

かぎろひ春霞ぞし美しき 豊田とよとみ井ノ口の あれに失ふ、三河三ツ足貉となり落ち、ながれて あぶらながらの火に焼かれ、なめりの郷をただ、ただ たちかたく 雲居かかる峠がつぎの、ただ 恋し恋しは うたかたにうく 朧月夜と 腕まくら

もののめ

はやぶさの 阿蘇高森は春くれて ちる花水木が白白 青雲に巫女がまひとね にぎる弟の爪小さきに 袖つかむが姉ご 牛神くはすは根子鬼ぞ、垂乳根山を振り向きなそ 山は緑に 花よ花よよ 霞わするる 春恋ひし