見出し画像

私の宝物箱 その①

なぜ、いちばん最初に彼に出会ってしまったんだろう。


もしあのまま、彼と歩む人生を選んでいたとしたら、今頃私はどこにいて、なにを思っているのかな。


高校の同級生だった彼とは、卒業後に急接近して、あっという間に付き合うことになった。

私は彼のことを、寡黙でクールな人だと思っていて、
彼は私のことを、無愛想で怖い人だと思っていたから、

在学中はまともに話した記憶がなく、
覚えているエピソードといえば、卒業式。

出席番号が前後だった私達は隣の席で、
卒業や友達との別れを惜しんで泣くのではなく、
近くでふざけていたクラスメイトの様子を見て堪えきれず、卒業式の間じゅう、終始笑っていた。

話してみたくて、メールしました。

私の親友からメールアドレスを聞いたといって、彼からこんなメールが届いたのが、卒業してから1か月ほど経った頃。

マンガやドラマの世界と思っていた、甘酸っぱいまさに胸躍るような恋の始まりが、私にも訪れた。

桜木町の花火大会、

夜景の美しい湘南平、

宮ヶ瀬のクリスマスツリー、

都会で見る蛍の群れ、

湘南、鎌倉、134号線、

夜中のドライブデート、

手を繋いで歩くまでに、3か月。

kissするまでに、5か月。

ようやくひとつになれたのは、
付き合い始めて、約1年が過ぎた頃だった。

おたくレベルの車好きも、
意外とお調子者な高い声も、
伸びると爆発してしまう、多くてクセのある髪も、
そして何より、私を安心させる彼の匂いも。

彼を作り上げているものすべて、本当に愛していた。

街中でふと香るのは気のせいのはずなのに、
近くにいるのかと、彼を探したりもした。


匂いは記憶を呼び起こす。


本当にキラキラとしていた私達の日々は、
6年が経とうとしていた5月のある日、
終わった。

これほどまでに愛し愛される人との出会いが、いちばん最初であったことは、私にとって幸せであったけれども、しかしその幸せを充分に感じるには早過ぎた。

まだ若い、そして夢への志も半ばであった私は、外の世界を見てみたくなった。

いや、外の世界を見なくてはいけないのではないかと自らを追い込み、

この人に甘えていてはいけない、と、
そう思い込んで別れを告げたのだ。

その身勝手さが、どれほど彼を傷つけたのだろう。

この罪は時が経つにつれ重くなり、後悔の念という形で私にのしかかってきた。

別れて初めて、
どれほど彼の愛情が深かったのか気づく。

彼以外を知って初めて、
これほどまでに相性の良い相手に巡り合うことが、いかに奇跡的だったのか身に染みる。

なぜ、いちばん最初が彼だったのだろう。
なぜ、酸いも甘いも味わい尽くした後に、彼と出会う順番にならなかったのだろう。

彼と過ごした日々は美化され、

新しい男を知るたびに、
手放した彼への想いは強くなっていった。


神様、
彼を傷つけた罪を、私はまだ償いきれないのでしょうか。

縁があるなら、また巡り合う。

別れの時、
自らの選択を正当化しようとした根拠のない運命論が、
私を縛り続けた。

数年が経ち、

同級生だった彼の近況は、風に乗って私の耳にも届いた。

彼の幸せを聞き、これでもう、あの運命論は消滅したという悲しみと同時に、
私もそろそろ自由にならなくてはと、

青春の美しい思い出になんて出来ないと、過去にとらわれ続けていた、
私の独りよがりな罪と罰から、私を解放してあげよう。

この先もまた思い出して、切なくなる時があるのだろうけれど。


『 どの思い出も あなたの愛と

いっしょだから だいじょうぶ

逝かせてあげなさい 』

DREAMS COME TRUE 『ねぇ』(2010年)

この歌詞がシンクロして、心が解放された。
大丈夫。

さんざん削ったから、また磨かれる。

#過去の記憶 #恋愛
#私を作ってきたもの
#note #note初心者 #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?