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ヒヤシンス

ヒヤシンス薄紫に咲きにけり
はじめて心顫(ふる)ひそめし日
北原白秋

片恋の わが世さみしくヒヤシンス
うすむらさきににほひそめけり
芥川龍之介

白秋の歌は、初めて恋に落ちた日に、ヒヤシンスが咲いた、という歌。

芥川の歌は、片思いの切なさが、まるで薄紫色した香りになって漂っているようにも感じられます。

このように、ヒヤシンスの薄紫色というのは、言い表しがたい悲しみや、切ない気持ちをあらわす色、のようです。

紫の ヒヤシンス泣く くれなゐの
ヒヤシンス泣く 二人並びて
与謝野晶子

生活に密着していた花の記憶は、驚くくらい鮮明。その花に寄るだけで思い出す情景があるし、浮かぶ顔があるし、聴こえる声がある。そんなことを思い出させたのが、晶子の歌。

つんと鼻の奥をつつくヒヤシンスの匂い。あれが晶子には、哀切な声にもなって漂い、聞こえたのかもしれません。

季節には、どの季節にも懐かしむ花があり、匂いがあります。忘れていても、忘れたくても、仕舞いこんでいても、また会いたい、と思わせる花と匂い。

ヒヤシンスもそう。この花も、空気がほどけると同時に、記憶をつれてくる花。会いたくなる匂い。会いたいですね。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ヒヤシンス 花言葉「哀しみを超えた愛」

ひんやりヒヤシンス

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