見出し画像

2022年じゃがいも栽培を振り返る

久しぶりすぎるnoteの更新は、2022年の我が桜井ファームの農業を振り返るシリーズをまとめてみようか。ほぼ自分の為のnoteになるな。公開する意味があるのか解らないけど、人の目を意識することで、自分の知識や技術が定着するんじゃないだろうか?ペン握るの疲れるし、やりだしたらどうでもいいところまできれいにまとめたくなる性分なので、たぶん手書きnoteでは断念すると思うから、ここで手始めに。

第一弾はじゃがいも栽培を振り返りたい。

作付計画

圃場03 風防横

前作 小麦、小豆

作付品種・面積 トヨシロ180a

圃場09 200間 

前作 小麦

作付品種・面積 トヨシロ180a ぽろしり210a スノーデン60a

天候を振り返る

4月2日 雪解けの畑

4月 降水量が少なく、日射量が高いことからも解るように、畑の雪解けは早かった。27日~28日にかけて防風が吹き、29日~30日にかけて霜が降りた。通常年はこの時期にビートの定植行うが、本年はリスクが高かったため、馬鈴薯の播種を優先した。

5月 上旬から中旬にかけて降水量が少なく、順調に気温、日射量も上がってきた。下旬から、天候が思わしくなく、曇天雨が増えてきた。

6月 5月下旬から続いて上旬は曇天続き。中下旬は、雨も加わって、温度も上がらず。防除のタイミングに悩ませれる日々。


7月 上中旬は、相変わらずの天候不順。しかし20日を過ぎて末日までは、一転天候が回復。さらに30℃を超す真夏日は1日のみの適度な温度上昇で北海道らしい真夏の太陽を感じる10日間であった。

8月 天候回復の兆しに期待した8月だったが、またも雨が降りやまない。湿度も高く、北海道にも梅雨が来たのかと感じる天気が一か月間続いた。

9月 打って変わって天候回復。5日から受入開始の馬鈴薯収穫は順調に進んだ。2日~16日までの2週間は全く雨が降らず、天候に恵まれた。この晴れ間が無かったらと想像するとゾッとする。

種芋管理を振り返る


種イモ貯蔵庫 

前年秋の管理

2021年10月17日。
フレコンパックで引き取りした種イモを品種毎にサイズ分け粗選別して貯蔵庫に入庫。翌年4月まで、最低0℃以下にならないように空気循環をさせて保管する。

浴光催芽とは?

2022年4月2日。
種イモを貯蔵庫から出庫する。出庫のタイミングは、播種日にから逆算して積算温度150℃~180℃になる時期に出庫して種子消毒を行い、浴光催芽(よっこうさいが)を開始する。

浴光催芽とは、種イモに温度、光を与える事で、芽を均一に出して、茎数を確保する事です。しかし、温度をかけすぎると、種イモの能力を使いすぎて、植えてから生き残る茎数が減ることが分かっているので、浴光期間中の積算温度が150℃~180℃となる時に播種することを目標とします。本年の播種予定日は4月25日頃。寒冷紗をかけたハウス内で浴光する場合、平均温度11℃とすると必要な日数は15日。4月10日前後に出庫が望ましいとなります。

整地・播種を振り返る


サブソイラー(心土破砕)

2021年8月
小麦収穫後に堆肥散布
以下圃場9のみ (圃場3は客土施工の為、未実施)
サブソイラー施工
ヘイオーツ散布
ショートディスクで整地
2021年10月
ヘイオーツをチョッパーで裁断
ショートディスク2回かけ

2022年4月
圃場3(客土施工後)
サブソイラー(業者委託)
プラウ
ロータリー(1000回転)2回かけ

圃場9(緑肥作付け後)
スタブルカルチ
ロータリー(1000回転)2回かけ

前年の畑づくり(生堆肥散布と緑肥栽培)・整地 

2021年8月21日
小麦収穫後に生堆肥を400㎏/10a散布。本来、堆肥は完熟させたものが良いとされていますが、完熟したものは微生物に分解されて、肥料としての役割はほぼなくなっています。肥料としての役割を残しつつ、微生物を活性化させ、土の団粒化を図る事を目的に、あえて発酵させる前の堆肥を緑肥の肥料として散布することで、育った緑肥の日陰の元で温度をじっくりかけながら微生物が働き、土ごと発酵させるという考え方です。
その後、サブソイラーによる心土破砕を実施。施工深度は、30cm程度。本来は50cmほど入れたいところだが石が多い畑ばかりなので、この深度が我が家では限界。ただ、この深度でも排水で苦労することはあまりないので、施工時のトラクターの燃費や、機械の消耗を考えると、これでも良いかと言い聞かせています。
サブソイラー施工後は、緑肥(ヘイオーツ)を播種します。播種量は、  10kg/10aブロードキャスタで通常の肥料では30m程の散布幅ですが、種が軽くて飛びづらいので半分の15m間隔で散布しています。播種後は、硫安20kg/10aを同じくブロードキャスタで全層施肥し、ショートディスクで整地し、緑肥の播種は終了します。

10月中旬頃になると緑肥が種を付け始めます。種がつくと、緑肥が蓄えた養分が種にとられて減少してしまうので、種がつく直前にチョッパーをかけて緑肥を裁断し、ショートディスク2回掛けを施工しプラウでの反転耕起を行わずに整地を完了とします。一般的に、秋に年を越す準備の整地はプラウによる反転耕起が一般的ですが、有機物の微生物分解を促進し、腐食を増やし、土の団粒化を図る事、更に、反転耕起で強制的に未分解有機物を地中に鋤き込み、嫌気発酵することを防ぐために緑肥作付け後にプラウによる反転耕起は行いません。

当年の整地

2022年4月
圃場3 冬に客土施工。重機で踏み固められた畑は、トラクターのサブソイラーでは歯が立たないので、ブルドーザーによる心土破砕を業者委託しました。その後、プラウによる反転耕起を実施。客土の土は肥料成分が少ない事が多い為、土になじませる目的で反転耕起する必要があります。深度は30cm。その後、プラウの整地が平らに決まったので、1000回転のロータリーハロー2回かけで整地終了としました。

圃場9 スタブルカルチで深度30cm以上となるように整地、その後1000回転ロータリーハロー2回かけで整地終了としました。

施肥を振り返る

土壌診断結果を基に施肥を考察

圃場3 診断結果
pH5.8 CEC31.0 リン酸吸収係数1,610 塩基飽和度45.0 
N7.6 P42.0 Ca299 Mg49.0 K40.0 Mg/K2.9 Ca/K4.4
  
2020年に玉ねぎ作付けにより分析値過剰が目立つ。しかし、2021年に客土を施工済み。分析値が落ち着くと考えられるため、施肥量は施肥基準に準ずる。

圃場9 診断結果
pH5.4 CEC26.3 リン酸吸収係数1,790 塩基飽和度33.0
N2.6 P26.0 Ca186.3 Mg20.0 K50.7 Mg/K0.9 Ca/Mg6.9

前年、小麦収穫後堆肥4t/10a散布後ヘイオーツ作付。その割には熱水抽出性窒素の数値が低い為、窒素の施肥基準を6→8kgに変更。晩生品種(ぽろしり、スノーデン)は更に3kg増肥。加えて培土前に緩効性3要素肥料を施肥。カリは基準より高い為、基本的に施用の必要はない。カルシウム、マグネシウムは低め。収穫後にタンカル、水マグ施用で塩基調整が必要。

作付け前に心配だったのは、圃場3が客土後であったということ。客土の土は、極端にリン酸が少ない事がありますので。圃場9については、2021年に緑肥とともに堆肥を入れている割には、窒素の値が低い事。窒素の増肥は必要だろうと判断しました。

十勝の施肥基準

N6.0 P20.0 K10.0 Mg4.0

施肥設計

圃場3 トヨシロ
<基肥>
メインタンク S536(N5.0 P23.0 K6.0) 100㎏/10a 
サブタンク  硫安(N21.0)20kg/10a

圃場9 トヨシロ
<基肥>
メインタンク S536 100㎏/10a
サブタンク  硫安 20㎏/10a

圃場9 ぽろしり
<基肥>
メインタンク S536 120㎏/10a
サブタンク  硫安 20㎏/10a
<培土前追肥>ブロードキャスタで全層施肥
オキサホスカ (N10.0 P10.0 K10.0 Mg3.0) 20kg/10a

圃場9 スノーデン
<基肥>
メインタンク S536 130kg/10a
サブタンク  硫安 20㎏/10a
<培土前追肥>ブロードキャスタで全層施肥
オキサホスカ  20kg/10a

新しい取り組みとして、サブタンクに硫安を入れた。プランターの肥料ゲージが曖昧で、狙った施肥量より少なくなることが多い。チッソ、カリが少なめの肥料なので、10㎏/10a少なくなるだけで、生育に大きく影響する。カリ減肥したいが、チッソだけはしっかり入れたいという考えで、このような施肥体系とした。

播種を振り返る


十勝農機 4畦カッティングポテトプランター 整備の様子

4月27日~28日に最大瞬間風速20m/hを超える暴風が吹き続き、その後の降霜。予報よりも悪い天候となった。その予報をみて、ビートの移植を予定していたが、馬鈴薯の播種を優先することを決め、平年よりも早く馬鈴薯の播種作業を開始した。

播種日

トヨシロ  4月25日、4月26日、4月30日。
ぽろしり  4月25日
スノーデン 4月25日

晩生の品種ほど、萌芽(目が土から顔を出すこと)が遅く、初期生育が緩慢なため、先行して播種する必要がある。

基本的には、地下地温が10℃を超えなければ黒あざ病のリスクがあるため、早まきは良くないが、ビート定植のリスクの方が高いと判断し、じゃがいもの播種を優先。この判断は後に振り返っても間違いなかったと思う。

 

播種方法

畝間 75cm (全品種共通)
株間 カッティング27cm・全粒25cm(トヨシロ、スノーデン)
   カッティング25cm・全粒24cm(ぽろしり)
播種深度 6~7cm(共通)
機械 十勝農機 4畦カッティングポテトプランター

トヨシロ、スノーデンは、芽の数が多く、玉数が多くなる傾向にあるため、標準的な株間27cmに設定。
ぽろしりは、芽の数が少なく、玉数が少ないので、株間を狭めて25cmとしました。
全粒については、芽数の確保が難しい為、株間を狭め、栽植密度を高くしました。

管理作業を振り返る


培土 

5月25日~27日 培土開始。

機械 ニプロ ロータリーカルチ
   日農機 早慣かまぼこ培土機

5月中旬まで雨が少なく干ばつ傾向で土壌水分が少なすぎると判断し、降雨後で土壌水分の適正なタイミングで行おうと思っていました。そのため萌芽が進みすぎ、葉が完全に展開した状態からの培土で生育が出遅れました。更に、雑草が多発する畑であったため、規定ギリギリの量での除草剤散布となり、かなり初期生育に影響を及ぼしました。一時、ほぼ畑全面が黄色くチャリチャリの状態となり復帰の見込みがあるのかと心配した位でした。

防除を振り返る

スプレーヤー 共立 BSQ6000A1 SPY-SNU 散布幅30.6m

じゃがいもの重点防除対象は、
病気予防
①疫病 ②夏疫病 ③軟腐病
害虫予防
①アブラムシ
雑草対策
①イヌホウズキ ②ヒエ類

ということで、以下の剤を選んで散布しました。

2022年 馬鈴薯防除暦

除草剤について

雑草対策を優先して、ラクサー乳剤を散布し、しっかり薬害を起こしましたが、雑草はとても綺麗に収まりました。多分、臆病になって、薬量抑えたり、薬害リスクのない剤を選択していたら、雑草の勢いに負けて生育が停滞していたと思います。
このようにいえるのも、薬害発生後の天候が暑すぎず、大雨も無かったという天候の要因と、生育回復を狙って、液肥を3日おき(7日間隔の防除と同時に加えて、中日に液肥のみの散布)に約3週間に渡って散布し続けた人的要因が重なり、急激に生育が回復したからです。薬害を起こした状態で、曇天、低温が続いていたらと思うと、ゾッとします。

液肥について

薬害を起こした直後から、3日間隔で約3週間。合計7回散布。7日おきの農薬散布と同時に、更に防除と防除の間の中日に①の液肥のみの散布を行いました。3週間の重点期間を終え、生育が回復してからは、②の液肥を農薬と同時に計5回散布しました。銘柄は以下の通り。


ボニー アミノ酸を主体とした3要素入り液肥 N5 P2 K2 (%) 
使用倍率 500倍 
ウルトラCa カルシウムのみの無添加カルシウムイオン水 
使用倍率 3,000倍 
健土308 エンドファイト(共生微生物資材)を主体とした液肥 
使用倍率 500倍 


ボニー 500倍
アリンエース 結晶亜リン酸カリ資材 P57 K38 (%)
使用倍率 1,000倍

殺菌剤について

疫病防除は例年通りのローテーション。
課題の軟腐病について、薬害リスクのある銅剤を控えて抗生物質をメインに散布した。

殺虫剤について

アブラムシ防除として、例年通りのローテーション

展着剤について

例年通り、ササラを使用。防除後半はミックスパワーを使用した。

収穫を振り返る

ポテトハーベスタ 東洋農機 ウルトラ7

今年から、コンテナを使った庭先集荷を始めました。

コンテナの利用料、運賃
運賃 0.54円/kg
組コンテナ 委託~230円/組 今年は、アルバイトさん3人を雇って人件費   25,000円。
トレーラー配送料 1,260円/台

コンテナ1基=1,300㎏ ~ 1300×0.54円=702円/基
組コンテナ 25,000円÷100基=250円/基 約20基は自分で組んだ。 
トレーラー14基/台 ~ 1,260÷14=90円/基

自分でアルバイトを頼んで組むと委託より割高。自分で組める分だけ自分で組んで、後は委託した方が割安なことが分かった。

約130基出荷したので、庭先経費は
(702+250+90)×130=135,460円

この金額をどう判断するか。

庭先集荷のメリット

ダンプが古くなってきているので、少しでも長く使うための経費と考える。
ダンプの運転手が必要ない。
自分のペースで掘れるので、精神的ストレスが無い。
受入時間、受け入れの中止に関係なく掘れる。

庭先集荷のデメリット

運賃、組みコン料金がかかる。
コンテナを組む手間がかかる。
コンテナを圃場に移動する手間がかかる。
天候不良時にテントを張ったり、移動したりの対策が必要。
毎日事務局とのFAX連絡が必要。

収量を振り返る

トヨシロ  3,468㎏/10a 規格品率 91% 
      比重 1級率 84% 2級率 16%  
ぽろしり  4,166㎏/10a 規格品率 96%
      比重 2級率 64% 3級率 36%
スノーデン 3,818㎏/10a 規格品率 88%
      比重 1級率 41% 2級率 59%

トヨシロ、ぽろしりは例年に比べて大きく、比重も高い結果となった。
スノーデンは、作付2年目だが。前年よりやや収量は上昇した。
全体的に、目標収量にあと一歩というところ。ただ、地域の状況を聞くと、この結果は合格点といえそうです。
特に、トヨシロの規格品率90%超えと比重の1~2級率100%は品質の面で良かったと思います。
改善点は、スノーデン。昨年の反省から、基肥の施肥量を上げたことで最後まで葉が青く残り茎葉チョッパーをかける必要があるほど生育旺盛でした。しかし、玉数の少なさ、玉太りがいまいちだった原因は、除草剤の薬害による生育停滞だと思います。晩生の品種なのでストロンの伸長も他に比べて遅いのかと思っていましたが、生育回復してきたころに土を掘って根域を確認したところ、他の品種に比べて明らかにストロンの伸長が緩慢に見えました。収量性が高い品種であるため、ストロンの伸長も他の品種よりも早く始まるのだろう。生育停滞期のタイミングとストロン伸長のタイミングが重なり、減収につながったと考えています。

2022年の総括 今後継続する事、改善する事

継続する事

施肥は、有機物分解による窒素飢餓を防ぐため、また、プランターの施肥量が予定量入らないリスクも加味し、サブタンクに硫安を入れて施肥する。
整地は、播種前にスタブルカルチ→1,000回転ロータリー2回かけを実施する。
防除では、軟腐病防除にはなるべく銅剤を使用せず、抗生物質を中心に使用する。液肥は、萌芽から1か月間を重点散布期間として、生育を見ながら集中的に間隔を短くして散布することで製品率の上昇が期待できる。

改善する事

培土のタイミングを逃さずに、除草剤の薬害を受けないタイミングで培土を終了し、除草剤はラクサーを使用する。
コンテナ組は自力で組める分だけ(50基程度?)組、後は組みコンの配送を依頼する。

感想

書いているうちに、色々思い出してきて、なかなか、内容が濃いものが出来た。来年見返すものが出来て良かったのではないかな。
他の作物でもやってみよう。
私以外の人に理解できる分かりやすい内容になっているとは思わないが、まずはやってみる!は出来た気がする。年年重ねるごとにアップデートできるだろう。とりあえず、一区切り!
次は、スイートコーンだ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?