サイトウリン

詩人・斉藤倫のこと 詩集に『手をふる 手をふる』(あざみ書房)など 物語に『どろぼうのどろぼん』(福音館) などがあります 近刊に『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館) 『はるとあき』(うきまるさんとの共作 小学館)
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サイトウリン works

詩人・斉藤倫のこと。

詩集に
『手をふる 手をふる』(あざみ書房)、『オルペウス オルペウス』(思潮社)、『さよなら、柩』(思潮社)、『本当は記号になってしまいたい』(私家版)など。

物語に
『どろぼうのどろぼん』(牡丹靖佳 絵・福音館書店)で、日本児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞。『せなか町から、ずっと』(junaida 絵・福音館書店/坪田譲治賞候補)、『クリスマスがちか

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[余白計画] ライ麦畑を聞いてきた

先日、「文芸漫談・ライ麦畑でつかまえて」を観にいってきました。

文芸漫談というのは、奥泉光さんといとうせいこうさんが、さまざまな課題図書について、おもしろおかしく語る、講義のようなフリートークのようなステージです。初めて観たんですが、もうシーズン4だそうです。会場は、新宿文化センター。

ぼくは、十代のときに野崎孝さんの訳で読んで、それきり何十年も読み返していません。ですがその本はもう手もとにな

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詩 ・ my name is

土から生えてきたみたいに
そこにいた
気がついたらね
おもいだせるものはなにも
なくて 実がしぼんじゃった
くるみみたいに頭がカラカラ鳴った
記憶もないのに
ことばだけはあった すべてを失っても
ことばだけ忘れないのは
なんでだろう
はじめにことばありき っていうの
「はじめにことばありき!」って
いいたいためにちがいない
ぼくの名前は

なんていってみても
出てこない  my name is

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詩 ・ 雨色

雨色にしてるの
たまねぎを
そういったの わからなくて
あたまのうえに毛がたったみたいに
ふるえた
いためていためて
なみだになる
そんなふうに つらい
ことばかりおもいだして
たくさんの小銭みたいな
ガスのおと
だれかをつかまえた
だいじなこころの 握力がよわくて
ふうせんが
まいあがる
かわりにつかんだ すすきの穂を
だいじにして だいじにして
かわりだなんて いえなかった
あめがたくさんふ

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詩 ・ あの感じ

ろうそくが
感情のないひと吹きに
またたくときの
あの感じ
ふろあがりの幹に
水滴がしなだれかかるときの
あの感じ
大好きな音楽が
あぶらとりがみ
みたいにはりつく
あの感じ
海に直接降る雨が
ほんのひとにぎりの夢さえ
台なしにしてしまうときの
あの感じ

たったひとつの物音が
神経をよごして
舞い散る
あの感じ

どっちを向いても
思い出しかなかった
閉じこめられて 叫びが
どこにも
とどかな

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詩 ・ 手をふって

この世界は美しい
なんていうと
立ち去りにくくなっちゃうから
ぼくはもっと
この世界をきらいになっていたいんだ
愛してるなんてことばを
いちどもつかわないで
いたいんだ
あの堤防のとこの
陽がたまったようなきれいな海や
そこに直接降る
雨なんかを知らないでいたいんだ
ひとにやさしくされたり
ふだんいやなやつのやさしさを
うっかり目撃したりしないでいたいんだ
崑崙や天山山脈みたいに
マンガやテレビで

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