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何も起こらない日常 「海街diary」

「海街diary」(2015年 日本 126分)
監督:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず


出典元:https://eiga.com/movie/80446/gallery/

映画は何か事件や特徴的な出来事が起こって物語が進行することが多いですが、この映画は何も起こりません。
何も起こらない、というのは言い過ぎかもしれませんが、日常の一部を切り取ったような映像が延々と続いていきます。
だが、それがいい!!

あらすじ
鎌倉で暮らす香田三姉妹の元に15年以上会っていない父の訃報が届く。山形の温泉地で母親とは別の女性と暮らしていたことがわかり、異母姉妹で中学一年生の浅野すずと出会う。
三姉妹は、葬式でのすずの母親の態度を心配し、すずに鎌倉で一緒に暮らすことを提案する。
そこで起こる地元鎌倉の人たちとのふれあいや、それぞれの人生に悩みを抱えながらも前向きに生きていく模様を描いていく心温まる物語。


出典元: https://eiga.com/movie/80446/gallery/4/

豪華キャストの総力戦
香田家の四姉妹に綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずという主演級の女優を4人も投入しています。
さらに、脇を固めるキャストも加瀬亮、樹木希林、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ、リリー・フランキーなど、豪華としか言いようがありません。
さらに公開当時の2015年では売り出し中だった鈴木亮平、坂口健太郎、レキシ名でアーティスト活動をする池田貴史など、その後主演をできるような俳優やアーティストも出ており、力の入れ方を感じられます。
また、監督も是枝裕和で、その後「万引き家族」で数々の映画賞を受賞することもあり、最早、制作会社のフジテレビ、小学館、東宝、ギャガの総力戦ともいえる様相です。


出典元: https://eiga.com/movie/80446/gallery/4/

本当に何も起きない だが、それがいい!!
お葬式を起点とした誰にでも起こりそうな悩みや人生における迷いなどを四姉妹それぞれの人生から描く手法は、ドキュメンタリー映画出身の是枝監督ならではと言えます。
広瀬すず演じる浅野すずが三姉妹で暮らす家で一緒に暮らすようになるということが少し違うというだけで、それ以外はそれぞれの姉妹たちがお金の問題や、恋愛模様、実の母親との関わり方など、人生においてあまりにもありふれすぎた内容を描くシーンが延々と続きます。
だが、それが、いいんです!
鎌倉のきれいな四季の移り変わりに合わせて、それぞれの人生がゆっくりと進んでいく。
そんな状況が非常に絵になる映画です。
一言でいえば、青春群像劇といえるのでしょうか。誰にでも思い当たる部分がある悩みや苦悩を自分だけじゃないよ、みんな悩んでいるんだと教えてくれているような優しさがこの作品からは感じられます。

是枝裕和監督と小津安二郎監督
ちょっと映画の専門的な話になってしまいますが、
何も起こらない中にも少しずつ人生が進んでいくような物語の展開をした映画監督が過去の日本にもいました。
巨匠黒澤明と対比して名前の出される小津安二郎監督です。
小津監督も日常の風景を写実的に描くことで知られた映画監督でした。とりわけヨーロッパでの人気が高く、黒澤明監督がエンタメ活劇を得意としたのに対して、小津監督は日常生活での登場人物の心情を描くことに才能を発揮していました。
是枝監督は、フランス映画のような雰囲気のある小津監督の雰囲気を受け継いでいるとされ、海外では「小津の孫」と言われているようです。
「海街diary」も同様で、普段の生活の中に登場人物の静かな心境の変化を巧みに表現しています。
4人の姉妹がそれぞれ性格的にも異なり、その掛け合いなども日常生活をそのまま切り取ったようなシーンなどもあり、この姉妹は本当に実在するのでは?と錯覚すらしてしまいます。

四姉妹の父親は一度も出てこない
四姉妹の父親は劇中には一度も登場しません。遺影の写真ですら登場しません。
どのような人なのかは、姉妹の会話の中でしか推し量ることができない幻の人です。
しかし、映画の柱となるのがこの父親です。
香田三姉妹たちは成人し、結婚を考える人がそれぞれいるのですが、自分たちを捨てて他の女性の元に行ったと口では憎んでいると言っている父親と、どことなく似ている人を選んでいます。
家族の受ける影響の大きさを物語るものであるのですが、是枝監督の映画はこうした家族に関するものが多いです。

豪華キャストの演技だけでも十分価値のある映画
映画に関する難しいうんちくを語る前に、キャストは日本を代表するような俳優陣です。演技は自然で、実在した人たちのように見ることができます。
主演の女優陣も説明不要の大物女優ばかりです。
難しいことはいいから、それを見るために見てもいいのではないかと思います。

映画中毒者からの一言

だが、それがいい!!

印象に残る、非常に使いやすいフレーズですよね。
使いやすいために多用してしまい、申し訳ございませんでした。

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