詩 ・(株)居留守


株式会社居留守の
社員たちが
息をひそめて
居留守をしていた午後
永遠におもえるような長い時間
いくつものおもい出が
頭のうえを通っていった
リカオンにかまれたこと
好きな男の背中のタグを
泣きながらむしりとったこと
連名で神さまに
退陣要求をしたこと
かき玉汁のもようで
わたしたちの未来がわかったこと
それもこれももう
弊社にはうつくしすぎるから
時のきりぎしの向こうまで
永遠につづきそうな
この電話の音がいつか
潮騒みたいに
うすれゆきますように



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