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183. バレエ映画2本立て 【映画】

9月にバレエ映画を立て続けに観ました。
バレエって少女漫画でもしばしばモチーフになっていますし、特にクラシカルバレエは絵として美しいし、憧れの芸術。テレビや映画では何度か見たけれど、まだ本物の舞台は観にいったことがないんですよね。
逆に美しいシーンだけを切り取って編集したものばかり見ているので、本物は音やメイクが気になって案外集中できないかも……なんて不安もありつつ。今回観た2作品も映像作品として完成度が高く、大変楽しめました。


・マシュー・ボーン IN CINEMA 眠れる森の美女
古典バレエを新しい解釈で再構成した作品を振付・演出しているマシュー・ボーンによるバレエ映画。実際のバレエを幾つかのアングルで撮影したものを組み合わせて一本にまとめたもの。

新解釈のため、いわゆる「眠れる森の美女」とは異なる設定・ストーリーとなっています。
特に印象的だったのは、お姫様は王子様ではなくて好きな人のキスで目覚める魔法にかかっていたこと。お伽話の”王子様を待つお姫様”から、現代版にアップデートされていて、時代に沿った翻案だと感じました。
しかも、それを実現するためにお姫様の恋人である森番の青年が、妖精の力を借りてヴァンパイアになるのです。物語に破綻を起こさせない上、妖精がただの”いい妖精”ではなくて妖しげな魅力のある魔物的存在として描かれているのもアイロニカルです。
そもそも魔法をかけられてしまうのも、恩義を忘れた国王・王妃側にあるという設定になっており、昔話にありがちなご都合主義を廃した上での再構築を目指したのかなと思います。

バレエは言葉のない身体芸術ですが、細かな違いから大きな違いまで、場面ごとに表示される短い説明と表情・身振り手振りでストーリー展開や感情を分かりやすく伝えてくれたのも良かったです。全身を使った表現は本当に表情豊かで思いが迸るようでした。
舞台を観るときはオペラグラスが必要でしょうが、映画ならアップで観られるのは嬉しいですね。

衣装も美しく、どこを切り取っても輝かしい映像美にうっとり。前半のクラシカルな要素を多く残したバレエも、後半の肉体的な(モダンダンスなのかコンテンポラリーダンスなのかは分からない)踊りもエレガンスでしたし、特に妖精の長のような役の方が気品があって惚れ惚れとするお姿でした。
パンフレットにアップの写真載ってるかなと思ったけどなかった。残念。
(というか最近全然ときめいてない気がしてたけど、ちゃんとときめいてました、よかった! 黒髪ロングの美形な男性好きよ!(笑))

「眠れる森の美女」のあらすじは知っている、というくらいのわたしにも新鮮な作品でしたが、クラシックバレエに親しんでいる人からすると、構成や音楽に「あっ、これがない!」「あれがこんな風に」とさらに驚きいっぱいの舞台らしいです。
この記事を書きながら古典バレエのオーロラ姫のローズアダージオ(王子たちの求婚シーン)を観ました。技術の高さと振付の優雅さに目を見張り、確かにマシュー・ボーン版にはこういう甘やかなロマンチックさはあまり感じなかったかもしれないと思い返しました。
これまで音も動きもないまま漫画からの想像のバレエで楽しんでいた世界が、三次元でこうも鮮やかに演じられていたとは……当たり前ですが二次元より三次元の方が情報が多いので、やっぱり生の舞台も観なくては、と痛感しました。

そうして新解釈を100%堪能するためには古典の習得が必須だろうと。
来年にはマシュー・ボーンの男女逆転バージョンのロミオとジュリエットが上映されるとのことなので、その前にどうにか生バレエのロミジュリを観に行きたいものです。


・ダンサーin paris
さてもう一本はフランスはパリ・オペラ座が舞台。実際のダンサーが演じる成長物語です。
舞台本番のシーンから始まりますし、ダンスシーンは多いですが、この作品で主軸が置かれているのは主人公・エリーズの葛藤と成長。
怪我をしてクラシックバレエが踊れなくなり、将来への不安に揺れ、父親の愛情にも疑問を感じている……そんな悩めるエリーゼがコンテンポラリーダンスに出会い、恋をし、多くの人や言葉に励まされ、前へ進み始めます。

父娘の上手く伝わらない愛情、怪我による人生設計の狂い、失恋、新しい恋、友情、フェミニズムと盛り沢山だけれど、しっかりまとめ上げています。
またストーリーに派手さはなくても、生命力溢れるダンスが飽きさせることなく惹きつけます。
まっすぐな人生賛歌で、最後にはぼろぼろ泣いてしまいました。

何より魅力的なのはエキゾチックで官能的なコンテンポラリーダンスのシーン。
踊っているエリーゼ役のマリオン・バルボーは実際にパリオペラ座で活躍するダンサーで、クラシックもコンテンポラリーも現実世界でも両方踊っているのだとか。
コンテンポラリーダンスのダンサー集団を率いるホフェッシュ・シェクターも、本人が本人役で出演。
この作り物であって作り物でない仕掛けが、生のパフォーマンスを観ているような高揚感をもたらすのか、映画を観ながら強烈に踊りたい! 体を動かしたい! という欲求に駆られました。
(その後ダンススクールなどちらっと探したのですが、結局まだ何もしていないことを今思い出しました……)

劇中でエリーゼが「古典バレエのヒロインは悲劇のヒロインしかいない(おてんば娘以外)」みたいなことを言っていて、そうなのかな? と考えています。悲劇の方が人の心を掴みやすいという理由もあるでしょうが、そんなに悲しい話ばかりだったかしらん……バレエの演目も近々調べてみようと思っています。


毛色の違う2作でしたが、バレエやダンスなどの身体表現を観るのが好き、そして観ていると自分の動きたくなるんだなあとしみじみ感じる鑑賞となりました。
これからもっとバレエを自分に近しいものにしていきたいと思っています。
お勧めの公演や鑑賞に際するポイントなどありましたらぜひ教えてください。
ではでは。

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