お前らのことをちょっとだけ許す気になったよ-14歳の栞 感想文-
『14歳の栞』という映画を観ました。
-映画『14歳の栞』公式サイト-
https://14-shiori.com/
実在するとある中学校の2年6組。
クラスメイトは35人。その一人ひとりに密着したドキュメンタリー作品。
日常を切り取りながらも表には出さない彼らのリアルと、大人になる途中段階の彼らだからこそ感じて、考えていることが描かれていて、
大人になってしまった今だからこそ、彼らを通して自分を見つめなおすことができる映画だった。
「あの頃、一度も話さなかったあの人は、
何を考えていたんだろう。」
そんなキャッチコピーが冠された今作だからこそ、自分だけの人生では触れてこなかった"あいつら"について新たな発見と、思いの芽生えが感じられた。
「追いすぎない」ドキュメンタリー
映画は35人それぞれにフォーカスを当てつつ、彼らのクラスが日常を過ごしていく様を脚色せずに切り取っていく。
「楽しく過ごすためには」を考えて明るくふるまうことを考えている生徒
もっと明るい性格になりたいけど、と思いつつも自分を変えられない生徒
昔から仲のいい友達はいるけれど、過去に傷ついてしまったことにより今の交友関係を手放したくなってしまった生徒
自分の劣っているところに目を向けて、自分自身を変えるために考え、行動している生徒
自分を出したことなど一度もないと言う生徒
一人一人に物語があり、それぞれの口から語られるリアルは、映画を観ている我々がかつて気づけなかったことに触れるきっかけとなったり、鏡のように自分自身の"あの頃"を投影しているかのように思えた。
一番共感した生徒
最も僕が共感したのはPCを触ることが好きで、クラスの中心にはいない生徒。
「運動部の子たちって強いよね、ムカついたりしない?」
そんな質問にも、ゴミはゴミ同士で絡んでいればいんですよ、気にしたら負けです。なんて一蹴していた。
彼はPCでGPSの機能を使いながら海抜などの情報を入力して様々なデータを取っていた。そんな彼の夢は宇宙に行くこと。
宇宙に魅力を感じ、自分の"好き"に向かっていく熱量を感じさせる少年だった。
14歳、僕の記憶に挟み込んでいた栞は、とにかく学校が嫌いで、無益な時間に思えていて、人を信用できないという記憶だった。
ゴミはゴミ同士で絡んでればいいだろ。は実際に当時思っていた。
言葉ではそう言いつつも、苦しさは感じていたけれど、怒りの感情を持ちつつ、好きなお笑いにとにかく救われながら生きていたことを思い出した。
そういえば当時の将来の夢はお笑い芸人だった。
いつのまにか手放すことに決めた夢だけど。
あの頃ほとんど全員敵だと思っていて、みんなのことが嫌いだった自分を改めて見させられたような気がして、少し恥ずかしかったし、他者として描かれたことによって、恥部としていた自分を少しかわいがれるような気がした。
当時触れてこなかったタイプの生徒の気持ちも感じられる
他の生徒を「いじる」生徒。
彼は「いじる」ということを、他人との距離の詰め方として使っていた。
みんなで楽しく過ごすために、という思いで「いじり」をやっていた。
僕は当時苦手としていたタイプだったし、嫌な思いもしていたけれど、彼らの考えていることなんて意識することも一切なかった。
映画に映る生徒を通して、改めて思いなおした。
当時の"あいつら"も悪じゃなかったのかもしれない。
「追いすぎない」ドキュメンタリー
子供を『子供』として切り取るようなドキュメンタリーではなく、子供を『人間』として切り取っているところに好感が持てたし、だからこそ無理やり作り上げられたドラマはなかった。
彼らの本当に言いたくないことは無理に取り上げていなかったし、打ち明けられるだけの気持ちをそのままに映し出していた。
観る人によってさまざまな感情を抱くと思う。
少なくとも僕は彼ら35人のことを尊重したいと思えたし、共感できたことや、自分はこうじゃなかったと思うこともあった。全部ひっくるめて体温が高くなる映画だったし、5年後、10年後、出演していた彼らがこの映画を改めて観てどう思うかが気になった。
映画を鑑賞して思うことは人それぞれなので、受けつけないこともあるかもしれない。
ただ、彼らは生きていて、人生を必死に歩んでいる。
それを僕らは非難することは決してできないし、彼らを彼らとして純粋に受け取ることがこの映画の一番の楽しみ方なのではないかと思った。
彼らを通して見た自分を感じられて、あの頃ほとんど全員嫌いでムカついてたあいつらのことをちょっとだけ許そうと思ったよ。
お前らも考えてたことがあったんだろうな。
記憶の中に挟み込んでいた栞の、その読み込みきったはずのページの解釈を確かめなおせた映画だった。
ペン回しを練習しているシーンはクスリときてしまったな。
冷蔵庫は大きいほうがいいでしょう