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成人の日/ゆりかごの美術室

 現在開催中の個展会期中に、成人の日があります。地元の個展ということもあり、会場で18歳の自分を思い出していました。
 私は中学生の頃に作家になることを決めていたので、その後も進路に迷うことは皆無で、作品制作を中心に高校生活をしていました。
 進路相談や三者面談に関しては、「齋藤は別に何もしなくていいよな。俺より自分の進路に詳しいだろ?頑張れよ。」とだけ言って担任の先生は放置してくれました。お陰で18歳になる頃には、美術の授業と美術部内の制作が、私にとっての通学の意味でした。その時に自分が興味がある事しか頭に入ってこないのは、性分なのかもしれません。

 そんな美術部での友人や先生との日々は、現在の自分の礎を築いていて、その地盤が揺らぐことは今以てありません。
 “自分”ー”テーマ”ー”素材”という三者が絡み合いながら進む濃密な時間の体験や、作品を通じ、他者と関わることの「自己の檻」を超える爽やかさ。
 一つ一つの踏み込みや、その規模が変わっても根っこは同じです。

 当時の先生は、今でも作品の話を率直に語ってくれる数少ない信頼できる方。
 関西に移住した後輩には、関西の個展の際にいつもお世話になっています。その時に一緒に食べる米粉パンは、名古屋の後輩の店のもの(その時の様子)。
 東北に移住した同級生は今年、私を作り手として山形の滞在制作の提案をしてくれてそれが実現しました(その時の様子)。
 先輩は私の制作風景を、独特なセンスで撮影してくれました(その時の様子)。
 会場に見にきてくれる方たちも含め、「作家としての自分」と関わりが続いていることを、とても嬉しく思います。

 現在開催中の個展会場を見渡すと、大学院修了後に出会った方々。
 作品を作ることは、たった一人で世界を創造するようなものですが、作家活動自体は、作品を作るだけではありません。
 「”作者”と”作家”は違う。”作者”には誰でもなれるけど、誰でもが”作家”になれるわけではない。」敬愛する先輩作家のこの言葉は、年々実感を伴うようになりました。
 作家は一人ではありません。額屋和紙職人など素材に関わる方々、テーマの関係書籍の著者の方(なんと今回会場にもいらしてくださいました)、画廊のオーナー、関係スタッフ、バイヤーや会場の販売員、百貨店の方々、そしてお客様。いつの間にか、こんなに多くの方々と関わり合いながら自分が望んだ活動が出来ています。それは18歳の自分は夢にも思わなかったこと。実際に動くことと、体験することの積み重ねだけがそれを作り上げているので、事前にそれを脳内に具体的に描くことなどほとんど不可能なのです。
 そしてそれらは全て「作品が繋いで」くれました。作品が繋ぐ縁は、私が作品制作を続ける限り無くなりません。私は作品制作を死ぬまでしたいので、この渦中に居られる事は、本当にありがたいと改めて思います。

 「今から四半世紀近く経っても、作家としてなんとかやってるよ。」と18歳の自分にこっそり教えてあげたいものです。
 「言われなくても分かってるよ。良かったじゃん。」と生意気な調子で返されそうですが。

齋藤悠紀個展〜多層ガラス絵〜「かくれざと」地元浦和で、9日(火)まで開催中です。

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