スロットをチームシステムとして機能させるために【1/2】
漫画「ハイキュー」で描かれる烏野高校が志向する複数人(4名または5名)によるシンクロ(同時多発位置差)攻撃のようなトータルオフェンスをゲーム中のカオスな状況下で何度も遂行するためにはチーム内で共有されるプレーシステムやプレー原則が必ず必要となってくる。
彼らは一体どのようなプレーシステム・原則の元でコートを縦横無尽に駆け巡ってプレーしているのだろうか。所詮、漫画の中での話だと切り捨てればそれまでだろうが、真剣に突き詰めてみると、その先にはまだ見ぬ景色が見えてくるのかもしれない。
シンクロ(同時多発位置差)攻撃を繰り出すために
さて、烏野高校の代名詞とも言えるシンクロ(同時多発位置差)攻撃。これは一体どのようなものだろうか。もう少し解像度を高めてみよう。
シンクロ攻撃とは、4名ないし5名のアタッカーが前衛・後衛関係なく同時に、それぞれ違った位置(縦横)から攻撃を仕掛けるというトータルオフェンスの一つの型である。現代バレーボールの世界レベル(特に男子)では標準装備されたものと認識してもよさそうである。
外から見ているぶんには、当たり前のようにそれぞれのアタッカーがぶつかることなくズムーズに決まった位置に向かって、思い切り助走をしかけているので、一瞬簡単なのではないかとさえ思えてくる。
しかし、実際ゲームの中で遂行しようと取り組んでみれば実感するができるだろうが、そう簡単なものではない。相手チームのオフェンス(攻撃的・戦術的なサーブや組織的なトータルオフェンス)に対する精一杯のディフェンス(ブロック&ディグ)をした直後から瞬時にトランジションして、それぞれのアタッカーは攻撃をしかけなければならないのである。状況によっては1本目の返球が完璧ではないことや体勢が十分だとは言えない状況もある中で、彼らは一体どうして迷いなくチームから自身に割り当てらたと考えられる位置に向かって思い切り助走をしかけることができるのだろう。
彼らの頭の中では、他の人からは見えない何か暗号のようなものが共有されていて、それが目に見えているのだろうか。
スロットという言語システム
漫画の中でどの程度まで語られていたか記憶が定かではないが、彼らにはやはり「ある暗号」が共有されており、それをたよりにしてあの美しきシンクロ攻撃が産み出されていたとしか私には思えない。
そして、その「ある暗号」とはスロットである。
スロットに関する記事はこれまで何度も書いてきたので、そのいくつかを下記に紹介しておく。
スロットとは、一般的には硬貨投入口のことを指すが、バレー用語としてのスロットはそれとは違う。バレー用語としてのスロットは、一般的にアタッカーがボール・ヒットする空間位置を表すために使われる。より、厳密に説明するとネットに平行な水平座標軸を設定し1m毎にコートを9分割し(コート横幅は 9m)数字や記号を用いてコート上の空間位置を表しているものだ。下記に私が推奨しているスロットの定義方法を図示する。とてもシンプルである。
彼らは間違いなく、このスロットという言語システムを利用しシンクロ攻撃における「位置差」を生み出していたに違いないと思われる。この言語システムがチームで共有され、セッターと各アタッカーがうまくコミュニケーションをとれるようになってさえすれば、有効な「位置差」を生み出すことができるだろう。
100円でスロットを可視化する
ここまでお付き合いいただいた方の中には「よし!これからスロットシステムを活用してシンクロ攻撃をやってみよう。」と考えた方がいるかもしれない。もし、そんな方がいるのであればぜひとも試してみてほしいことがある。
それは、実際にコート上でスロットを可視化するということである。
先に示したスロットの概念図では、 1m毎に線を引くことができスロットを可視化することができていたが、実際、コート上でスロットは可視化されていない。いざ実践の場となると、チーム全員でスロットを視覚的に共有することができないのである。
そんなあなたに、たった100円(正確には110円)でスロットを可視化する方法をこっそり教えたいと思う。以下の手順でやっていただきたい。
ダイソーに行って、PPテープ(新聞紙を縛る紐)を購入する
※できるだけ目立つ色がおすすめ適当な長さ(ネットの上下白帯幅の2倍程度)にカットする
1m毎にPPテープをくくりつける(ネット枠は一マス10cm。簡単に測れる)
あっという間に完成!(慣れれば5分)
スロットをチームシステムとして機能させるために【2/2】に続きます。
バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。