さよなら

笑えて、イラついて、言葉をなくす。ドキュメンタリー映画「さよならテレビ」を観て

2018年に放送されるや、またたく間にメディア関係者の中で話題となった、東海テレビの番組「さよならテレビ」。今年、再編版が劇場公開されたので観に行ってきました。

シンプルに面白かった。

テレビ局で働く人たちを描くことを通して、今の世の中におけるテレビという存在は何なのかを考えていくような構成なんですが、テレビ関係なく、今の世の中で働く多くの人に通じうるシーンがたくさんある。

ライバル社との競争、慣れと疲れが起こす事故、高い理念と乖離する現実、サラリーマンとしての諦念、非正規のリアル、追いかけたい仕事、向いてない仕事……。

登場人物たちがそういうものとぶつかる姿を見るたびに、思わず笑ったり、イラついたり、身につまされてしまいます。

そして最後につきつけられる「伝えるとは何か」「表現するとは何か」という議題。それは「働くとは何か」「生きるとは何か」と言い換えられるようにも感じられました。

僕は、映画鑑賞後に制作サイドのインタビューや、見た人の考察を読むのが好きなんですが、あるインタビュー記事でディレクターの土方さんが語った言葉が印象的でした。

(この番組は)見ると、必ずイラつくんですよ。何かに対してイラつく番組。僕は『さよならテレビ』を“三方一両損番組”と捉えていて、「作った人」「見た人」「取材対象者」、全員が「マイナス1」になる。つまり、全員がちょっとだけ嫌な気持ちになり、誰も手放しで喜べない番組だと思っているんです。そうじゃないと、この企画は失敗だという覚悟で作りました
出典:日経クロストレンド

答えを提示しない。鑑賞後感を心地よくしない。一人ひとりに「嫌なもの」を持って返ってもらって考え続けてもらう。そういうことを目指した作品であり、それに成功している作品であると感じました。

1月から順次全国公開中なので、未見の方はぜひ。


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