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「ごく普通」の難しさ

ただごく普通に接してもらえただけで人は変われる
しかし、その「ごく普通に」が社会においては難しい

ともに過ごすことになった知的・聴覚障害を持つ利用者さんは
窃盗問題
性の問題
お金への執着の問題
を抱えていたが、たった3か月で嘘のように全ての問題が無くなった

同時に家庭内反発も

日常において私たちは
いったいどのくらい他人のことを気にかけているだろうか

話したい人と話し、興味のあるものへと近づく
苦手なことは敬遠しする
奇異な行動に対しては不快を露わにすることもある

ごく一般的な日常の中でその人は
誰の「話したい、興味の」対象ともならず生きてきた

引きこもっていたわけではないが
いつも人の輪の外側にいて気づかれず、いつしか面倒がられ
家族以外にコミュニケーションというものに縁遠いまま
30年間がたった

私たちとの関わり方は
特別なものはなく
筆談やジェスチャー、やがて片言の手話といったもので
ごく普通だった

そして3か月がたった今
問題はなくなった

とはいえ
もし、福祉サービスという関わり方がなければ
私たちも、その人が身近にいても
話し、興味をもって接していただろうか・・・

「10年ぶりです・・・」そう語った両親
問題行動がなくなり
共に楽しい外出時間を過ごすことが出来た両親が思い出したことは

「ムシスンナ」

と、不明瞭ながらに
なんとか口話法を使って
外から帰ってくるなり家庭内で荒れて、怒りを込めて叫んだ言葉だ

外で傷ついた気持ちを家族にぶつけることで
ストレスを清算していたという

人はごく普通に接してもらえさえすれば問題は起こりにくい
ということを教えてくれた

と同時に、私たちが
話したい人と話し、興味のあるものへと近づくことに留まらず
他人を気にかけるということがどれだけ重要なことかも知らされた

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