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書くスピードは重要じゃないというけれど・・・?

小説を執筆するにおいてもっとも重要なことはなんでしょうか。

スピード?
丁寧さ?
緻密さ?

以前、「もっとスピードを落として書いたらどうだろうか」といったご指摘を受けたことがあります。なるほど。たしかにそうかもしれない。書くスピードは重要ではない。それよりもっと執筆を丁寧におこなったほうがいいだろう・・・

そう思いましたので

ここ最近、猫目は執筆スケジュールに余裕を持たせています。

が、しかし。

まったくもって上手くいきません。WHY ? いったいなぜ?
前よりも確実に丁寧に、そして大切に書き進めているはずなのに良い結果がでない。猫目が思う良い結果とはすべての登場人物がイキイキと躍動している物語(世界)を指します。しかしその結果がでない。

そこで考えられる理由は2つ。

1つは、丁寧に丁寧にと心がけるが故に、表記や、誤字脱字が妙に気になってしまいなかなか物語が進展しないという点。

そして

2つめに、時間をかけすぎてしまっていることで当初の感情が薄れてしまっているということ。

これらは非常に問題です。

なぜなら、物語をつづる上でもっとも重要なはずの「熱量」が欠損してしまっているからです。

そうです。
物語の執筆には熱量が欠かせません


「どうしてその物語が描きたかったのか」

こうした心の動きはとても大切で、できれば執筆最後まで持っていたい感情です。たしかに以前の猫目はドバーっと大量の文字と言葉を、これでもか、というくらいの速度で書きあげていきました。具体的には10万文字のいわゆる長編と呼ばれるものを2週間で書き終え、形式上、完成させていました。それは今思うとすさまじいスピードだったと感じています。

そして、たしかにそこにあったのは「乱文」といっても差し支えない具合の文章たちでした。

しかし

そこに込められた想いや情熱は並大抵ではなく、おそらく冷静になっては書けなかったモノです。

たとえば一昨年。猫目は「お盆」についての物語を描きました。そしてその物語をどうしてもお盆のあいだ中ひいては夏のあいだ中に書きあげたかった。その理由はシンプルで、お盆への想いが熱いうちに文章に残しておきたかったということがあげられます。

もちろん

プロの作家先生方はそれが冬であろうが、夏であろうが、季節問わず物語を進行させています。それにかんしては猫目も同じです。冬の物語を夏に書きますし、反対に夏の物語をお正月に書くこともあります。

そういった技術がないとプロの作家としてやっていけないというのも事実でしょう。しかしながら、この「お盆」の物語だけはどうしても「お盆」のうちに書いてしまう必要があったんです。

それは、お盆という限られた時間にしか出会うことが叶わない愛する者へたいする想いを精いっぱい詰めこむ必要があったから。


みなさまもご存知のとおり、時間は有限です。限られた時間のなかでしか書くことができない物語・・・そこにはありったけの想いがこめられています

それが結果として、物語全体のクオリティをあげることに繋がるのは言うまでもありません。こうした想い(感情)は強かったり弱かったりと変動するのが常です。それを踏まえたうえで「想い」の感情が強いうちに書いてしまいたかった。

それでは話を戻しまして・・・
小説を執筆するときに・・・

「熱量」と「丁寧」どちらを取るか

という問題について。

先に述べさせていただきますが、物語の構成に時間をかけることは大前提です。正直いってここにかける時間は執筆時間より長くてもいいくらいだと思っています。問題は、執筆時。

ある程度の構成が整ったあと、
いざ執筆へ入るといった段階において重要なのは・・・

断然、熱量です。

断言いたします。この段階において適切な表記や、誤字脱字、日本語的文法を熟考する必要はいっさいありません。

むしろ、邪魔です。

そんなものは作品を書きあげてから(次の段階である「添削」で)いくらでも修正できます。誤字脱字にかんしては、もはや最終段階である校正時でもかまいません。執筆中にいちいち誤字や脱字のチェックをしていたら、それこそ、物語の流れがせき止められてしまいます。

つまり、執筆時にかぎって「熱量」と「丁寧」の関係は以下のとおりです。

 執筆時・・・ 熱量 》 丁寧(正確さ)

断然、熱量をとります。

そして、添削の段階になってはじめてその関係性は反転します。

添削時・・・ 熱量 《 丁寧(正確さ)

ちなみにこの添削は1度や2度で完成させるものではなく、時間の許す限り何度も何度も繰り返しおこなっていくのが猫目の中での原則です。

つまり

時間をかけるべきは添削時であって、執筆のスピードを落とす必要はありません。熱量をもって執筆をおこなっていくのと反対に添削時に必要なのは「冷静さ」です。この時、はじめて冷静になって物語全体をつくりあげていけばいい。ですので猫目は執筆時は断然、スピードを選びます。

「自分はこれが書きたいんだ!」

といった気持ちが薄れてしまっては本末転倒です。しかもそれらの感情はすべて物語に反映します。そして読者はそれを感じ取ります。いかがでしょう。あなた様の物語は息をしていますでしょうか。

ただでさえ、活字を扱った媒体は世間から衰退しつつあります。せっかくお金を出して物語を読むのだから、どうせだったら生きている物語を読みたいですよね。今、書店に並んでいる人気作家さんの作品はすべて息をしてそこに存在しています。

初期衝動

じつはこれまで話してまいりました「当初の感情(自分はこれが書きたいんだ!)」は初期衝動と呼ばれているものです。

初期衝動とは、その物語を描きたいとおもったキッカケのことをいいます。そして初期衝動こそ小説をつづっていく上でもっとも重要な要素の1つです。なにを隠そう初期衝動は小説のテーマや、方向性の決めるのに無くてはならないものです。

だからこそ、もの書きは初期衝動を忘れてはいけないのだと思います。

この初期衝動・・・

とくにクリエイティブなどの現場で活用されそうなコトバですが、じつはどの業界・職場にも共通します。

なにをはじめるにしろ初期衝動が働いているはずです。これは猫目がとった統計ですが、どの職場でも長く勤めていれば皆さま1度は「会社(ここ)辞めたいな」といった感情を抱くものです(猫目統計)。

そんなときこそ思い出してみてください。
今の会社にはいったときの初期衝動を。

そこに惹かれて心が動いたから・・・
その会社でなにかやりたいことがあったから・・・
目標とする人物がいたから・・・

などなど、自分なりの初期衝動があるはずです。

小説も同じです。長く書いていれば書いているほど、「もういっそのこと書くの辞めてしまおうか」という気持ちになってくるものです。10万文字を超える長編を添削している際や、改善すべき課題が発生したときはとくに苦しいものです。

そんなとき、猫目は初期衝動を思い返します。
猫目の初期衝動はもちろん、宇宙で1ばん愛している亡き愛犬ポメラニアンとの約束です。そしてこの約束を猫目が破ることは1ミクロンもあり得ません。ですので猫目が小説を辞めることは生涯あり得ません。

さて

今回は「小説の執筆にスピードは必要か」というテーマでお話させていただきました。

ちなみに「もっとゆっくり書いたらどうか」とご指摘をいただいた件ですが、のちほど確認したところ、その方は「全体(取材・添削含め)にかける時間をもっとゆっくりしたらどうだろうか」とおっしゃられたようでした。猫目の理解力がないがために勘ちがいをしてしまい申し訳なかったです。


さいごになりましたが・・・

先週のnoteにてお約束いたしました1週間ぶんの人物描写をこちらにポコっと貼らせていただきます。反省点はいろいろとありますが……。

【バス停】8月15日(土)晴れ

 バスの時刻表をにらみつけているのは、麦わら帽子を深めにかぶった年齢不詳の女性だ。肩にかかる髪は見ているだけで気分をあかるくさせるピンクベージュ色。片側二車線の国道を自動車が通過していくたびに彼女のロングスカートがゆれる。黒いビーチサンダルが反れるくらい踵を浮かし、時刻表を見ていることから背丈はそこまで高くない。


【電車内】8月16(日) 晴れ 午前中

あんな柄は見たことがない。

ハワイアンシャツのハイビスカスの代わりといったように、そこには無数の女の顔写真がプリントされてあった。

おそらく歳は20代前半。片手に持っているスマホに男の顔が映りこむ。なんて大きなメガネをかけているのだろう。

そして、目。

まるでお人形みたいに丸く、懐こい瞳をしている。

それから、髪。

一見して鳥の巣じみたもこもこヘアはしかし、よく見るとブラウンが入っていてオシャレだ。



【道】8月17(月) 夕方 晴れ

左手に鳥五目おむすびを持ち、食べているその男児はおそらく部活帰りなのだろう。背中と左手のバックが見るからに大荷物だ。短く整えた髪から覗く形のいい耳。よろめきながら何度かバックを持ちなおすよく焼けた腕に汗が光っている。



【駅ホーム】8月18(火)晴れ

白髪混じりの老紳士。見るからにパリッとしたスーツを着こなしている彼の足元だけが異彩を放つ。

なぜ、スニーカー。



【コンビニ前】8月19日(水) 夜

まず、首の角度が異様だ。

ななめ45度に首を垂らしたその視線の先にあるのはスマホ画面。

右手でスマホ。
左手で缶チューハイ。

あまりに髪が長いので一寸、女性かと思ったがよく見ると男性だった。首を垂らしているせいで身長は定かでないが、低くはないだろう。とにかく顔の表情が見えない。若くはないが年老いてもいないこの男性からは、どこか陰気な雰囲気が感じられる。上下ともに黒い服を着ているせいだろうか。

かれは先ほどから同じ体制でそこに立っている。まるでスマホだけがその場に浮かんでいるような不思議な光景だ。



【道中】8月20日(木)夜 くもり

からだ中を覆うもこもことした体毛。
前歯をきらめかせて引き上げる口角。
クリクリとしたつぶらな瞳。

まちがいない。

あのシルエットは…


ポメラニアン だ!
それはまるで夜闇に浮かびあがる毛糸玉そのものだ。うふふ。


【ファミレス】8月21日(金)晴れ

2本の青いラインで繋がれたシルバー色のジャージに目を惹かれる。彼女たちの髪はどれも黒く、ツヤやかだった。
頬に刻まれたいくつかの笑窪、友達と会話を交わすときのあどけない表情は学生特有の雰囲気をまとっている。

スニーカーの汚れは運動部に所属していることの表れか。生地が白いからかとかく泥が目立つ。


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それでは、みなさま。また来週の土曜日にお会いしましょう。本日もさいごまでおつきあいくださいましてありがとうございます。

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