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20円の卵より50円の卵を選びたいのは、美味しさの差ではない

最寄りのスーパーでは、卵が10個200円ぐらいで売られている。たぶん、ごく平均的な値段だと思う。

ちょっと遠く(といっても歩いて10分)のスーパーでは、6個300円ぐらいの卵が並んでいる。

卵1個あたりの値段は、20円と50円。どう考えても50円卵のほうがお得だ。安いし、数は多いし、近いし。

でも、なるべくちょっとだけ遠くのスーパーで50円卵を買うようにしている。そんなに50円卵が美味しいのかというと、わからない。残念ながら繊細な舌をもたない私には、美味しさの差はわからない。

じゃあ、なんで50円卵のほうを選ぶのかといえば、「卵が私たちの手元に届くまで」に目を向けるようになったから。

きっかけは、この本(↓)で、武術研究家の甲野善紀先生にお話をうかがったこと。

20円卵と50円卵の本当の違い

卵をうんでくれるニワトリは、日本では9割以上がケージ飼いされている。1羽あたりのスペースは狭く、羽ばたきも地面をつつきながら歩くこともできず、ただ卵を産む機械のように飼育されている。そうやって飼育されているニワトリが産んでくれるのが、20円卵。

つまり、効率重視で育てられているから、卵も安く提供できる。

一方、50円卵のニワトリは、「平飼い」されている。鶏舎内を自由に歩き回り、羽ばたき・羽繕いもし放題、地面もつつき放題だ(にわとりは地面をつつくのが大好きらしい)。

当然、ニワトリにとって自然な暮らし方に近いのは平飼いのほう。家畜も含めた動物たちが生まれて死ぬまでなるべく自然な形で生きられるように、幸せでいられるようにしようという考え方を「アニマルウェルフェア」といって、海外では採卵鶏のケージ飼いは廃止される方向に向かっているそう。

甲野善紀先生が教えてくれたこと

でも日本ではいまだに9割以上のニワトリが狭いケージに閉じ込められて一生を終える。

取材のなかで甲野先生は、日本で「卵が物価の優等生」といわれる背景にはそういう現実があるんですよ、と教えてくれた。そもそも甲野先生が武術の道に足を踏み入れた背景には、じつは食や畜産にまつわる体験がある。

私一人が一般に売られているケージ飼いの卵ではなく、平飼いの卵をなるべく買うようにしたところで(しかも「必ず」ではなく「なるべく」だし)、世の中はなんにも変わらない。旦那にも「意味あるの?」とも言われた。

でも、自分が許容できる価格なら「こうあってほしい」ほうを選びたい。そういう一人ひとりの行動がきっと世の中をつくっているんだと思うから(というようなことを旦那にも説明したら、たぶんわかってもらえた)。


最後に、アニマルウェルフェアについては、枝廣淳子さんの『アニマルウェルフェアとは何か』(岩波ブックレット)、おすすめです。知りたいことがコンパクトにまとめてあって、私もこれを読んでほんの少し勉強しました。


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