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コラム

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記事一覧

100パーセントになれない私たちのために

「99パーセントの宣言」朝倉 千秋

 100パーセントという言葉は甘い魅力を持っている。絶対的に、完璧に、そういう修飾は私たちを安堵させ、ときには高揚させもする。けれども、ほんとうの100パーセントなんてものは、この世にはほとんど存在していない。いつもどこか不完全で、不安定で、ときに馬鹿げたことが秩序をかき乱してしまうような世界の中に、私たちは生きている。
 本作品の主人公「僕」もまた、そんな不

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現実が虚構を圧倒するとき――2020東京五輪ギャグバトル

『現実vs虚構』。

 それは、映画『シン・ゴジラ』を象徴するキャッチコピーでした。「虚構」の怪獣ゴジラに、「現実」のニッポンが立ち向かう。その戦いは、脅威を前に誇りを取り戻したニッポンの勝利という「虚構」が提示されることにより幕を閉じました。

 しかし、ゴジラが冷却凍結された今もなお、『現実vs虚構』の戦いは継続しています。『オリンピックvs 小説』。戦いの舞台は2020TOKYOへと移りまし

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音のない叙情詩—「Rainbow Notes♪」

 あるひとが自分と同じ年齢で鬼籍に入ったことを知ったとき、どうしても私は、深く考えてしまう。もし次の誕生日まで生きられないとしたら、と。

 もちろん生きている限り、死はいつも、すぐそばにある。明日死なない保証なんて、どこにもない。わかってはいる。けれども、常に深く考えているわけではない。そんなことを考え続けていてはいまを生きることが大変だし、なにより、できることなら先送りしたい問題なのだ。つまり

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物語がくれる「脚力」—矢馬潤の場合

 今年、千葉ロッテマリーンズの永野将司投手が公表したことで話題になった、広場恐怖症。永野投手は大学在学中からこの症状に悩まされているそうだ。この話は私にとって他人事ではない。年齢がひとつ違いでほとんど変わらないだけではなく、私自身、大学在学中、具体的には大学1年生の夏から同様の症状を患っているからだ。

 なぜ、いまこのような話をしようとするのか。それは、奇妙な因果だと感じるが、この不安障害を患わ

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血の繋がりではなく、家族ということ。龍が如くとプリティーリズム・レインボーライブ

 先日、セガゲームスは同社のビッグタイトル『龍が如く』シリーズの最新作『龍が如く7 光と闇の行方』を発表しました。龍が如くシリーズは日本の極道社会を巡って繰り広げられるドラマティックで壮大なストーリーと、現実の歌舞伎町を模した神室町やその他の歓楽街に溢れた小さなドラマたちを多く盛り込み、歓楽街の数多の「遊び」をミニゲームとして盛り込んだ独特の作風で長い間人々に愛されてきました。
 その龍が如くシリ

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