見出し画像

自分の身体を受け入れることの難しさったらないわ

次の「エトセトラ」の特集は身体だという。長田杏奈が責任編集の「私の/私による/私のための身体」だ。

そこで、そのアンケートページに掲載する回答を募集しているというので、何度かチャレンジしてみたのだが、どうしても、どうしても最後まで回答することができなかった。


身体の見た目で悩んでいること、気に入っているところ、違和感、恥ずかしさ、ダイエット、脱毛、恋愛、性など40項目。

三度トライして、一度目は冒頭の年齢や性別など、本当にはじめのところでつまづいた。自分の身体について考えることや、自分自身を客観的に見るということに対して拒絶反応が出てしまいフリーズ。最初のページで完全に手が止まった。

少し間を開けての二度目はもう少し先に進むことができた。とはいってもやはり自分の身体についての答えを書き込むことができない。せめて選択肢があるものはギリギリ選ぶことができた。しかし、空欄を埋めることができない。外見の話とそれを仕掛けてくる人を避け続けてきた結果、そもそもの思考能力がなくなっていると気付いた。

そして三度目。アンケート締切りの2月29日が近づいてきたときに、これで最後にしようとトライ。がんばれわたし。できるかわたし。あれ、でもなんでこんなにがんばってるんだっけ?それは、たぶん関わりたいから。そうだ、この時代にこういう雑誌が生まれてこういう企画が組まれたこと。そして声を募っているということ。そのことがありがたくてうれしくて、買って読む以外にも何か関わりたい、と無力ながら思ってしまった。

だから、よっしゃここはひとつがんばるよ。なんて思ってアンケートを開いてみたけれど、結局、送ること以前に埋めることすらできなかった。ただ、過去二回はできなかったけれど最後に初めて出来たこととして、質問事項を全部観ることが出来た。独り言でも心の中でも答えることができなかったけれど、それだけはできた。ただ、長く眺めていると少しずつ呼吸が苦しくなってきてしまって、やっぱダメだな私にはレベルが高すぎる、とそっとアンケートを閉じた。それですっぱり諦めた。

そういえば、ちょっと複雑な家庭環境と元々の感受性の強さがこれでもかというくらい絡み合ってしまい、自己肯定感が著しく低いことがずっと悩みだった。子供の頃、自分の存在や生まれてきたこと自体がひたすら許せなかったし、女であることを受け入れることが非常に困難であった。兄にはない門限があることも、「女だから」という理由で言葉遣いを注意されることも、納得のいく説明を親に求めても、反論すら受け付けてもらえないことも、とにかくとにかく腹立たしかった。そして自分自身がそんな混乱している状態なのに、顔や身体といった外見についてとやかく言われることが「マジで無理」だった。

「いいじゃん二重なんだから」「痩せててうらやましい」「ネイルしないの?」「ももう少しここがこうだったらね」

きっとこんな会話が毎日どこかで行われていて、それはコミュニケーションだったり本心だったりマウンティングだったり様々なんだろうけれど、やはり、自分の身体は誰かのためにあるのではないから、これだけは絶対的であってほしいから、誰に何を言われようと自分が好きなら好きでいいし、悩みならそれは悩みなのだ。

「みっともないことはするな」「人に迷惑をかけるな」と繰り返し言われた結果、周りの目ばかり気にして自分自身に関心のもてない人間になった。それは身体に対しても同じで、自分を労ったり身体や心を休めることがとても苦手で、つい雑に扱って酷使してしまう。

ただ、私はずっと思っていたのだ。小さな頃からの治療痕だらけの歯のせいで「大きな口を開けて笑わないほうがいいよ、みっともないから」と言われたときも、久しぶりに顔を合わせた人に「シミが増えたね」と言われたときも、顔にこだわる人に私の顔について「マシなほう」と言われたときも、うるせえ余計なお世話だよ、とずっと思っていた。

その身体はその人だけのものだから、誰かに評価されたり選ばれたりするためにあるのではないのだから、どうかどうか大切にして労りながら楽しく生きてほしい。自分を大切にできないくせに人に対しては強く思う。たくさんの人の希望が詰まった素敵な特集になりますように。楽しみに発売を待ちたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?