詩 ・ 手をふって


この世界は美しい
なんていうと
立ち去りにくくなっちゃうから
ぼくはもっと
この世界をきらいになっていたいんだ
愛してるなんてことばを
いちどもつかわないで
いたいんだ
あの堤防のとこの
陽がたまったようなきれいな海や
そこに直接降る
雨なんかを知らないでいたいんだ
ひとにやさしくされたり
ふだんいやなやつのやさしさを
うっかり目撃したりしないでいたいんだ
崑崙や天山山脈みたいに
マンガやテレビで見たものでしょ
ってかんじで
えんやゆかりもない
生きものは
そのままであってほしい
前世は
レンジとかシンクとか
生命体じゃないといい
さいごまで
突かれもぶつかりもしない
ビリヤードの玉みたいに
この世界は醜かったねって
わらいながら
手をふって



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