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2020年にあったすげえ映画ベスト10

2020年は激動の年だった。ウイルスのせいで世界中が滅茶苦茶になってしまった。
渡航制限やロックダウンなど、やむを得ず国家間を分断するような事態が起きた。
そんな社会状況にありながらも、今年度のランキングは奇しくも国際色豊かなものとなった。

パラサイト 半地下の家族

パラサイト

まずはお隣韓国から年明けのキツイものを一発。
アカデミー賞を勝ち取ったこの貧困を食らえ!
ポン・ジュノにリスペクト!


エクストリーム・ジョブ

エクストリーム・ジョブ

だが、気が滅入る作品ばかりではない。韓国はコメディも強かった!
痛快娯楽アクション『エクストリーム・ジョブ』だ!
犯罪組織を検挙するため、フライドチキン屋に扮した麻薬捜査班一行。
いつしか捜査よりもチキン屋の経営の方が軌道に乗り始め……というあらすじだけでも十分に面白い作品だったが、中身もしっかり面白かった。
プロットの奇抜さに頼りすぎず、五分に一回笑えるシーンを挟み、観客を飽きさせず、クライマックスでは燃える展開に持ってくるその手堅さはまさに快作としか言えない一品。
同じく2020年公開の韓国産の痛快娯楽作品では『EXIT』も 見逃せない作品となっている。


悪人伝

悪人伝

マ・ドンソクVSサイコ殺人鬼!負けられない闘いがここにある!勝手に戦え!
無差別に人を襲うサイコ殺人鬼がある日出会ったのは、マ・ドンソク演じるヤクザの組長。
喧嘩を売ること自体無謀としか言いようがないが、この殺人鬼は違った。
躊躇せずタマを獲りに行ったのだ。その蛮勇に触発されたマ・ドンソクも組の全勢力をつぎ込み、悪徳警官を共同戦線を張り、戦いに臨む!
凄惨な殺し合いの火ぶたが今切って落とされた。



スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼

スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼

日本の殺人鬼も負けてない。
世間を騒がす謎のハッカーMに立ち向かうのは、優秀なサイバー捜査官加賀谷と彼に捕まった悪のハッカーにしてサイコ殺人鬼の浦野。
前作では対立していた善と悪の対照的な二人が、今作ではバディを組む熱さがたまらない。
正直、映画好きがベストにあげる作品ではない。
演出は所々チープだし、脚本も突っ込みどころがそれなりにある。
だが、オタクの琴線を刺激するものがこの作品にはある!

光と闇のスマホ使い



初恋

初恋

三池崇が暴力映画に帰ってきた。
ヤクザとチャイニーズマフィアの抗争と純なボーイミーツガールが破綻なく混ざり合う。
暴走特急ベッキーに策士気取りの染谷翔太にダメ中年の悲哀漂う大森南朋と異様にキャラの濃い登場人物たちが繰り広げる群像劇と怒涛のクライマックスからしみじみとした気持ちになるラストまで頭から尻尾まで味わいのある快作。あとやっぱり窪田正孝はいいね……。


スパイの妻

スパイの妻

NHKと黒沢清が出会ったとき、傑作が生まれた!
戦中、日本軍のある機密事項を知ってしまった男とその妻のロマンスとサスペンスが混淆した一作。
戦中の生き辛い時代の中、知ってはいけない秘密を知ってしまった二人の愛のドラマだが、そこかしこに黒沢清的な歪みが出現する怪作でもある。
突如としてスクリーンに映る禍々しさに恐れおののけ。
あと突如として現れる爪剥ぎ拷問のこれ趣味だろ感がすごい。

それはそれとしてこの作品には別の魅力がある。
同じNHK製作の高橋一生が主演の作品といえば、年末に放映され、オタクどもを歓喜させた実写版『岸辺露伴は動かない』がある。
戦中を舞台にしたドラマと少年漫画のスピンオフ実写化作品(それもスーパーナチュラル要素のある)には製作会社以外の共通点があった。
それは高橋一生の胡散臭い男の演技が堪能できるところだ。
ハイソで上品だがどこか鼻持ちならない雰囲気の男を演じさせたら、本邦映画界では高橋一生に敵う者はいない!
胡散臭い内容の話をベラベラとまくし立てるように語る様はまさしく彼の独壇場。
また、戦前戦中の頃のハイソな階層の人たちの生活様式をうかがえる美術や登場人物の所作も見逃せない。


ジョジョ・ラビット

ジョジョ・ラビット

ヒトラー政権下のドイツ人の少年とユダヤ人の少女のボーイミーツガール。
絶対に作中で重苦しい事態になると想像できる筋書きだが、本作はコメディ。
開幕からビートルズの曲が流れるは、ヒトラーを演じるのはユダヤ系のルーツを持つ監督本人だはとやりたい放題である。
しかし、楽しいだけの作品ではない。
コメディで笑っていた観客に対して、この映画の舞台が第二次世界大戦中のドイツであることを叩きつける厳しさもある。
監督たち制作者のバランス感覚に感嘆する一作。
あとサム・ロックウェルが最高。


アングスト/不安

アングスト不安

オーストリアから凄まじい奴がやってきた。
要約してしまえば単純なストーリーだ。
気まぐれに婆さんを殺してムショに入った主人公が、出所してからまた気まぐれに一軒家に侵入し、そこに住む親子三人を殺し捕まる。
このあるすじを裏切ることもなく特別なツイストもない。
そうではあるが、この映画はただものではない。ヨーロッパでは発禁処分となり、日本ではビデオスルーの憂き目にあったいわくつきの一品である。
冷徹なエレクトロサウンドをバックにオーストリアの荒涼とした寒々しい風景の中、異常極まりない殺人鬼が疾駆する。
物語は終始、主人公の殺人鬼の支離滅裂なモノローグが流れ、それ以上に支離滅裂な行動が見る者を困惑させる。
そんな彼の姿を独特なカメラワークと画角で映す。邦題の通り、見ていて不安にしかならない作品だ。

もう予告編からしてやばい。



ブルータル・ジャスティス

ブルータル・ジャスティス

アメリカから凄い暴力がやってきた。
監督は本作が三本目の新進気鋭S・クレイグ・ザラー。
停職中の警官コンビが強盗団から金塊を掠め取ろうと画策するというどう考えても碌なことにならない筋書き。
しかし、この作品は頭から尻尾までノンストップで進むクライムアクションというわけではない。
二時間半の長尺大部分を占めるのが、強盗団を張り込みする警官コンビの姿だ。
観客は、この二人のどこかとぼけたやりとりを延々と見せつけられる。
退屈といえば退屈だし、オフビートなんだなと自分を納得しようとすれば納得できる弛緩した空気に慣れ切った中、突然凄惨な暴力が画面を支配する。
この異様な緩急がたまらない。
また、えげつない暴力を見せながらも、登場人物に感情移入させるドラマの巧さもGOOD。


アフリカン・カンフー・ナチス

アフリカン・カンフー・ナチス

年の瀬にとんでもないやつがきた。


とにかく見ろ。見ないと影蛇拳を喰らわせるぞ!!


まとめ


今回挙げた作品以外にも、今年は上映数が少ないながらも粒ぞろいだったと思う。
洋画なら『フォードVSフェラーリ』『ミッドサマー』『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館』『屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ』『エジソンズ・ゲーム』『ランボー ラスト・ブラッド』『透明人間』
『TENET』『ブラッドショット』『ワンダーウーマン1984』とジャンルを問わず圧倒されるような作品ばかりだった。


お隣の中国韓国も負けていない。韓国では『EXIT』『暗数殺人』『PMC ザ・バンカー』と見る者を飽きさせないエンタメ作品が豊富だった。
中国からはあの人気シリーズの最終作『イップマン4 完結』と中国アニメの底力を見せつけられた『羅小国戦記』がある。


日本も負けていない。『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』『プリズンサークル』のドキュメンタリーには感嘆されるばかりだった。
なによりも『劇場版鬼滅の刃 無限列車編』だ。こんなご時世でありながら300億を超える興行収入には驚かされるばかりだった。
こんなクソミソになった世の中で一際輝くグッドニュースだった。もっとシャカリキ働け炭治郎。日本経済の柱になれ。
とにもかくにも来年は今年よりはずっと良い年になることを祈るばかりだ。
2021年の映画を楽しみにしながら年を明かすことにする。

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