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【《注意》優しい介護士は必要ない】シュン

皆様は理想の介護士像としてどんなイメージを持たれているだろうか。
笑顔で元気な挨拶ができて、力持ちで、気遣いができて、話をする時は腰を下ろし、目と目を合わせて親身に聞いてくれる。そんなイメージを持たれているのではないだろうか。

今日は「優しい介護士はもう必要ない」という事をお話ししたいと思う。題名に驚かれた方も多いのではないだろうか。
人は「えっ」と思うようなネガティブな情報に吸い寄せられるという心理的傾向がある。今回はある意味そうした人の傾向を利用したところもあるが、最後まで読んで頂ければ表題の意味に納得して頂けることと思う。

それでは早速内容に移ろう。
今回は「優しい介護士はいらない」というテーマについて2つの視点からお話しする。

【優しさはあくまで技術】

まず前提として、仕事でのお客様に対する「優しさ」はあくまで介護を行う上でのスキルである事を忘れてはならない。この業界で働く人の適正として、どうしても「優しく人の痛みがわかる人」というイメージがついて回る。しかしそれは介護士としての適性というよりも、どんな人でも目指すべき人間性の話ではないだろうか?

介護士の優しさはあくまでスキルであるべきだ。なぜなら、相談援助をする上では利用者様に対する自分の感情をコントロールする事が強く要求されるからだ。

相談援助を行う上での行動規範として必ず学習するのが「バイステックの7原則」である。この中にある「統制された情緒関与の原則」においては、「援助者は自らの感情を理解し、統制する事で平常心を保ち、過度な感情移入をしないように努める」事が重要とされている。
特に福祉の現場では、高齢者や障がい者といった社会的弱者を相手にする事で、自分の感情が過度に動きすぎる場合もある。

過度な感情移入は相手に対する「依存」を生み出し、結果として専門職としてするべき役割が果たせなくなってしまう。私も過去に「距離感が近すぎる」と感じていた職員が周りにいた事があるが、こうした職員は利用者様に対して勝手に依存し、必要以上の優しさを注ぎ、勝手に裏切られたと解釈し距離を置こうとしたりする。あまりにも自分勝手な関わり方であると言えよう。

もちろん、人の痛みを理解できるのは、道徳としての正しい価値観である。
しかし、優しいだけが介護ではない。介護職員はあくまで専門職だ。
本人が最期まで主体的に自分の人生を歩んでいく為に、時に厳しい決断を迫られる事もある。

そして自分の力ではどうしようもない現実もある事をしっかりと胸に刻んでおかなければならない。「他人に寄り添う」とは生半可な気持ちで実行できるほど甘くはないのだ。

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【優しさだけでは組織は成り立たない】

今度は少し視点を変えてみる。

介護労働安定センターの2017年度「介護労働実態調査」によると、介護職員の離職率は16.7%となっている。これは、全産業の平均15%と比べると決して飛び抜けて悪いというわけではない。しかし、問題はその内訳だ。
実はこのデータから読み取れる内容として、入職後1〜3年以内に職場を辞めてしまう割合が高いという問題がある。
介護職員を志したものの、そのイロハも覚えきらぬうちに辞めてしまうという残念なデータを示している。

この事実が意味するのは、介護業界には優秀な中間管理職が育ちにくいというものだ。
介護職員と経営者をつなぐ中間管理職の役割は、事業所の運営に欠く事が出来なものである。その存在が希薄になっているという事は、組織としての脆弱さを表している。
事実、私の周りでもリーダーに配置されたものの自ら「降ろしてほしい」と上司に頼みに行く人のケースを何度か見てきた。こうした事例はなぜ起こってしまうのか。

結論を言えば、リーダーが「優しすぎる」からである。

リーダーは誰からも好かれる必要はない。これは残酷な現実である。いや、逆に言えば、嫌われるからこそ人より高い給料を貰っているのだ。
リーダーがすべき事は「結果を出す事」である。
結果とは例えば、

・利用者様、家族の満足度が上がる事
・利用者様の自立を支援できている事
・収益を出している事
・会社に新しい価値を提案している事

こうした項目にしっかりコミットメント出来ているかどうかである。

もちろん結果を出し続けていくためには、結果的にチームの信頼を得ることが大切になるものの、それがそもそもの目的ではない。
チーム全体が「右に行こう」というムードであっても、リーダー1人だけ「左に行こう」と言わなければならない時もある。こうした場面で「優しさ」しかないリーダーは苦しむ事になる。
しっかりとしたチームの目標を設定し、そこに向かうためのチームマネジメントができてこそ真のリーダーである。当然、馴れ合いにならないための距離感も必要で、はっきり言って孤独を受け入れることのできない人には向いていない。

当然、人が理論よりも感情で意思決定している事は重々理解しなければならない。誤解しないでほしいのは、何でも上から目線で指示をすれば良いという意味ではない事だ。チームのメンバーを日頃から承認し、しかし媚びるわけではない。自分の理想をしっかりと伝え、妥協なくそれに突き進む。
こうした努力が実らない時は、上司からリーダーを外されるか、チームのメンバーからクーデターが起きるか。組織の原理原則は実にシンプルである。もし、自分の理想とする考えが組織に求められないなら、もはや環境を変えるしかないのだ。

少し、話が脱線してしまったが、「優しいだけの介護」では如何に厳しい世界かがご理解いただけたかと思う。特に「その他大勢では嫌だ。成長して自分で理想とする介護を目指したい」と考えている方にとっては大変な道のりがある事だろう。

しかし、「自分の理想とする介護」を実現することこそが、そもそもあなたの中にある「最大多数の最大幸福」のはずだ。

あなたが本当の意味で人の幸せを願う「優しい」人であるのならば、どんなに自分が追い込まれても、胸に刻んだ信念を貫く覚悟を決める必要があるのだ。

シュン

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