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世を去った友だちに

立夏の直前、春の終わり。
あなたはこの世を去ったそうですね。

思えば私たちが出会ったのは13年前。同じクラスになることは一度もなかったけれど、生徒会長と学級委員長として知り合い、気付けば仲良くなっていました。中2の学年末試験では二人とも数学の点数が思わしくなく、一緒に苦笑い。中3で二人同時に初めてのオール5を取って歓喜。そして周りからの評価には肩を竦めあいました。私たちだけで共有した感覚があった、と言うと大袈裟でしょうか。

卒業後はめっきり会うことが減ったけれど、たまに連絡を取ったり、高1の冬には初日の出を一緒に見たり(いやうまく見えなかったんだっけ)。なんだかんだ関わりは途切れずにいた気がします。そうして横浜のドが付く田舎で会ったのは、私たちが20歳くらいの頃でしょうか。雪崩の如き勢いで話すあなたは、今まで抑えていたものが溢れているようでした。少し戸惑ったけれどすぐに慣れた私の適応能力、褒めてほしいです。あれから私たちは同じ勢いで早口に話すようになった気がします。

それからあなたはあちこち行って帰ってきて、私はカンボジアに行って帰ってきて、暫くぶりに地元で会った日を覚えていますか?お互いにメイクしあって、似合わない色にあえて挑戦して、私にとってはただ楽しいだけじゃない美しくて繊細な時間でした。そしてあなたはリラックスした笑顔を見せてくれました。あの瞬間を残したセルフポートレートは今、一段と特別なものに感じられます。

最後に会ったのは去年の夏でしたね。渋谷でランチをしてから、ストリートピアノに向かいました。数年ぶりに聞いたあなたのピアノは、やっぱりうっとりするほど美しかったです。実はあのときピアノに誘って良いものか迷ったのだけど、演奏後に優しく笑うあなたを見てすごく安心した私がいました。思い返すと雑踏の駅ナカに響く甘美とも言うべき音楽は、あなたそのものだったのかもしれません。

訃報に接して数日後、noteを覗きにいきました。でも全部消していましたね。このとき私はやっとあなたがいないことを理解して、惜しい気持ちが湧きました。もっと読みたかった。今までの文章も新しい文章も、もっと読ませてほしかったです。あなたの世界を教えてほしかったです。辛うじて見つけた別アカウントの一編の詩、大事に読み重ねていきます。

あなたは本当に稀有な存在です。だからこそ、無粋であることは百も承知で「なぜ?」と聞きたくなってしまいます。なぜその扉を開いたのか、もしくは扉が開いてしまったのか。でも私には想像することすら憚られます。あなたの世界はあなたのもの。大切にしたいです。

私はもう少し頑張ってみます。「死なないでの先」も探してみます。今度会ったら、また溜まった話を怒涛の早口で共有しましょう。楽しみにしてるね。またね。

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