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Googleが創る、ニュースの未来(Google News リニューアルにあたって)

こんにちは、のっちです。先日、Googleが毎年行なっている開発者向け会議のGoogle I/Oが行われました。AI関連の話が多く、デザイン面ではMaterial Designのアップデートがメイントピックであったかと思います。

僕は中でもニュースサービスに関心があり、今回新しく発表されたGoogle Newsについてチェックしました。
今回のnoteでは、発表されたGoogle Newsの中心機能と、そこから思う「Googleが考えるニュースの未来」について、感じたことをまとめたいと思います。

Googleとニュースのこれまで

Googleのニュースサービスは大きく分けてふたつ存在しました。「Google News(日本版では「Google ニュースと天気」)」と「Google Play ニューススタンド」です。
Google ニュースと天気 は色々なカテゴリごとにニュースを見ることができる、いわば総合ニュースサイトです。
一方、Google Play ニューススタンド は、お気に入りのニュースソースを購読することができる、ニュースのマガジンラックのようなサービスです。

両サービスともPC、アプリ共に使用することができ、自分用にカスタマイズされた記事をある程度読むことができるし、あまり見た目も変わりませんでした。そのため「両者の区分けはどうなっているんだ?」「あまり力を入れていないのか?」と思われていたのですが、今回の発表はこの両者を統合するような形となることが想像されており、Googleがニュースに再び力を入れ始めた印象を受けます。

Google Newsのプレゼンにあたり、ひとつめに話されたのは、AIについてでした。

もう「興味あるか」も聞かないし伝えない

ひとつめに発表されたことはAIによって「あなたが関心あることだけを表示しますよ」という話でした。トップであなたに読んで欲しい5記事が表示され、その下にはユーザーにカスタマイズされた情報が届きます。

一般的なニュースアプリとそこまで変わらない印象を受けますが、重要なのは「より考えさせない」仕組みに近づいたということだと思います。
例として、ベイエリアに住んでいる自転車好きのユーザーに『ベイブリッジを自転車で渡るためにかかる時間』のニュースを届けるというものが出ていましたが、このニュースを得るためにユーザーは何もする必要がありません。

UIを見てみると、これまでGoogle Play ニューススタンド では、「その記事がおすすめである理由」を表示したり、「この記事は出さないで欲しい」ボタンを置いていたりで、UIが煩雑な印象がありました。
しかし新しいGoogle Newsでは、「どうして表示したのか」も伝えないし、「興味がある/ない」を聞くボタンもないUIのよう。AIに「教えよう」と全く考えることなく適切な記事を届けることができるレコメンドエンジンに、相当な自信を持っている証拠なのではないかと思います。

Newscastで気になるトピックの概要がわかる

Google Newsには新しくNewscastという機能が搭載されます。これは、気になるトピック(例として出ていたのはスターウォーズ)に対して現在報道されているニュースをまとめて動画形式で表示する機能です。

一見するとインスタのストーリーやカルーセル表示のような印象ですが、ひとつのトピックに対して時系列でニュースを表示し、異なる見方を伝えるということが大きな違いです。これによって、トピックに関して何が起きているのかの全体像をすぐに把握することができます。

Full Coverageという「全く新しいニュース体験」

また、Newscastの下部には「View full coverage」というボタンがあります。これを選択すると、そのトピックに関するニュースの概要、これまで発生したビッグニュース、それに対する様々な意見や動画など、トピックの全てをひとつの場所で見ることができます。
これはリアルタイムに世界中のニュースを把握し、瞬時にトピックに関するストーリーを作成することができるシステムをベースにした、新Google Newsの大きな特徴です。

これによって、ユーザーはニュースの全体像を見ることができ、「全く新しいニュース体験」をすることができる、とのことでした。

フェイクニュースが横行する中で「正しい情報とは何か」

ここ数年、ニュース業界はフェイクニュースの話題で揺れています。イギリスでのEU離脱をめぐる国民投票やアメリカ大統領選は非常に僅差での結果となりましたが、フェイクニュースが力を発揮してしまった悪しき事例と言われました。

現在も「このニュースってどんな話から来てるんだっけ」「それでどっちが悪いんだっけ」のように検索すると、嘘か本当かわからないような記事にぶつかり、説得力がある書きぶりをしているとそれを信じてしまいます。

そんな中、登場したfull coverage機能。僕はGoogleが「過去も含めて正しい情報を平等に届けたい」という強い想いから生まれた機能なのではないかと思いました。ピチャイCEOがGoogle Newsの紹介の中で「我々はニュースに対してとてつもなく大きな責任を負っている」「信頼できる情報を届けなければならない」と話していたことからも、その真意が伺えます。

Googleは独自でニュースを作ることは行なっていませんが、世界の大半がGoogleのサービスを利用しているという圧倒的な「信頼」があります。
もしGoogle以外が「世界中の意見をフラットに捉えて伝えます」と言って同等の機能を作ったとしても、信頼を勝ち取るのは難しいはず。
世界中から信頼を集めるGoogleだからこそ、「この場所は世界中のニュースを全て把握し、嘘のない情報をキュレーションしています。だから安心して情報に触れてください」という、今のニュースに必要なメッセージを届けようとしているのだと思いました。

これを裏付けるように、full coverage機能は、すべての情報や意見を平等に扱い、見る人によって内容が変わることはないというルールを持っています。どんなユーザーでも、ねじ曲げられることないフラットな情報に触れることができる、ということです(会場は拍手)。
こういう点からも、「正しい情報を全員に平等に届けたい」「フラットな情報収集を実現したい」というGoogleの想いを感じることができます。

ニューススタンドとの融合

最後に発表されたのは、ニュースメディアを購読できる機能についてです。今までのGoogle Newsstand での購読が、UIの変更でより便利になる上、購読したニュースをすべてのブラウザや端末で同じように楽しむことができ、さらなる利便性を感じることができます。

ジャーナリズムの質を保ち続けるために

僕がニュースの定期購読で気になっていたのは、Googleは定額で複数雑誌読み放題の『サブスクリプション』モデルを目指すのか、ということでした。

Googleと色々なサービスで競合となっているAppleは、『News』というiOS端末にデフォルトで入っているニュースアプリを持っています。(日本では利用できません)

その News ですが、Appleが定額読み放題のサービスを導入する可能性が報道されています。アップル、定額制のニュース購読サービスを計画中
サブスクリプション型はApple Musicをはじめとしたビジネスの成功例のひとつですが、一方でクリエイターの利益が搾取され、音楽業界の構造破壊を招いています。

ユーザーからの課金で成り立っているビジネスにおいて、このモデルが一般化するかどうかは、まさに業界の命運を握っているといえます。GoogleもApple同様にサブスクリプションサービスを開始するのか?
これに対しGoogleはそのようなサービスは発表しませんでした。そしてその上で、
「我々の最終的なゴールは、ユーザーがニュースを楽しみ、サポートすることを助け、ジャーナリズムの質を保ち続けることだ」
と話しました。
ジャーナリズムへの利益を保ち、その質を担保し続ける。僕にはこの発言が、サブスクリプション型のサービスがジャーナリズムの質を下げてしまうことへの警鐘であると思いました。

これからGoogleがサブスクリプションモデルのニュースサービスをするかどうかは不透明ですが、いずれにしても、ジャーナリズムの利益を搾取することのないビジネスモデルを実行していくでしょう。

ニュースと他サービスの密な連携が差別化の第一手

そんなGoogleですが、Apple MusicのようなプラットフォームをNewsでも作られると大きな脅威と言わざるを得ません。そのため、より早期にGoogleが持つ強みを見せておき、できる限り先手を取っておく必要があります。

Googleの強みをニューススタンドのサービスでも活かす。Googleは世界で最も多くの人が使用しているブラウザやマップ、メールクライアントを持っています。そのサービスとニュースとの融合は、世界でほぼGoogleにしかできないと言えるでしょう。
プレゼンテーションの中で具体的に話していたのは、トピックを検索した時に、それに付随する話題を、購読しているニュースソースから探して表示してくれるという機能。これにより、ユーザーの検索効率はより向上し、どこからでも購読したニュースにアプローチすることができます。

先日あったGmailのリニューアルでも、Gmailと他サービスの連携が強くなりました。これまでのGoogle Newsは、ほかのGoogleサービスとの連携が強くはありませんでしたが、これからより緊密になっていくことが予想されます。それによってユーザーに想像以上のメリットが与えられれば、競合との大きな差別化になるでしょう。

まとめ:Googleにしかできない方法でニュースの未来を創る

今回は、Google Newsのリニューアルについて、新機能とそこから考える「Googleが考えるニュースの未来」について、自分なりに感じたことをまとめました。

大きく発表された3つの機能は、確かにユーザーにとって新しいものばかりです。しかしただ新しいだけでなく、
「より自然な形でユーザーに最適な情報を届ける」
「信頼できる情報を平等に届ける」
「ジャーナリズムの質を保ち続ける」
という、Googleの強い想いを背景に持った機能でした。
Googleにしかできない独自の強みを使いながら、「あるべきジャーナリズムの姿とは何か」「そのためにどうすれば良いのか」を考え、それに対するGoogleの現時点での答えが、新しいGoogle Newsに入っています。

ピチャイCEOの「我々はニュースに対するとてつもなく大きな責任を負っている」という言葉がとても印象的だった今回のGoogle Newsリニューアル。おそらく最初の風当たりは厳しそうな気がしますが、これからもニュースの理想像を追い求めて欲しいなと思います。

ツイッターを見ていると、おそらく今週中には日本でもリニューアルされると思うので、また触った所感など書ければと思います。

それでは、またよろしくお願いします。

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