書籍:プロセスエコノミー
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
プロセスエコノミー
尾原和啓さんが書かれた、プロセスエコノミーを読みました。
プロセスエコノミーは、けんすうさんが言語化した概念であり、完成品ではなく制作過程を売るという考え方です。
本書では、プロセスに価値がある理由、そしてプロセスエコノミーの実戦について書いてあります。
今回、この書籍の導入部分についてご紹介します。
プロセスエコノミー
「プロセスエコノミー」は、アウトプットをするまでのプロセス、物語をもって経済活動をするこことを指します。
アウトプットエコノミー
「プロセスエコノミー」を説明するには、逆の概念としての「アウトプットエコノミー」を考えます。
アウトプットエコノミーは、完成品を販売する経済活動です。
完成品の映画を販売する。
完成品の小説を販売する。
完成品の音楽を販売する。
これらを直接販売することもあれば、広告モデルで収益をえるケースもありまずが、いずれにせよ完成品でマネタイズを行います。
この際に重要となるのが、製品の品質、流通価格、マーケティングです。
良いものを安く提供し、それらの存在を知ってもらうということです。
インターネットによって様々な情報が流通するようになります。
「このお店は美味しい・美味しくない」という情報はもちろん、「美味しい料理の作り方」といった情報も流通しています。
それにより、品質の底上げがされていきました。
いまや、どのお店に行っても失敗することが少なくなりました。
身の回りには70点〜80点の完成品があふれることになります。
品質の高さによる差別化が難しくなってきます。
品質の高さで価格・マーケティングの差を覆すことができなくなります。
価格・マーケティングの焦眉を挑むと、そこは薄利多売のであり、有利なのは資本を持つ大企業となります。
プロセスへの注目
ここで、完成品までのプロセスが重要視されるようになってきました。
差別化するポイントがプロセスにしかないとも言えます。
近年、サステイナブルやフェアトレードというトレンドがあります。
ファストファッションの商品の制作過程において、過酷な労働、安全が守られない労働環境といった、人権侵害とも言える行為が話題になりました。
また、売れ残り商品を焼却処分するといったブランドに対して、環境対する配慮が足りないという批判も起こりました。
結果、そのようなブランド・商品に対する不買運動が発生しました。
コーヒーの産地は経済的な力が弱い国であることが多く、買い叩きが行われやすく、生産者の生活環境が守られづらい状況にあります。
そのような買い叩きを行わずに適正価格で取引を行うことをフェアトレードとよび、フェアトレードであることを商品に明記する企業も増えました。
このように、プロセスの中において環境問題や人権問題が守られているのかということに注目が集まっています。
プロセスエコノミー
プロセスに注目があつまるなか、プロセスそのものでマネタイズするといった動きが出ています。
それがプロセスエコノミーです。
例えば、ASAYANというモーニング娘。を排出した番組も、このプロセスエコノミーとも言えます。
モーニング娘。は完成品のCDだけではなく、彼女らの成長物語が人気となり、ASAYAN自体に広告費が集まることになりました。
現在でいえば、Nizi Projectが該当するでしょう。
映画のメイキングも、お金を稼いでいるのであれば、プロセスエコノミーと言えるでしょう。
西野亮廣さんは、自身が手掛ける様々なプロジェクトの会議の様子をオンライン配信しています。
西野亮廣さん脚本、宮迫博之さん主演の演劇舞台「テイラー・バートン」では、その舞台の予算会議を有料配信しています。
これは「テイラー・バートン」本体を見た人達が、「どのようにしてこの舞台の制作をしたのか」という興味を持ち、予算会議の有料配信(つまりプッロセス)の売上が上がったそうです。
投げ銭モデルもプロセスエコノミーと言えます。
SHOWROOMのようなライブ配信で、アイドルやクリエイターたちが、ファンとの触れ合いだけでなく、作業(勉強)している姿を配信している中で投げ銭を受け取ります。
YouTubeでのゲーム配信もプロセスエコノミーと言えます。
ゲームをプレイする中では様々なアクシデントが発生します。
それを通して、配信者と視聴者との間で物語が共有され、高い視聴維持と広告・投げ銭によるマネタイズが実現されています。
プロセスエコノミーのメリット
プロセスエコノミーにはメリットがいくつもありますが、最大のメリットはマネタイズポイントの前倒しでしょう。
アウトプットを出す前からお金が入ることで、クリエイターの活動の幅を広げることが可能です。
制作に1年かかるものをクリエイターが取り掛かった場合、1年間無報酬で活動を続けないといけない、といったことがありえます。
この時に、パトロンや銀行からの資金調達があればいいのでしょうが、それは容易なことではありません。
さらに1年後のアウトプットでもお金が入る保証がないことも多いでしょう。
このときに、プロセスからマネタイズができれば、チャレンジが継続できます。
その間にプロセスを通じてファンも増えており、アウトプットでのマネタイズもしやすくなるでしょう。
プロセスエコノミーに関連する概念
書籍で紹介されている、プロセスエコノミーに関連する、いくつかの概念を紹介します。
幸せの五つの軸
アメリカ人心理学者マーティン・セリグマンは、「幸せの五つの軸」を提唱しました。
達成
快楽
有効な人間関係
意味合い
没頭
バブル期などは達成と快楽を重視して皆が働いていたと考えられます。
現在は、有効な人間関係、意味合い、没頭を重要視する人が増えてきていると言われています。
物質的なものから精神的なものに幸せの軸が移りつつあると言えます。
「役に立つ」より「意味がある」
著作家の山口周さんは、これからの社会では「役に立つ」よりも「意味がある」ことの価値にフォーカスがあたると指摘します。
商品点数を厳選しないといけないコンビニでは、ハサミなどの文房具はほぼ1種類しか置かれていません。
ハサミのような「役に立つ」ものは、「ちゃんと役に立つ」ものが一つあればよいのです。
一方、タバコは200種以上が置かれています。
タバコは役には立ちませんが、「意味がある」ものです。
その銘柄固有のストーリーと、その銘柄に関わる消費者のストーリーがあります。
その人にとって、セブンスターをマイルドセブンで代替することはできません。
グローバル・ハイクオリティかローカル・ロークオリティ
チームラボの猪子寿之さんは、「役に立つ」と「意味がある」を、「グローバル・ハイクオリティ」と「ローカル・ロークオリティ」という言葉で表現しています。
グローバルハイクオリティは、世界で競争力のあるクオリティを指します。
インターネットが物理的な境界線を突破したことにより、クオリティ勝負は世界戦となります。
圧倒的な資本を持った組織が強い戦いとなります。
インターネットは一方、コミュニティの構築と拡大を容易にしました。
それは「自分が知っている○○さん」が増えることを意味します。
そして「○○さんが作っているモノ」を知る機会が増えたとも言えます。
同じ機能を持った商品であれば、せっかくなら知り合いの○○さんが作ったモノを買おうかな、というコミュニティとセットになって価値があがるものが生じます。
この流れの先には、「世界中で流通しているハイクオリティの商品」と「ローカルで流通しているそこそこクオリティの商品」のみが残ると指摘されています。
マーケティング4.0
近代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーは「マーケティング4.0」という概念を提唱しました。
マーケティング1.0)製品中心
マーケティング2.0)顧客志向
マーケティング3.0)価値主導
マーケティング4.0)経験価値志向
マーケティング1.0では、「その商品がどれだけ役に立つか」を希求します。
「冷蔵庫・洗濯機・クーラーがあればどれほど生活が豊かになるか」といったことを伝えていました。
マーケティング2.0では、マスに向けた発信ではなく、セグメントに向けた発信を行います。
年齢・性別別といったマーケティングから始まり、「このキーワードを検索した人」のような趣味嗜好を元にしたマーケティングも行われるようになりました。
マーケティング3.0では、会社が掲げるミッションや生き様を発信します。
ナイキは、会社が社会と向き合うスタンスを常に発信しています。
彼らのCMでは商品の説明は行われずに、ビジョンとミッションを伝え続けています。
そのビジョンとミッションに共感した人が、その企業の商品を購入します。
マーケティング4.0では、企業のミッションに共感するだけでなく、さらに活動に参加します。
西野亮廣さんが手掛けるバンドザウルスは、顧客が生成AIを使ってアートを生み出しています。
参加者は、賃金労働としてではなく、プロジェクトの面白さに共感してひたすらにアートを作り続けます。
そのアートがNFTとして売買され、プロジェクトの活動資金に充てられます。
本書ではプロセスエコノミーの重要性、実戦方法、事例、留意点などについても記載されています。
プロセスエコノミーは、2020年代において非常に重要な考え方と言えるでしょう。
本書はKindle Unlimited対象となっていますので、気になった方はご一読いただければと思います。
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