見出し画像

えーえんの補助線 〜 笹井宏之の歌を読む(2)


笹井宏之さんの歌を鑑賞する、パート2です。
ぼくは詩人なので、短歌の鑑賞というには詩人目線すぎるかもしれません。
序論、本論、結論というていではなく、一首評(のようなもの)を重ねていくかたちで、笹井さんの創作物がなぜ「ああいうふう」に見えるのかを感じとっていきたいとおもいます。


2 名前のない音楽

*

それはもう「またね」も聞こえないくらい雨降ってます ドア閉まります


笹井さんの歌に出てくる雨は、実体というより、「音」のようにおもわれる。

「ドア閉まります」といういい回しから、電車のホームと考えていく。
別れのシーンで、「またね」も聞こえないのはどっちだろうか。この歌の主体は、ドアのどっちがわにいるのだろう。
相手が「またね」といったなら、聞こえないのにどうして「またね」とわかったのか。口の開きか。じぶんがいった「またね」が聞こえなかったようにもとれる。

ここから先は

1,689字

¥ 110

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?