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たぶんジャガイモ

昨年、夫の実家が無くなった。ここ数年は空き家で、裏の小さな畑だけを時々夫が面倒を見ていたのだが、それも含めて全て更地にして売却したのだ。

その時夫が、大きな鉢に畑の土を入れ、そこに、庭の山椒の木を掘って植え替えて、我が家に持ち帰った。

何かしら実家の思い出を残しておきたい気持ちは分かるけど、なんで山椒の木なんだか…。夫は時々葉っぱを触って匂いを嗅いでは悦に入っている。

鉢を持ち帰ってしばらくすると、細長い山椒の木の根元がだんだん、見覚えのある葉で覆われて来た。たぶんジャガイモだろう、その辺から土を入れたからと、夫が言った。

収穫できるかもねーと思いつつ、そのままで放置し続けて、やがて枯れて何もなくなり、そうして、最近になってまた葉っぱが伸びてきた! いったい土の中はどんな風になっているんだろう。…やっぱり掘るのは怖いな。

夫の両親が元気だった頃は、季節ごとに大量の野菜をもらっていた。蕗のとう、フキ、ジャガイモ、枝豆、白菜、ネギ、柿、みかん…

どれも一度に沢山! なので置き場所にも困った。土も虫もご一緒している。社宅時代はともかく、ご近所にお裾分けが出来るほどのコミュ力もない。私自身は「野菜は買ってくるもの」という家で育ったから、必要以上の食物を最後まできちんと消費しなければというのが結構プレッシャーだった。

今にして思えば贅沢な悩みだ。

実家のあった土地は宅地に整備されて売り出されたけれど、誰かが買ったどこかの庭に、何かが生えてきたりするんだろうか。生えてきたらいいのにな。