ゆびぱち

詩 ・ my name is

土から生えてきたみたいに
そこにいた
気がついたらね
おもいだせるものはなにも
なくて 実がしぼんじゃった
くるみみたいに頭がカラカラ鳴った
記憶もないのに
ことばだけはあった すべてを失っても
ことばだけ忘れないのは
なんでだろう
はじめにことばありき っていうの
「はじめにことばありき!」って
いいたいためにちがいない
ぼくの名前は

なんていってみても
出てこない  my name is

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詩 ・ 雨色

雨色にしてるの
たまねぎを
そういったの わからなくて
あたまのうえに毛がたったみたいに
ふるえた
いためていためて
なみだになる
そんなふうに つらい
ことばかりおもいだして
たくさんの小銭みたいな
ガスのおと
だれかをつかまえた
だいじなこころの 握力がよわくて
ふうせんが
まいあがる
かわりにつかんだ すすきの穂を
だいじにして だいじにして
かわりだなんて いえなかった
あめがたくさんふ

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詩 ・ あの感じ

ろうそくが
感情のないひと吹きに
またたくときの
あの感じ
ふろあがりの幹に
水滴がしなだれかかるときの
あの感じ
大好きな音楽が
あぶらとりがみ
みたいにはりつく
あの感じ
海に直接降る雨が
ほんのひとにぎりの夢さえ
台なしにしてしまうときの
あの感じ

たったひとつの物音が
神経をよごして
舞い散る
あの感じ

どっちを向いても
思い出しかなかった
閉じこめられて 叫びが
どこにも
とどかな

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詩 ・ 手をふって

この世界は美しい
なんていうと
立ち去りにくくなっちゃうから
ぼくはもっと
この世界をきらいになっていたいんだ
愛してるなんてことばを
いちどもつかわないで
いたいんだ
あの堤防のとこの
陽がたまったようなきれいな海や
そこに直接降る
雨なんかを知らないでいたいんだ
ひとにやさしくされたり
ふだんいやなやつのやさしさを
うっかり目撃したりしないでいたいんだ
崑崙や天山山脈みたいに
マンガやテレビで

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詩 ・ ウサギのクラブに入らないか?

ひとは耳から生まれた
なんていっても
のれんにアディオス

いちぶのひとは
耳から生まれたのに
それをしらずに
死んでいく by 生きていく

テラピアと
ピラルクしか
魚のいない国に行きたいの?
ふかひれで聴くだなんて真相を
知りたいの?

川をわたるまえに
クロークに毛皮をあずけて
ほんぽうなうたを
うたうきみは まるで
ウサギのクラブに
入るみたい

当面の
こだわりをすてて
研修医をへ

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詩 ・ なけなしの全能感を小出しにして

なけなしの全能感を小出しにして
空に歌ってる
音符は毛ばだって
くすくす笑うLR

なけなしの粘土を勇気にして
連絡橋に立っている
ボロが出ないようにって
背すじを接木して

谷はさかさの山頂だって
はげましてくれたひとの声も忘れて

なけなしの全能感で
小商い
ひどいゆめだったねって
あの声がいってくれないかなって
拾いあげて
泥を払って
なけなしの
つめの半月くらいの
くるぶしソックスくらい

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詩 ・ バロメーター

バロメーターをひねると
ちょっと国が亡ぶ
だからバロメーターというのだ
神保町には岬があって
そこに牧歌的なひとが立つ
何かを眺めてる
ケジャンを食べている
バロメーターはなんだか
不審な顔で座っている
花のように
険しい目つきで

詩 ・ ケツァルコアトル探偵社

入社しました!
東銀座にあって
このたび
ホールディングスまがいの
へんまななえ
じゃなくてへんな名前

「いやな夢を見てもう生きものでいたくない」事件
「風当たり強め中学」事件
「ケンタッキー五臓六pパック」事件
「残り香狂伯爵」事件
「(株)居留守」事件

名だたるそれらを
解決したのです!
わたくしも導きたい
そしてもういわせない
けっしていわせはしない
貴社などと
なにをもってしても

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詩 ・ 船だ、逃げろ

そういっておわる
小説があったね
ゆすり蚊とゆずり葉の
キメラ生物だった
あの日
あなたもわたしもね
展開が多いものがたりのように
白くてあたりまえな雪がふる
人工感情を移植してね
パイプだらけで生きようって
西も東も計算できない
ゆっくりとおるだけの通り魔
悪い予感が在野にあるね
そことおるからあけてって
いったのに 夫婦で待ってるのに
もう幾年たっただろう
ひとつの期待に
人生のすべてが収納さ

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詩 ・ 砂時計と牛

なにかをひっくり返す
そのためにあるのだ牛の角は

牛とはなんだろう なんにせよ
決めたのだ
その角でひっくり返すのなら
この砂時計だと

それをだれかがひっくり返さなければ
せかいは蜜のように
こごって
饐えていく

またあの夢かというように
半透明に
にごっていく

ほんらいならその役がわたしなのだ

牛はそんなわたしを
なにもかもしっているような
なにひとつ興味がないような
すずしい目で

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