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171. シリウスの伝説 【アニメ映画】

ずっと観たかったサンリオ映画、ようやく1作観られました〜。

ファンシーキャラクターのイメージが強いサンリオですが、長編映画も多く手掛けていて、特に70〜80年代は「日本版ディズニー」と言えるようなファンタジーアニメーションを幾つか作っています。
今回ご紹介する「シリウスの伝説」の他にも「星のオルフェウス」「妖精フローレンス」、手塚治虫原作の「ユニコ」など。

※以下ネタバレあります!


この「シリウスの伝説」は、火の妖精マルタと水の王子シリウスの悲恋を描いた伝説ものファンタジーです。
サンリオの創業者の方が書いた児童文学が原作だとか。

プロットは「ロミオとジュリエット」を下敷きにしています。家が仲違いしているせいで恋人関係になることを許されない上、悲恋の末ふたりとも死んでしまう。
でもその悲劇を受けてお家の断交状態が解消されるというエンドです。

ただ、物語の主人公が妖精世界の火と水の次期トップであること、
途中で解決法として「その恋が許される別の星へ行くこと」というSFチックなカギが示されることが、話に壮大さをもたらしています。

別の星への行き方の説明が口頭だけで済まされ、最後の方は駆け足になっていてもったいなかったり、マルタが出会い頭からシリウスに対してあまりにぞっこんで積極的だったりと、引っかかるところがないわけではないですが、それはおいておいて展開されるめくるめくファンタジーに魅了されます。

ぼんやり観ているだけでも、妖精世界の様々な生き物たちの描写が細やかで、ユーモアもあって楽しい。
キャラクターの表情が豊かで、特にシリウスが知らない世界へ出会った時のワクワクしている姿を見て、一気にこれからの展開を早く知りたい! という気持ちになりました。
あと、火の妖精マルタが青く、水の妖精シリウスが赤く描かれているから画面に映えていて綺麗。

それできちんと背筋を伸ばして観ると、主人公ふたりの何があっても愛を貫く姿勢の美しさが胸に沁みます。また、マルタやシリウスを慕う子供たちの愛ゆえの自己犠牲には思わず涙がこぼれます。
コーラスグループ・サーカスの主題歌を始め、サウンドトラックもファンタジーによく合う音が使われていて、幻想的な曲調にうっとりします。

アニメーションとしてのビジュアルは、どことなくディズニーっぽいです。
顔の作りや動きが派手で分かりやすく、目はぱっちり・瞼にがっつりアイシャドウが入っているところとか。(あまりディズニー映画を観たことがないのできちんと比較はできないのですが。アニメ制作の手法もディズニーを参考にした点が多々あるそうです。)
でも色味は繊細だし、顔の彫りが浅いところなんかに日本のアニメらしさを感じます。

それから動きが滑らかで切れ間がないな〜と思ったら、24コマ/秒の”フルアニメーション”という手法による効果だそうです。
つまり止め絵を使わず、常に動き続けることで自然な動きを表現しているわけです。相当手が掛かっている。
この手法は何より、人間のようでありながら手足に関節がないようなシリウスの動きの演出に活かされています。

個人的なおすすめポイントは”マルタのしっぽが可愛い”こと。
気になったのは途中でちょっとだけ出てくるガチャピンとムックのムックみたいなキャラ。
心に残ったセリフはマルタの「火と水が一緒になると、なんて美しいのかしら」
これは元々は火と水が一緒にあって絶えない水蒸気の世界だったことの伏線としての言葉なのですが、水面で揺れている篝火はそれ自体確かに美しい。
うっかりしたらそのまま地球の成り立ちにまで意識を飛ばしてしまいそうな、含みをもたせた表現で印象的でした。

いやはや、上質なファンタジーに触れられて大満足なひと時でした。

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