物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #48』

吾輩は猫である。
名前は、もうある。
ピケ丸、である。
動物達の格闘技リーグ“けもパンファイトクラブ“ファイター
vs
恐竜たちの亡霊“ゴーストザウルス“。
地球生存権をかけた“哺乳類vs恐竜“の5vs5のサバイバルマッチ。
第1戦はゴーストザウルス側に、第2戦はけもパンファイター側に。
第3戦は、カモノハシのグレートかもはしがユタラプトルのジャッキー・アーツに勝利!
これで哺乳類チームの2勝1敗に。
第4戦、ペケ丸の相手はプテラノドンのマスクドスーパーフライ。

あらすじ

高速かつ執拗なスーパーフライの嘴突き攻撃を交わしながら、耐え忍び、ついに嘴を両手でガッシリとつかまえたペケ丸。
そこから、スーパーフライのボディに鋭くかつ重量級のトゥーキックを連打連打で見舞い、しまいには嘴を握ったままのスープレックスを連発!

受け身の取れない状態で、何度も何度も背中からマットに叩き付けられたスーパーフライは、もうヨロヨロだ!
さあ、いけ!ペケ丸!
一気にフィニッシュだ!

そう思った吾輩の目に映ったペケ丸の顔色が、なんだか悪い・・・⁈

「さあ、お前もこれで終わりだぜ」

スーパーフライの嘴を握る手に力を込めてペケ丸が言う。

「ストリートでの借りをきっちり返させてもらうぜ」

そうなのだ、今ゴーストザウルスに監禁されている「けもパンファイトクラブ」界の生ける伝説・パンダー杉山が襲われた時、ペケ丸は一緒にいたのだ。
パンダーの誘拐を阻止出来ず、かつ自身も重傷を負わされたペケ丸。
ストリートファイターの時代から連勝街道をまっしぐらだったペケ丸にとって、それは身も心もズタズタにされる出来事だった。
その現場でペケ丸たちを襲ったのが、このマスクドスーパーフライなのだ。ペケ丸にとっては、その屈辱を晴らす一戦。
その勝利も目前なのに、胸騒ぎがしてしまう吾輩・・・。

ペケ丸が渾身の力を込めてスーパーフライの体を持ち上げる。
今度はスープレックスで後ろに投げるのではなく、まるでサッカーのワールドカップで優勝したチームが、その優勝カップを高々と掲げるような形でスーパーフライの体を逆さに頭上に掲げた。

「貴様の嘴でリングに墓を立てやがれ!」

おお!
このままスーパーフライの嘴を垂直にリングのマットに突き刺すのか!

「垂直落下型の究極のパイルドライバーだに!わしの嘴では絶対に出来ないだにーーー!」

隣にいるカモノハシのグレートかもはしが叫ぶ。
悔しがるところか、そこ⁈

スーパーフライの目にも恐怖の色が!
これで決まりだ!

と、その時、スーパーフライの嘴の先からポタポタと赤いものが落ちて来た。

なんだ?
ん、血⁈

「ヌルッ」

ペケ丸の両手からスーパーフライの嘴が滑り落ちた。
その嘴が!ペケ丸の胸に!

グサッッッ!!!!!!

ぐわあっっ

ペケ丸の低くくぐもった叫び声!

ペケ丸ーーーーーーーーー!!!!!!!

胸に刺さった嘴を必死で掴むペケ丸。
その手は血だらけだ。
胸からの血、いや、それだけじゃない。
襲撃で負った傷口が開いて、そこから出る血だ。

ぐうううっぐわっっ・・・・ううぉうぉうぉウォーーーーー!!!!

痛みで腕、いや全身を震わせながら、ペケ丸が自分の胸に刺さったスーパーフライの嘴を引き抜いた!
そして同時にリングに倒れ込む2人。

ペケ丸の勝利のフィニッシュを期待して、ボルテージが上がりっ放しだった会場が低くどよめいている。
そのどよめきの中、先に立ったのは・・・スーパーフライ。
ペケ丸の血で赤くなった嘴をブルッと振るわせ、ゆっくりと首を一周まわした。

「どうやら、天はお前に味方しなかったようだな」

残忍な眼差しで倒れているペケ丸を見下ろすと、口の端にヌメっとした笑いを浮かべた。
そんなスーパーフライを鬼の形相で下から睨むペケ丸。
だが、その息は荒く、全身は痛みと苦しみに耐えながら震えている。

「では、これで、さようなら」

スーパーフライが天井に向かって羽ばたいた。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?