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2020.7.17 WW2と米中覇権に共通する大戦略

アメリカのポンペオ国務長官は7月13日、南シナ海のほとんどを自国の領海とする中国の主張を違法と宣言しました。

拙生の記事を何度もお読み頂いている皆さんはご存知かと思いますが、2018年から米中の覇権戦争が始まりました。
「南シナ海における中国の覇権を阻止すること」
これも、覇権戦争の一環です。

ところで、アメリカはいつ「中国退治」を決断したのでしょうか?

バランシングとバックパッシング

中国のような侵略的な国をどう扱うか?
大きく分けて二つのアプローチがあります。

一つは、バランシング(直接均衡)。
これは、自国で侵略的な国と対峙します。
もちろん、「一国だけで戦う」という意味ではありません。

しかし、侵略的な国と戦うための同盟(=バランシング同盟)を自らがイニシアチブをとって形成します。

もう一つのアプローチは、「バックパッシング」(責任転嫁)です。
これは、自国ではなく他国を侵略的な国と戦わせるのです。

では、大国は「バランシング」(直接均衡)と「バックパッシング」(責任転嫁)のどちらを好むのでしょうか?

リアリズムの神様である政治学者のジョン・ミアシャイマー教授は、「バックパッシングを好む」と断言しています。

その理由は、彼の著書『大国政治の悲劇』にも書いている通り、他国に責任を押しつけるバックパッシングの方が安上がりだからです。

これは、第2次大戦時の欧州戦線の様子を見れば分かりやすいです。

皆、ヒトラーは危険な存在と知っていました。
しかし、誰も「自分が責任を持って退治する」とは考えていませんでした。

イギリスとフランスは、
「ナチスドイツとソ連を戦わせて、両方滅ぼそう」
と考えていました。

ソ連は、
「ナチスドイツと米英を戦わせて疲弊させ、両方を共産化してしまえ」と考えていました。

アメリカは、
「共産ソ連とナチスドイツが戦って共倒れになればいい」と考えていました。

要するにアメリカ、イギリス、フランス、ソ連、皆がバックパッシング(責任転嫁)を追求していました。

では、アメリカはいつ参戦を決意したのでしょうか?
別の言葉でいえば、いつバランシング(直接均衡)を決意したのか?

ミアシャイマー教授によると、1941年6月という答えでした。

なぜかというと、この年この月にナチスドイツがソ連を攻撃しました。

アメリカは、
「ドイツが西からソ連を攻め、日本が東からソ連を攻める。そうすると、ソ連は消滅するのではないか?」と恐れました。

それは、アメリカにとって困ることなのでしょうか?
当時のルーズベルト米大統領の周りには、ソ連のスパイがうじゃうじゃいたという説もありますが、今回はその話はしません。

リアリズム的に、戦略的に「ソ連が消滅するとアメリカは困る」のか?というと…

ミアシャイマー教授の解釈によると、ソ連消滅でドイツは欧州の覇権国家になる。
日本はアジアの覇権国家になる。

西半球の覇権国アメリカ、欧州の覇権国家ドイツ、アジアの覇権国家日本。
世界は三国鼎立の状態になり、しかも日本とドイツは同盟関係にあります。

つまり、ソ連が消滅すると世界は、アメリカ対日本・ドイツ連合となります。
これは、アメリカですら「ヤバい状態」と認識しました。

そしてアメリカは、
「日本を徹底的に叩いて二流国に転落させてしまえ!」
と決意しました。

ミアシャイマー教授は、このような歴史観で見ています。

アメリカが中国退治を決断した時期

では、アメリカはいつ「中国退治」を決断したのでしょうか?

エリートたちが決断したのは、2015年3月のアジアインフラ投資銀行(AIIB)事件直後でしょう。

この時、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国など、いわゆる親米諸国がこぞって中国主導のAIIBに入ってしまいました。

アメリカはこの時、中国の影響力の巨大さを認識したに違いありません。

かつて、日本やドイツについて考えたように、
「中国は新たな覇権国になりつつある」
と恐怖したはずです。

そして、2015年と2016年には、米中関係が非常に悪化しました。

しかし、トランプが大統領になった2017年、米中関係は多少は良くなりました。
理由は、金正恩が暴れていたからです。

トランプは、習近平に金正恩を抑えてもらおうと思いました。
ところが2018年になると、習近平には金正恩を抑える気が全然ないことが明らかになりました。
それで、トランプは金正恩と直接交渉することにしました。

仲介役としての中国が必要なくなったことで、2018年7月「中国製品への関税引き上げ」を宣言。
彼は、同年8月と9月にも関税を引き上げました。

そして、10月には歴史的な「ペンス反中演説」があり、ここから米中の覇権戦争が始まりました。

今年2020年、状況はますます悪化しています。
中国は、
「武漢に新型コロナウイルスを持ち込んだのは米軍だ!」
というフェイク情報を拡散し、アメリカ政府を激怒させています。

アメリカは少し前まで、
・尖閣問題
・台湾問題
・香港問題
・ウイグル問題
・チベット問題
・南シナ海問題
には、ほとんど関心を示していませんでした。
はっきり言えば、アメリカに直接関係はないことだからです。

しかし、「中国退治」を決断した後は、これらすべての問題に強い関心を示しています。

なぜか?

全て、中国を退治できるネタになるからです。

「アメリカが中国退治を決意した」
このことは、中国の侵略に怯える国々や民族にとっては朗報です。

たとえば、日本をはじめ台湾、ベトナム、フィリピン、その他東南アジア諸国、インド、ブータン、チベット、ウイグル等々。

しかし、日本の政治家は、
「世界で何が起こっているか」
を上っ面程度しか知らない状況です。
だから、二階氏のような
「習近平を国賓として来日を実現させよう」
などと、未だに主張する輩もいる始末です。

私たちは、今二つのことを知っておく必要があります。
一つは、米中の覇権戦争が起こっていること。

もう一つは、日本が米中の覇権戦争で、勝つ側に立つアメリカにつかなければならないこと。

だから、習近平の国賓来日などは論外です。

ウイグル人100万人を強制収容し、女性には不妊手術を強要し、「民族絶滅政策」を行っている現代のヒトラー:習近平。

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ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の「断種」ジェノサイド

皆さんは、このような男を国賓として天皇陛下に会わせることが適切だと思いますか?

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