物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #49』
胸から血を流してリングに倒れ込んだペケ丸。
その目には闘志の炎が燃えているが、体のダメージが酷すぎる・・・。
スーパーフライの嘴が刺さった傷だけではなく、激しい闘いによって以前襲撃された時に負った傷口も開いて来ている。
そのせいで流れ出た自らの血に手を滑らせた結果、頭上に掲げたスーパーフライの嘴が自分の胸に刺さる結果に・・・。
そんな立ち上がれないペケ丸を、残忍な眼差しで見下ろすスーパーフライは、リングの上方へと飛び立つ。
会場の客席の上をまるで哺乳類全員をあざ笑うかのように飛ぶスーパーフライ。
スーパーフライが頭上に来ると、思わず首をすくめ、両手で頭を覆いながら怯える哺乳類達。
あの野郎、馬鹿にしやがって・・・。
しかし、何よりも心配なのはペケ丸だ。
吾輩は視線をリング上のペケ丸に戻す。
ペケ丸は、自分の胸に手を当て、ゼイゼイと息をしながら倒れたままだ。
「マジでまずいな、ペケ丸の状態・・」
ハム星さんがボソリを呟く。
長年に渡り、多くの<けもパンファイター>のトレーナーを務めてきたハム星さん。
そのハム星さんがそう思うのだから、ペケ丸のダメージは限界を超えているに違いない。
タオルか・・・。
吾輩の脳裏に試合前のペケ丸の言葉が甦る。
“タオル投げたら殺すぞ“
例え殺されたとしても、ペケ丸が死なせるわけにはいかない。
吾輩はタオルに手を伸ばす。
と、その時鋭い視線を後頭部に感じた。
振り返るとリング上のペケ丸が吾輩の方を睨んでいる。
その目が吾輩に訴えかけて来る。
“絶対にタオルを投げるんじゃねえ“
と。
でも、ペケ丸、そう言ったって・・・。
と、頭上からスーパーフライの声が。
見上げると、リング上方のライトにぶら下がっている。
「さて、終わりだ。リングが墓場になるのはお前の方だぜ!」
ふわりと飛び立つスーパーフライ。
そして、その鋭い嘴をペケ丸に向けて急降下!
ペケ丸は!
・・・・動けない!!
ダメだ!すまん!ペケ丸!吾輩はタオルを掴む!
「ダメだ!遅い!」
叫んだのは、グレートかもはし。
グレートはそう叫ぶと同時に吾輩の肩に飛び乗り、そこをキックすると、ロープ最上段に飛び移った。
そして、ロープの反動を使うと、
「キエーーーーーッツ」
迎撃ミサイルのように落ちて来るスーパーフライに向かって、頭からまっしぐら!
スーパーフライの嘴がペケ丸に!
と思った瞬間!
グレートの嘴がパカっと開いてスーパーフライの嘴を横からパクリ。
ガシッと掴むと、その勢いのままエプロンサイドへ!
一瞬何が起こったか分からず、ポカンとした空気が会場を支配した。
やがて・・・
「てめえ、何しやがるんだ!」
グレートの嘴を振り払うようにして立ち上がり、スーパーフライが叫ぶ。
ゴングが打ち鳴らされた。
「どういうことだ⁈」
「只今の試合〜、グレート選手の乱入により、ペケ丸選手の反則負けと致します!」
リングアナウンサーの声が会場に響き渡る。
「なに⁈」
スーパーフライがペケ丸へを見る。
えっ⁈という表情のペケ丸がグレートの方を見る。
「いや〜、つい体が動いてしまっただに。ペケ丸、すまん。アンタの邪魔をしてしまった。反省だに」
グレートの顔をじっと見つめるペケ丸。
ふっとその顔に笑みが浮かぶ。
「次やったら殺すからな」
「わかってるだに。いや〜、ホントすまんだに。まずはお詫びに、おんぶさせて貰えると嬉しいだに」
ペケ丸に背をむけてスッとしゃがむグレート。
「仕方ねえな、まずは罰イチな」
グレートの背中に体を預けるペケ丸。
「わかってるだに、わかってるだに」
グレート・・・
ペケ丸・・・
あれ?
2人の姿が滲んで見える・・・。
これで2勝2敗。
勝負は吾輩にかかっている!
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