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雪山でMVを撮影した話②~撮影前の下見と衣装制作

前回は、そもそもなぜ雪山で撮影しようと思ったのかに至る思考とプロセスについてお話しました。
今回は、実際に撮影に向けて行った準備についてお話します。主に現地での観光がてらの下見と、悪戦苦闘の衣装制作のお話です。

「これどこで撮ったの?国内とは思えない!」とよく言われるMVをまずはご覧ください!


下見という名の観光へ~初めての長野県

頭の中に描いていた理想的な雪山風景・千畳敷カールのことを知ってから、実際に撮影しようと決めたのは2022年初頭のことでした。そもそもこの曲を早く終わらせたいw という気持ちもあり、記事に載っていたバンドが撮影したというゴールデンウィーク前後の撮影を考えていました。なんとか準備して、春の撮影に間に合わないかな。

しかし…そもそもこんな非日常な場所で本当に撮影ができるのか?ネット上で散々調べてはいましたが、行ったこともない場所なので地理も気温も何もかもわからないことだらけでした。

一番心配だったのが、そもそもロープウェイで一気に標高2,600mに上がって、自分の体調がどうなるのかということです。以前、もっと低い標高に上がっただけで少し気分が悪くなったことがありました。こればかりは実際に行ってみないとわかりません。
私は一つ不安に思うと、その不安について徹底的に調べあげ、不安を増長させる癖があります。今回も色々な人が現地に行ったブログや動画を見漁り、高山病についてめっちゃ詳しくなりましたw

…しかしいくら詳しくなったからといってリスクが下がるわけではありません。もう、この不安を拭うには実際に行ってみるしかない!

ということで、急遽、千畳敷カールへの一人旅を決行しました。
駒ヶ根市へは新宿からバスで4000円前後。この時私は生まれて初めて長野県、というか中部地方に足を踏み入れることになります。(←関西から関東までの間の県をすべて新幹線で素通りしてきた大阪人)

一泊する予定で駒ヶ根市に到着した時には、もう夜でした。でも降りた瞬間、「あ、なんか空気おいしい・・・」って思ったんです。それで、朝起きて窓の外を見てびっくりしました。

市街地からでもどこからでも見える山々。


うわーーーー!!!山めっちゃきれい!!!!!!!

黒く険しい山肌に、まばらに雪の残る雪…こんな景色、今まで間近に見たことない!!!
前日なぜか寝つけなくて最悪のコンディションではあったのですが、市街地ですら外の空気がめっちゃ澄んでいて気持ちいい。駅からバスに乗ってロープウェイ駅に到着。ロープウェイまでもくねくねの山道を登るのですが、ここは絶対に手元を見ずに外の景色だけをガン見することによって全く酔わずに過ごせました。

そしてロープウェイです。高山病というのは、頭の酸素が薄くなることで起こりやすいそうなので、しっかり呼吸することが大事だそうです。ドキドキしながら登っていきましたが、結果、体調は全く変わることなく到着。これも完全に杞憂でした。

2,612mに約7分で上り下りできるってすごいですよね。地道に登るとか絶対無理。


それよりも目の前に広がる景色に圧倒されました。すごすぎる!!!!日本にこんな場所があったんだ!!!!!
その日は雲一つない晴天。4月末でも気温は9度。太陽の光が強く、風は少し冷たいですが、気温の数字ほど寒いという感じでもありませんでした。
生まれて初めて(ロープウェイで)登った雪山に感動するインドア人間でした。なんというか、もう、神という感じ。神々しい。山、尊い。

GW前半ということで実際は観光客が結構いました。

念のため、数時間滞在して体調に変化がないか確かめました。その間、ホテル千畳敷のカフェを利用しました。

コンコードジュース。「赤ワインをぶどうで甘くしてアルコールを抜いた」という表現がしっくりくる。うますぎる。(とにかく飲んでみてください)
カレーもめちゃくちゃ美味しかったです。

あれ?ただの観光レポになってる…。

撮影の下調べとして、ホテル千畳敷の方に詳しくお話をお伺いすることができました。
そこでわかったのは以下のようなことです。

・6~7度でも日差しがあれば暖かく感じる。
・5月でも雪が降ることがある。
・山の天気は変わりやすく、ホワイトアウトすることもある。
・風が強くて外に出られないときもある。
・市街地と山頂の天気は異なることもある。
・天気予報は当たらないことも多いかも。
・4月上旬はスキー客が少ない。
・4月上旬のほうが雪が残っている。

主に天気のことについて教えていただきました。体調は大丈夫ということがわかりましたが、天気ばかりは運もありそうです。
いやしかし、この日の快晴具合よ!!!来年も絶対晴れるよね!

しっかり写真や動画を撮り、念のため二時間くらい滞在し、「来年よろしくお願いします!」と山に伝え、下山しました。

麓のバスターミナルでお土産を買いまくり、ソースカツ丼を食し、帰宅。いや、ただの観光やんw めっちゃ楽しかったです。空気もおいしいし。

この写真ではありませんが、民宿天山でテイクアウトしたソースカツ丼が
一番おいしかった。おすすめ。

準備の最大の山場ー衣装

さて、一部の不安要素が消え、本格的に準備に取り組むことになりました。
まずは、衣装です。ここから、出発前日まで悩まされる衣装との格闘が始まります。毎日、ネットで理想的なパーツを探しまくる日々でした。

全体像はなるべく自分でイメージしやすいように、商品購入前にiPadの「ibisPaint」というアプリでシミュレーションしました。
やり方としては、自分の顔〜首周りくらいまでを切り抜く(不要な部分を消しゴムで消すほうが楽)。そこに検討している衣装や小物の画像を切り抜いて貼っていく、というものです。着せ替え人形のようにレイヤーごとに表示・非表示が切り替えられるので、色々なパターンをイメージしやすくなります。

衣装制作にあたって最寄りのダイソーさんやキャンドゥさんには非常にお世話になりました。少量だけ欲しい、低リスクで試してみたい、豊富なバリエーションが欲しい、を全部かなえてくれる100均さん、本当に有難い。(最近はレイヤーまつげとかいうものまで売っててびっくり。)

それでは、各アイテムごとにに分けて説明しましょうか。
※やっている間必死すぎて詳しい写真があまりありません。
※すべて素人の勘で作っています。ご了承ください。

■ドレス&ショール

土台は既製品を使うことにしました。腰部分の切り替えがあると「コンサート衣装」って感じが出るので、なるべく腰の切り替えがないものを探していました。パーティドレス、キャバドレス、コンサート用ドレスなど、色々なドレスを見漁った結果、予算二万円以内で良さそうなものがありました。
あいにく小さいサイズしか在庫がなかったのですが、そのデザインが一番良かったので、改造前提で購入しました。
着てみると、ん…?海外製なのでSと言っても大きめであることはわかっていましたが、ウエストはきついのに脇腹辺りに緩み。対策として、背中部分の紐をゴムに差し替えて、脇腹辺りは縫って詰めました。
最初は試着時に背中のゴムを毎回固結びして、脱ぐ時にハサミで切っていましたが、最終的にはゴムの端にコードストッパー(ジャケットとかについてる、裾を絞る時に使う、アレ)をつけることにしました。

これで一人で着替えられるようになりました。

雪山でゴミを出したくなかったため、ドレスの装飾の細かいビーズは全て接着剤で念入りに固定しました。

ショールは初めは着物用の白い羽ショールを使っていましたが、少しイメージが違ったため、上から別で購入した灰色のショールを重ねました。
今回は野生味も出したかったので、灰色が入ることによって良い感じになり、さらにショールを二枚重ねることよって撮影時の防寒にもなったので良かったです。

■ウィッグ

これがかなり難関でした。まず、イメージに合うウィッグが売ってない。コスプレウィッグのサイトを中心に調べまくりましたが、全然ない。前髪がなくて、カールがかかってて、ロングで、ピュアホワイト、この条件に合うウィッグが本当にありませんでした。こういうキャラあんましいないんだな、需要ないんだな…。
ストレートウィッグをコテで巻くことも考えてましたが、大昔ちょっとだけコスプレをやってた時、耐熱ウィッグをコテで巻いて髪がチリチリになったことがトラウマになっていました。だから、もともとカールのやつが欲しかったんです。
ある程度しっかりした作りのものを探していましたが、見つからないので諦めて、デザイン的には理想的な安いものを買いました。

間近で見るとテカリも少し気になりましたが、撮影では全く気にならなかったので良かったです。

ただ、安いウィッグだと毛量が少ないということもわかっていたので、増毛用の毛束ウィッグも購入しました。
最後まで悩んだのが、やはり毛量です。風に吹かれた時のことを考え、内側の部分をウィッグの土台に瞬間接着剤で固定しました。ここでポイントなのが、表面に接着剤をつけないことです。固まった時に明らかな接着剤感がでます。接着剤は土台のみに塗って、上から髪を手で押さえる。こうすると内側の毛だけが固定されます。

実際に撮影したものを見ると、地肌が見えそうとかは全然気にならなかったのでほっとしました。

■鹿のツノ、頭かざり

なぜかこれを頭につけたいと思ってしまったんですね。しかも、理想通りのものがアマゾンで安く売っていたから驚き。カチューシャ型のものが大陸から無事届きました。
さあ、これをどうやって頭につけるのかが問題です。
試行錯誤した結果、ウィッグの土台のネット部分に毛糸を巻き付けながら縫い付けることにしました。編み物をやるわけでもないのに、生まれて初めてかぎ針を購入したわけですが、結果的にはとてもしっかり付きました。
さらにそれを瞬間接着剤でウィッグに固定し、毛束ウィッグで作った太い三つ編みを上から貼り付けました。これで黒いカチューシャ部分を見えなくする作戦です。
どうなることやらと思いましたが、結果的にはかなりいい感じに仕上がりました。

額チェーンについてもどうするか迷いましたが、これもウィッグの土台に縫い付けてしまったほうが安定しました。位置を決めるのが難しかった…。
ちなみに、終盤では発泡スチロールのマネキン頭を購入してウィッグの加工をしました。ダイソーで660円で売ってるのは知ってましたが、まさか買うとは思わんかった。制作中はマネキンに待ち針を挿してウィッグを固定しながら制作を進めました。

ありがとう、君のおかげで頭部は完成した。(撮影後の写真なので髪が乱れ気味)

■首・腕かざり

腕部分は、結婚式で使うようなケミカルレースのグローブを購入し、正攻法な付け方ではなく、ずらして腕に巻き付けられるようにマジックテープで加工しました。
首、二の腕のレースはユザワヤで良いのがあったので購入しました。わりと制作の終盤だったと思います。ちょっと民族感のあるデザインが気に入りました。
こちらも手芸用の薄いマジックテープや接着剤などで加工して装着できるようにしました。

首のレースは気に入っています。腕飾りは撮影中に結構ズレた。

■メイク

Pinterestで「Snow queen makeup」とかで検索したらめっちゃクオリティの高い画像が大量に出てくるので、例には事欠きませんでした。ただ、それが似合うかどうかは別問題…ほとんどの画像が欧米人のものなので、日本人がやるとコスプレしました感でてしまう気がするんですよね。自分の顔で雰囲気が出そうなメイクということで三回くらい練習して今のかたちになりました。
このために化粧品を一生懸命見比べたりして購入したんですが、ちょっと待てよ、日常生活で化粧品にこんなに一生懸命になることって無いわ。きっとメイクにこだわって毎日研究している人はこういうことをしているんだな、と日ごろパソコンがお友達の在宅作曲家は思ったのでした。

撮影のために新たに購入したメイク道具たち。実際に使ったり使わなかったり。これも結構な出費になりました。(普段使える色だったらな…)


ところでこの頃になると、櫻木は連日の瞬間接着剤の使いすぎにより、爪が接着剤だらけになっていました。皮膚についた接着剤はお湯で取れますが、爪は取れない。これは瞬間接着剤がいかに優秀かを示すエピソードですね。おかげで撮影のために塗ったマニキュアが、まあ綺麗に塗れない。直前まで塗り直していました。

そんなこんなで悪戦苦闘の衣装制作の日々を送っていました。何せ客観的に見てくれる人もいないので、出発の前日まで色々悩み、本当にこれで大丈夫なんだろうかという不安がありました。
まあ最終的には、自分のためにやっていることだし、衣装やメイクのプロでは全くないし、もう精いっぱいやったら努力賞だろうという気持ちでした。そもそもワシ、作曲家だし…。

さあ、なんとか衣装は準備できましたが、それだけでは終わりません。撮影の許可取り、カメラマンさんとの打ち合わせ、天気読みなど、やることはたくさんあります。
次回はいよいよ撮影についてお話します!


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