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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(6)  -「2対2」のゲームの特徴-

前回は「ゲームの参加人数とそこに出てくる課題」において、「1対1」のゲームでは「どのように学習が進むのか?」について具体的な例を挙げて説明しましたが、今回は「2対2」のゲームの特徴について説明したいと思います。

「2対2」のゲーム

 「2対2」のゲームは、まさにオリンピック競技の「ビーチバレー」で採用されているルール(人数)です。競技環境・ルールにおいて「2対2」の「ビーチバレー」と「6対6」の「インドアバレー」は異なりますが、必要とされる「戦術」「技術」においては「人数」に関連すること(例えば、2枚ブロック・同時2枚攻撃参加はない)を除くと、同じだと言えます。つまり、「ボールの落とし合い」の「ゲーム」であれば「2対2」でも「6対6」につながる「連係プレー」を学べることを意味します。

 特に、ボール1個あたりのプレーヤーが4人のためボールに触れる機会が多くなり「ボール・コントロール」(オン・ザ・ボール)を積極的に高めることができます。また、技能が高いプレーヤーはもちろん、たくさんのボールに親しむ・触れる機会を確保できるので、初心者段階での導入も有効です。

「2対2」の特徴

 「2対2」のゲームでは味方との「連係プレー」が成立する人数、つまり最少単位の組織的な「戦術」が出現します。もしかすると、同じコートサイズであれば、プレーヤーの数が多い方が1人の守備範囲が少なくなり、難易度が下がると思うかもしれませんがそうとは限りません。ボールを一旦保持できないからこそ、どちらがプレーするのか等の「迷い」が失点につながる競技です。「1対1」に比べ「判断要素」が増える(判断負荷が高くなる)ことが特徴の1つです。

 逆に「判断要素」が多いからこそ「判断負荷」に焦点をあて、ゲーム条件を変えることによって「2対2」でも、様々な学習課題を設定できます。条件の設定次第では初心者導入にも最適です。そこで、今回からは「2対2」の特徴を踏まえた上で、具体的にゲーム(戦術学習)を通じて「どんなことを(What)」「どのようにして(How)」学んでいくかを説明していきます。

(1)連携プレーの「最少単位」

 バレーボールはネット型スポーツの中でも特徴なのは、味方で3回までプレーができる、すなわち、サッカーやバスケットボールのように「連係プレー」が成立することです。その「連携プレー」が成立する最少人数が2人です。「連係プレー」における基本手段(つなぎ)を学ぶことができます。また、実際にボールに触れなくても「連係プレー」は成立します。例えば、自陣コートに背の高いプレーヤー(味方)がネット際にいてくれるからこそ、相手はボールをネットから離れた位置(エンドライン近くに)にボレーする必要がでてきます。これは直接プレーしていませんが「貢献」(オフ・ザ・ボールの1つ)の観点からいう「連係プレー」と言えます。

(2)「選択的」プレーになる

 毎ラリーを自分で必ずプレーする「必然的」なプレーの「1対1」と異なり「2対2」では、最初にどちらがとるのかという「選択的」なプレーが求められ「判断」が必要という点で難易度が高くなります。

 また「1対1」の「1本返球」から2人いるので「3本以内返球」が可能となり、返球のタイミング(1本目・2本目・3本目)を選択できることになります。一見「攻め」の選択肢が多いことは良いことに思えますが、必ずしもそうではありません。ボールを保持できない「つなぎ」が必要な競技特性から、「判断力」が未熟な場合、それらの選択肢の多さが迷いにつながり、一瞬の遅れが失点になることもあります。例えば、技能が低い段階では、自陣コートでボールをつなぐことは、サッカーでいうところの「リフティング」をしているようなものです。技能が低い場合「リフティング」は回数が多くなればなるほど難しくなります。また、「つなぎ」が難しいボールになれば、修正するのは困難になります。このような観点から「連係プレー」の導入においては「判断負荷」を最小限度にした「2本以内返球」を推奨します。

(3)「ローテーション」が可能

 「2対2」をする場合、例えば3人1チームであれば、コート内2人、コート外1人の構図になります。この時「ラリーの中断」ごとに「ローテーション」をするという条件で「ラインアップ」を変えれば、組み合わせの可能性は「9通り」になります。これにより「対応力」を身につけることができます。相手が変わることで自然と「判断負荷」が高まり、その判断に基づいた技術が必要になるからこそ、技能を高めることができる環境をつくることができます。

(4)「視線移動」が大きくなる

 「1対1」の場合、前方(相手)にのみ注意しておけばよく、必要な視野が狭いゲームになるので、その点で比較的易しいものになります。しかし、「連携プレー」になると(味方が複数いると色々な方向に向く身体を向ける必要がある)、例えば、横や後ろから来るボールに対して、一度相手コートから目を離し、その後、プレーをして、また相手コートを見るということになります。何をどのように見れば良いのか(情報収集)、瞬間的な判断が問われるものになります。

(5)ボールの「方向転換」が大きくなる

 相手から来たボールを味方にパスする、味方のレシーブ位置から飛んできたボールをアタック位置の味方にパス(トス)する、味方から来たボール(トス)を相手に返す(相手に向かってアタックする)ために、かなり大きな「方向転換」が生じ、そのコントロールが重要になります。

 アンダーハンド(組み手)で方向転換するためには、「正面」から外れた位置で捉える方が簡単にかつ正確にやることができるので、方向転換の技術は「飛んできたボールの正面に入って、飛んできた方向に返す」のとは違う重要な動作の課題と考えられます。この課題に取り組むには、2対2のような「方向転換が必要なゲーム環境」は最適なものと言うことができるでしょう(参照:エコロジカル・アプローチ@バレーボール実践例 ①アンダーハンドパスの感覚をつかむ)。

また、オーバーハンドパスの動作原理で重要な「ボールをどこでとらえればどこに飛ぶか(天使の輪)」も「方向転換」があることで探索できるようになります。方向転換のあるゲーム環境が重要なのです。

▶︎縄田亮太のプロフィール


バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。