読書感想 22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる


今を時めく成田悠輔による「新しい民主主義の提案」。本人のイメージ(よく知らないんだけど)や装填から「やっつけで書いちゃった内容の薄いやや扇動的な本」なのかなあ、という漠然としてイメージで読み始めましたが、読んでよかったです。

「民主主義」は絶対正義というわけではなくって、代替可能な政治形態の一形態に過ぎない、というのは、僕が大学生のころ(40年近く前)、戦後リベラル教育の呪縛をようやく抜け出し始めた、一部の今でいう「意識高い系」の人たち(?)の間で盛んに議論されるようになったトピックスだと思うのですが、昨今はかなり一般的にもその意識が広まり、このような本が、20万部とか売れるようになったのは、隔世の感がありますね。

とはいえ、「それでは民主主義に変わる政治制度はどんなものがあるのか。民主主義をアップデートするにはどのような考え方があるのか」というような議論が一般的に深まっているわけでもありません。本書を読み終わって「やや急ぎ気味に書かれたやや内容の薄い本」という印象は変わりませんでしたが、内容的には「今まで知らなかった民主主義の変革の試み」を知ることが出来、「民主主義の進化の具体的な可能性」をイメージすることができました。これは僕にはとても良かったと思うし、多くの人が読めばいいなあ、と思いました。
「多くの人に読ませる」目的で書いた「やや軽薄な文章」も、十分にその目的を達成していると思われます。

あくまで「民主主義の進化系」の話にとどまり、「果たして民主主義が最も好ましいのか」「それに代わる制度はどんなものがあるのか」ということには、(たぶん意図的に)全く触れられていないのがやや残念ではあります。

しかし、「本当にこういう方向に進化していきそうな気がするなあ」と思わせられるほど、説得力を持って「民主主義の未来」が提示されていると思います。

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