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パラリンピックで起きた事故は悲しさだけで、理解が足りなかった

◆誰もが不幸な悲しい事故

東京パラリンピックの選手村で起きた、視覚障害のパラアスリートと選手村内を自動運転していたモビリティ車との事故……この件、本当に悲しく思いましたので、少し記事にしてみます。
まずは、事故に遭ったパラアスリートの方の少しでも早い体調不良からの快復、競技練習などへの1日も早い復帰をお祈りいたします。

熟成下書きどころか、脳内プロット程度でいきなり清書していますので、安定のまとまらないぶりはご容赦いただければと思います。

◆更なる事故の悲しい影響

この柔道選手の方、本来であれば本日(8/28)試合があるそうでしたが脳震とうの疑いと体調不良のため、出場を諦めることになりました。
5年間、そして、今までの積み重ねが思いもよらぬ競技外の事故で成果を見せることすら出来ず、ご本人の無念さは私が思う以上であることは間違いありません。

◆トヨタ自動車さんへ思うこと

一方、このモビリティ車を開発したトヨタ自動車さんも、開発には大変な努力や検証を重ねたのだと思います。
トヨタ自動車さんはユニバーサルデザインを考えた自動車の開発に積極的でして、私も数ヵ月前に開発中モビリティ車の試乗会に参加いたしました。
ですから、トヨタ自動車さんは非常にユニバーサルデザインや障害者などにも使いやすい自動車の開発を日々されているということで、責めるだけではなく、その開発精神を社会義務と棚上げして、ひたすらに批判はしないで欲しいと思います。

ただ、今回言えることがあるとしたら、運転管理の中で視覚障害への理解が足りなかったのではないか?ということと、コロナ禍の影響を考えると見切りで実装してしまったのではないか?という、この2点は問題として挙げたいところです。

◆問題提起1 視覚障害への理解が足りなかったのではないか?

視覚障害の人は一部ないし、全ての視野がありません。平たくいうと目が見えません。そのことについては、ご存知のことだと思います。
私もユーザー(障害当事者)として参加しているワークショップの別ユーザーで全盲の方がいらっしゃったり、ユニバーサルマナー検定の資格取得の一環で視覚障害当事者の方のお話をお聞きする機会がありました。
その話を聞いて感じたことは、外出すると、周囲がどうなっているか、判断しきれずに本当に怖いことばかりということです。
段差がどこにあるかも感触で確認するしかないですし、よくある駅のホームで転落してしまう事故はホームと電車の通る境目が分かり辛いゆえに発生しています。
今回、事故に遭った自動車についてもらどこまで接近しているかの目視確認は困難です。運転中のエンジンなどの音、排気ガスのわずかな臭いなどで判断しています。
しかし、最新の自動車は騒音対策の対策のために音が小さくなり、環境配慮で排気ガスも削減されています。つまり、特に視覚障害の方には自動車が近くにいるかどうか、判断し難い状況であったといえます。
ましてや、今回はパラリンピックの選手村という、普段通り慣れない場所で起きた事故でした。視覚障害の方曰く、「通り慣れた場所だと特に問題ないが、初めての場所は不安になる」というような話を聞いたことがあります。
パラリンピックであれば多種多様な障害者の方が近くを通ります。車椅子の私も、外出時は気をつけていますが、後ろから小さな音で自動車が来ていたら、すぐ近くに来るまで気が付かないかもしれません。気が付いても判断が遅くなるかもしれません。
モビリティ車の運転モードのときに、自動運転モードだったのか、管理者の方が1度OKを出したのかは分かりませんが、いずれにしても、『障害者の方が多く通るからこそ、普段の自動運転以上に安全確認をする』という意識の欠如が事故が今回起きてしまった原因のように思います。同時に今回の事故で私が最も許せない部分でもあります。

◆問題提起2 コロナ禍の影響の中で見切りで実装?

自動車の開発というのは数年単位ではかかることだと思っています。しかも、モビリティ車でオリンピック・パラリンピックで走らせるということであれば、様々な検証が必要だと思うのです。更にこのモビリティ車自体の紹介動画というものを探してみると、将来的に障害当事者(車椅子の人や視覚障害のある人)を乗せて運行する予定があるそうです。そうすると、先ほど述べた試乗会のようなものを開催し、障害当事者の乗り心地などを確認する必要があるはずです。
通常の運用検証に加え、ユニバーサル・ユーザビリティの検証が念入りに必要であろうなかで新型コロナウイルスによる遅延もあったと思うのです。当然、開発途中で一旦乗車運用関係は諦めて、東京オリンピック・パラリンピックへの運用に注力したとは考えられますが、それでも時間が足りず、見切り発車した部分がもしかしたら1の理由に加えてあるのかもしれない……と思いました。

◆今回の事故に対して思うこと

トヨタ自動車さんには、試乗会にお声かけいただくなど、私も日頃大変お世話になっております。デザイナーの方々と接する機会が多く、私が発言した意見などについて、本当によく耳を傾けてくださいます。
しかし、障害当事者の気持ちに寄り添う、声に耳を傾けるといったことが、自動運転を管理する方まで届いておりませんでした。とても残念に思います。
先進的にユニバーサルデザインに配慮した自動車の開発をされているトヨタ自動車さんでも、先に書いた新モビリティ車の試乗会で十分な管理体制があったとはいえ、スロープを登りきれない事態も起きました。今回の交通事故から見てもまだまだ障害当事者などへの理解が足りていないように思えます。
この事故は重大インシデントだと思いますので、しっかり分析・検証していただき、事故発生の可能性を少しでもゼロに近づけていただきたいです。
それで、また素敵なユニバーサルデザインを取り入れたモビリティ車の開発を期待しております!

最後に。
個人の話で恐縮ですが、このような事故に遭わないよう、私も今まで以上に近くを通る自動車には気をつけようと思いました。

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