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ラブホテルオーナーになりたいわ。【3】現代版ラブホテル経営戦略

前回のラブホテル記事の続きです。

現代のラブホテルビジネスの王道戦略

前回の記事では、部屋ごとに違うデザインを施すことが、昔も今も変わらないラブホテル特有の経営戦略であるという話をしました。といっても、昭和後期のラブホテルと比べると、平成以降に作られた(リニューアルされた)ラブホテルは画一的なデザインになってきたようです。違うコンセプトの部屋でも使っている壁の素材やベッドの形、浴槽、照明は同じものだったりします。

一方で、多くの人が残してほしいと望んでいる個性のある昭和遺産ラブホテルのオーナーさんは、古さを維持していくだけでも大変だと話しています。

カーペットやクロスを代えるとしても、新しいものを入れてしまうと雰囲気が一気に変わってしまうのだ。結果的に高価なものをセレクトしながら「変わったことがわからない改装」を続けている。

村上賢司『ラブホテル・コレクション』オーナーインタビュー

バブル崩壊前に、一つ一つ個別に大金と手間を掛けられて作られた個性ある部屋は、残したくても、古さを改善するための莫大なコストを払えず潰れていきます。

リニューアルして続けていくことを考えると、カタログ化された商品の中から選ぶことで、安価に部品の替えが利く状態を維持していく必要があります。カタログという制限の中で飛び抜けたアイデアを企画する力を持つことが、現代のラブホテルビジネスの王道になってきているのかもしれません。

昔書いた記事にも載せましたが、Best Delightグループの違うホテルの部屋で貝殻ベッドとマドレーヌベッドが同じ形だったのは衝撃でした。

貝殻ベッド
マドレーヌベッド

「ラブホテル専用」設計事務所

そして、カタログ化されているのは、インテリアだけではありません。
ラブホテルを建てるときにはちゃんと、レジャーホテルに特化した業者があります。「レジャーホテルフェア2022の会場図」をみてみると、大きいブースをしめているのが業界内のシェアの大部分を握っているところです。弱電(自動精算機や部屋パネルなど)ならアルメックス、アメニティなら東京マツシマ、リネンサプライ(シーツ・タオル・ガウンなど)なら白興、浴槽ならタケシタといった具合にです。

レジャーホテルフェア2022の会場図

また、業界雑誌にはネットでは得られない各ホテルの裏情報が載っています。全く違うグループのホテルで内装が似通っていることもよくありますが、実は、ラブホテルにはいくつかのラブホテル専用の設計事務所があり、そこへ依頼するのが一般的なために設計事務所が被るからのようです。

ラブホテル専用設計デザイン事務所

ネットで調べても出てこないラブホテルを運営している人ってどんな人?

ラブホテルを運営している人ってどんな人なのでしょうか。ネットで検索しても、実情はあまり表に出てきません。そもそも出てくる必要がないのです。ほとんどのホテルは、個人の資産として代々と受け継がれていくものだからです。

これまで、いろんなホテルのオーナーさんとお話しする機会がたくさんありました。特に、渋谷のホテルオーナーさんたちとはよく顔を合わせてもらっています。皆さん、まあ普通というか、資産を持っている優しい方たちという印象です。

グループ経営で頑張って店舗拡大しようするところもあれば、不動産資産としてマンション経営のように運用している人もいます。その中間で、家業を継いだ敏腕経営者として、この苦しい時世に数店舗で経営を着実に伸ばしているところもあります。ラブホテルオーナーにもグラデーションがあるのです。

いかがわしさを利用したビジネス

一つラブホテル産業に従事する人たちに対して疑問があります。
どうして、衰退産業と言われるラブホテル(レジャーホテル)という形態をわざわざ取っているのでしょうか。別に、エンターテイメント性があり、カップル利用、女子会利用、ビジネス利用やインバウンド利用全てを包括するホテルならラブホテルじゃなくてもいいはずです。

ラブホテルには、普通のホテルと比べると、良くないイメージがつきものです。

最近もまた、彼氏にラブホテルに誘われて「普通のホテルの方がいい!」と怒ったという女の子の話を聞きました。少し時代錯誤ですが「自分のことを大事にしているならラブホテルに行くはずがない」という持論を持っている人に会ったこともあります。
他にも、ラブホテルはちゃんと掃除していなくて不潔だとか、ラブホテルがある場所は治安が悪いだとか、存在が子供に悪影響だとか、良くない印象もあります。

私の場合、こういったデメリットがたくさんある中で、それでもわざわざラブホテルのオーナーになりたいと思う理由は、ラブホテルのいかがわしさは利用できるものだと思うからです。ラブホテルというワードを出せば良い意味でも悪い意味でも興味を持ってもらえますし、いかがわしさを逆手にとって「ラブホテルだけど清潔だし高級感あるし楽しい!」とギャップを与えることができます。また、いかがわしい場所だという先入観は背徳的官能的な非日常の演出を容易にします。

今、ラブホテルという枠組みの中で勝負している人たちは、どういう意図を持っているのでしょうか。今後、ラブホテルオーナーさんや設計デザインの先生にお話を聞くときに、この疑問をぶつけていきます。

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