見出し画像

トゥースが伝えたいもの@デンマーク 【Posing】

「トゥース!」というと、アメリカンフットボールのハドル(円陣)を組む際に集合を掛ける合図。

さてアメリカンフットボールの最高峰といえばスーパーボウルゲームです。第58回スーパーボウルは2024年2月11日にアメリカのラスベガスで開催されます。2024年のカードはカンサスシティチーフスとサンフランシスコ49ersです。

さてこのポーズといえば、
「トゥース! ハッ!」
とオードリー春日のようになるわけですが、今日はアメフトやお笑いとは違う話。

町にトゥースが溢れているのに気づいたので集めてみました。
実はこちらは年末にかけて設置されていたもの。
(今回はオーフス市が中心。)


トゥース! ハッ!


まさにトゥース。

トゥース! ハッ!
トゥース! ハッ!

結構、数があります。

実際は、1月1日にテレビで放送する予定の「子どもたちの新年のスピーチ」の広告モニュメント。


実際伝えたいこと。
メッセージの正面はこの方向でしょう。

これは子供の指です。

子供が指を天に向けて挙げています。
デンマークでは会議などでなにか発言したい際には手を挙げるのではなく指を挙げて注意を集めることが多いです。
日本ではあまり見ない光景。
「意見があります」という意思表示です。
とはいえ、そんな作業は無視してどんどん話す人もいらっしゃいますが。

さて、子供たちが指を上げているのは、その指を挙げた誰かが、何か言いたいことがあるから。

「Børnenes Nytårstale」
子供たちの新年の挨拶。
子供たちが壇上に立ち、デンマークの人々に向けて自分の意見を言う場と言うものがTVであります。
これはそのモニュメント。デンマークのいろんな地域に設置されています。

この企画で取り上げたい問題は、「現在の社会の決定に子供や若者は関われていない」というところに問題意識があるようです。
だから、公共の場での会話における子どもの声をもっと力強くしようという思いが込められています。

子どもや若者は、大人であり意思決定者からの相談をほとんど受けていません。そのため自分たちに影響を与える決定が下されるときにその決定に関与していないということになります。
デンマークでは、ある調査では子どもや若者のわずか7%が、自治体で自分たちに影響を与える決定が下されたときに、大人が耳を傾けてくれること経験しているそうです。と言うことは、のこりの93%は耳を傾けないあるいはそれ以外の理由となると思います。
実際の全数や調査方法がわからないため正確さは分かりませんが、なんとなく子供自身の意見を聞いてそれを政治決定に反映させるというのは少ないことかと感じます。
そのため子どもの新年の挨拶は、権利に基づく子どもの関与を通じて、子どもの声を確保することを目的としているようです。
主張は実際の映像をご覧ください。

こちら。
Børnenes nytårstale | Se afsnittet her | TV 2 Play

この取り組みはTV2やユニセフデンマークなどの企業が企画したもので子どもや若者の声を、大人が決める場に直接届け、1月1日に発言する時間を与えるものです。
今年からの取り組みとしては、TVやWebで見ることができるようにしているようです。

デンマーク女王であるマルグリーテ二世女王が大みそかに行う新年の挨拶は記憶に新しいところですが、そこからの発想のようです。
2023年12月31日の本当に最後の新年のあいさつは下記よりご覧ください。


これを見てさらに多くの子どもたちが自分の考えを話すようになり、大人が実際に耳を傾ける必要があることに気づくようになればいいですね。
もちろんその中には「自分の意見が受け入れられないこともある」も含まれると思います。
自分の主張だけではなく、行動も伴わなければ、そして共感しともに動いてくれる人がいなければ達成できないこともあることも知るでしょう。
もっと大きな力やうねりが無ければ動かないこともある。
できないことを知り、できることを増やしていく、できないことをできるようにすることを考えるという機会につながっていくものと思います。

じゃあ私は今何をするか。
多分そうやって考えていくことが未来につながっていくのでしょう。

この「子どもたちの新年のスピーチ」をどれだけの人が見ているか分かりませんが、考えること、自分ならこう思うこう動くという発想を持つことが教育としては重要だと思います。
やりかた、動き方を指示してしまうと、それを自分で考えることはしなくなってしまうし、そもそも指示したやりかたや動き方が間違っているかもしれない。
もっといい方法があるかもしれないし、全く違うやりかた、動き方のプロセスで対応することができるかもしれない。
それは自分で考えなければ辿りつかないことだと思うし、繰り返し経験することで自分の身に入っていくのではないかと今になって感じる。
仏に魂を入れる。そんな感じ。
判断はまかせるということが含まれているのでしょう。
もしかすると、誰かのためになんて思わなくていいので、自分の利益のために自分の判断で動くこと、それが自分の周りやひいては国のためになるのかもしれませんね。

自分の手でつかんだもの以外本当の意味で身にはならない。
挑戦して、失敗して、修正して、失敗して、そういう繰り返しが成長につながり、成功に至る。
失敗するチャンスを与えられるのが我々大人の役目だと思う。

このスピーチは失敗は無いのでしょうが、それでも感じること、考えることはあるだろうし、それも言葉にして伝えてくれるスピーチとなっている。

台本があるわけではない。その時その時考えることを言葉にして伝えていくのが会話である。

そういった経験のサイクルを回す仕組みの一つをここから見た気がしました。

それでは今日も良い一日を。


この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?