斉藤倫

〈おとなの読書感想文〉のりくん

のりくんがあの頃書いていた文章は、天才的だった。

クラスの文集が出来上がると、わたしと家族はのりくんの作文を読むのが楽しみでした。
今でも印象的で覚えているのが、おおよそ以下のようなものです。

マグロとサーモンと穴子といかとネギトロと納豆巻きとシメサバといくらと玉子とかっぱ巻きと茶碗蒸しと数の子とヒラメと甘エビと赤貝と鯛とあら汁を食べました。

それからウニとカニとしらすとトロとラーメンとプリ

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こんなおじさんになりたい

『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』斉藤倫(著)、高野文子(画)

「高野文子が好き」が入り口で読んでみました。
児童書にカテゴライズされてるけど、これはどう読んでも、大人が読んで泣くやつじゃないでしょうか。実際最後に泣きました。わたしだけか?
『君たちはどう生きるか』みたいに「大人の男と少年が語り合いながらいろいろ発見していく」というスタイル。
わたしもこういうおじさん

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詩 ・ my name is

土から生えてきたみたいに
そこにいた
気がついたらね
おもいだせるものはなにも
なくて 実がしぼんじゃった
くるみみたいに頭がカラカラ鳴った
記憶もないのに
ことばだけはあった すべてを失っても
ことばだけ忘れないのは
なんでだろう
はじめにことばありき っていうの
「はじめにことばありき!」って
いいたいためにちがいない
ぼくの名前は

なんていってみても
出てこない  my name is

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詩 ・ 雨色

雨色にしてるの
たまねぎを
そういったの わからなくて
あたまのうえに毛がたったみたいに
ふるえた
いためていためて
なみだになる
そんなふうに つらい
ことばかりおもいだして
たくさんの小銭みたいな
ガスのおと
だれかをつかまえた
だいじなこころの 握力がよわくて
ふうせんが
まいあがる
かわりにつかんだ すすきの穂を
だいじにして だいじにして
かわりだなんて いえなかった
あめがたくさんふ

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詩 ・ あの感じ

ろうそくが
感情のないひと吹きに
またたくときの
あの感じ
ふろあがりの幹に
水滴がしなだれかかるときの
あの感じ
大好きな音楽が
あぶらとりがみ
みたいにはりつく
あの感じ
海に直接降る雨が
ほんのひとにぎりの夢さえ
台なしにしてしまうときの
あの感じ

たったひとつの物音が
神経をよごして
舞い散る
あの感じ

どっちを向いても
思い出しかなかった
閉じこめられて 叫びが
どこにも
とどかな

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詩 ・ 手をふって

この世界は美しい
なんていうと
立ち去りにくくなっちゃうから
ぼくはもっと
この世界をきらいになっていたいんだ
愛してるなんてことばを
いちどもつかわないで
いたいんだ
あの堤防のとこの
陽がたまったようなきれいな海や
そこに直接降る
雨なんかを知らないでいたいんだ
ひとにやさしくされたり
ふだんいやなやつのやさしさを
うっかり目撃したりしないでいたいんだ
崑崙や天山山脈みたいに
マンガやテレビで

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詩 ・ ウサギのクラブに入らないか?

ひとは耳から生まれた
なんていっても
のれんにアディオス

いちぶのひとは
耳から生まれたのに
それをしらずに
死んでいく by 生きていく

テラピアと
ピラルクしか
魚のいない国に行きたいの?
ふかひれで聴くだなんて真相を
知りたいの?

川をわたるまえに
クロークに毛皮をあずけて
ほんぽうなうたを
うたうきみは まるで
ウサギのクラブに
入るみたい

当面の
こだわりをすてて
研修医をへ

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詩 ・ なけなしの全能感を小出しにして

なけなしの全能感を小出しにして
空に歌ってる
音符は毛ばだって
くすくす笑うLR

なけなしの粘土を勇気にして
連絡橋に立っている
ボロが出ないようにって
背すじを接木して

谷はさかさの山頂だって
はげましてくれたひとの声も忘れて

なけなしの全能感で
小商い
ひどいゆめだったねって
あの声がいってくれないかなって
拾いあげて
泥を払って
なけなしの
つめの半月くらいの
くるぶしソックスくらい

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詩 ・ バロメーター

バロメーターをひねると
ちょっと国が亡ぶ
だからバロメーターというのだ
神保町には岬があって
そこに牧歌的なひとが立つ
何かを眺めてる
ケジャンを食べている
バロメーターはなんだか
不審な顔で座っている
花のように
険しい目つきで

詩 ・ ケツァルコアトル探偵社

入社しました!
東銀座にあって
このたび
ホールディングスまがいの
へんまななえ
じゃなくてへんな名前

「いやな夢を見てもう生きものでいたくない」事件
「風当たり強め中学」事件
「ケンタッキー五臓六pパック」事件
「残り香狂伯爵」事件
「(株)居留守」事件

名だたるそれらを
解決したのです!
わたくしも導きたい
そしてもういわせない
けっしていわせはしない
貴社などと
なにをもってしても

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