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水産業の成長のために ~ 漁業法改正後の現場レポート ~

漁業法が70年ぶりに改正され、平成30年12月に公布、令和2年12月に施行されました。
そしてその改正が決まった漁業法の趣旨に即した改革が、役所をはじめとして動いているかを確認する作業を自民党の行政改革推進本部の規制改革部会の座長として仰せつかりました。
この時から、私が水産政策と関わりを持ち始めました。

■ 法制化されども・・・

法律として決めても、その中身を実際に実現させていくというのは大変なことです。
漁業関係団体からの声が直接届く議員の中には、その声に応じて改革の方向を潔しとしない意見も出ます。
例えば、今年の自民党の水産部会で、前部会長が「漁業法の改正の中身をいかに骨抜きにするか、尽力した一年だった」と発言するほどでした。
一方、漁業者側からはやってはいけないと決めたルールを「ひっくり返してほしい」という要望がありました。
それくらい反発の多い法改正でもありました。しかし、「それは違法なので、できません」と水産庁がきっぱりと答えることができたのも、法制化したおかげと言えます。
50年先の業界全体のメリットを考えた場合と、今年の各社のメリットを考えた場合とでは、自ずと優先順位が変わり、結論も異なります。
現在の状態に目配りしながら、50年先のビジョンや目標を明らかにし、そこに歩を進めていくことが必要なのです。

■ 菅前総理と富戸を視察

そうしたこともあり、党の規制改革部会がウォッチをすることになったわけです。
当時の状況などを踏まえ、菅官房長官(当時)に提言を提出したのが平成31年4月24日でした。
既に党の行政改革本部は離れましたが、それ以降もライフワークのテーマの一つとして水産部会に出席し、現場の方々の話を伺うなど、私なりに水産改革推進に努力してきました。
その一環として、長い間お付き合いいただいている静岡県・伊東市の富戸で定置網漁を営んでいる方々の現場を、菅前総理を含め衆議院議員8人で視察しました。
菅前総理は漁業法改正において官房長官として深く関わり、実現に尽力していただいていました。そして、その後の改革の状況についても気にかけていらっしゃいました。
そういう経緯があったため、今回の視察は漁業法改正を活用して新しい取り組みをしている現場を見ていただきたいと思ったわけです。

■ 自立する漁師たち

まず、特筆すべきは、この改正を受けて、その漁場で漁を営んでいる者がその海域の権利を優先して得ることができるようになったので、伊東市・富戸の定置網漁業をしているみなさんが漁業協同組合(漁協)から独立をして会社を作った、ということです。この件について同席していただいた漁協や組合長からもお話を伺いましたが、この独立を反対しなかったとのことです。独立された社長に「会社にして、何が一番変わったか」と尋ねると、「意思決定のスピード」という言葉が返ってきました。組合の場合、理事会などを通さなくてはやりたいことが実現できないが、会社にすることによって、自分たちですぐに実行できる、と。

■ 「やってみよう」を形にする漁師たち

例えば、先日、船をリニューアルし、進水式を行いましたが、その際、観光船としても活用できるよう、トイレを設置しました。すでに、朝の定置網漁の見学と夕刻から日の入りを見ながらのちょっとしたクルーズなどを行っています。私たちが視察する前日も、外国の方々が見学したそうです。定置網漁を多くの人に体験してもらうことは、水産業や魚そのものに興味関心を持っていただく大変重要なきっかけになります。社長も「次世代の漁業従事者」を念頭にこの取り組みをされており、私もその点について共感しています。また、畜養事業も考えているそうです。実は、養殖などの「いけす」は湾の中のような潮の流れのないところでないと難しいと言われていました。そのため、富戸の海ではいけすを設置することができませんでしたが、最近、網の素材が改良されて可能性が出てきたそうです。これにより定置網でかかってしまう稚魚をそのいけすに移し替え、成長させてから市場に出すことができるようになります。いけすによって、出荷時期の調整もでき、値段のいい時に出荷できるということです。すでに畜養事業を、網代の漁師仲間が静かな湾内で鯖で行っているそうです。こうした事業も進めたいと考えています。そして、すでに取り組んでいる「直売」の可能性などももっと広げていきたいとも語っていました。

■ 漁師という職業の可能性を広げる

このように観光や畜養など新しい事業に挑戦しているため、この会社は若い方が多いようです。高齢化が進む漁師の世界の中で、比較的若い世代が多いと言われる定置網漁ですが、この会社では今年も大卒の内定者がいます。朝5時から船が出るので、始業は早いですが、お昼前には終業となるので午後は趣味の活動に充てられます。バイクを楽しんでいる方、空手の団体の県の代表をしている方など、プライベートも充実されていました。9時~5時の会社勤めとはまた違ったライフスタイルを作り上げていると感じました。

■ 漁業を成長産業に

社長は全国の定置網の団体の役員もされているため、漁業法改正の一つの大きな柱である「資源管理(魚の獲り過ぎを防ぐため、年間の魚の獲る量を決めて実行する)」にも大変協力的です。クロマグロでは国際的な流れにより、一足早くこの体制が実施され、ここ何年かは明らかに魚体が大きくなり、数が増えました。つまり、その効果が出ているということです。今年から日本が獲っていいクロマグロの量が増えたことがその証左です。これは漁師の皆さんはじめ、関係者間の信頼感が醸成されないとなしえないことです。世界において、水産業は成長産業です。日本でも補助金に頼るのではなく、大いに魅力的な産業になるよう、私たちの立場でできることはしっかりと進めていきたいと思います。

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