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【作品解説】映画『子ろも』ー恐怖に抗えなかった母親

ポップな映像とは裏腹に、シュールで不気味な展開が印象的なスリラー映画『子ろも』。

母親を取り巻くツタや、度々庭に登場する子どもたちは何を意味していたのか?
今回は映画の様々な謎を解明していきます!

あくまで個人の見解になりますので、また別の見解も多くあるかと思います。
ぜひ皆さんのご意見も教えてください☺️

◎統合失調症の母

本作に登場する母親、メアリーは何度も幻覚を見ていたり、潔癖症(強迫性障害)であることが伺えますよね。このことからメアリーはおそらく統合失調症を患っているのではないかと考えられます。統合失調症とは、幻覚が見えたり、異常な思考、現実世界とのつながりの喪失がある精神疾患と言われ、それは強迫性障害と関連があることも解明されています。
つまり私たちが見ているのは現実とメアリーの幻覚が入り混じったものなのです。

例えばこちらのシーン。

メアリーがシーツを外に干していると泥のようなものが投げ込まれます。

動揺したメアリーが庭の奥の森に足を運びますが、戻ってくる時には…


(ピンぼけの画像では裏表になっていますが…)泥で汚れていたはずのシーツは真っ白のまま!

また物語冒頭、学校の課題で虫を取りに行くという息子のマークは、母・メアリーの言う「あの子たち(庭にいる子どもたち)」の存在を知りません。彼らもまたメアリーの幻想に過ぎないのかもしれません。


◎子どもたち

庭に何度も登場する4人の子どもたち。
彼らの発言にも重要な秘密が隠されています…!

それは「4人はかつてメアリーに殺害された子どもたち」だということ!!

これを裏付けるものとして幾つかの描写がなされています。

・冒頭、メアリーが「ここから出て行って」という台詞に対して、子どもたちの「ここが家だよ」という発言

この時の複雑そうなメアリーの表情にも注目です。

・「姉はカエルとキスして死んだ」

「カエルの王子さま」というグリム童話があります。詳しい内容は割愛させていただきますが、最後には王女さまがカエルにキスしたところ美しい王子さまの姿になった、王子さまは悪い魔女に呪われていたのだった。というお話です。
潔癖症のメアリーは、娘が童話への憧れからカエルとキスをしたという事実を、汚らわしく思い殺害…⁉︎
また子どもたちのセリフから彼らが兄弟であることもわかります。

・動物の頭に変わった子どもたち

キツネ、ヤギ、ネコ、ワシはどれも獰猛な動物として有名です。ヤギはキリスト教では悪魔の化身とされていたり、ネコはストレスによって凶暴化することもあると言います。つまりメアリーからすれば、獰猛な動物に見えた子どもたちは殺さなければならなかったのでしょうか…?


・マークが殺された後、バケツの中に浮かぶ5つのリンゴ

実は英語で「The apple of my eye」という言い回しがあります。これは直訳すると「私の目の中のリンゴ」となりますが、「大切な人や物」「目の中に入れても痛くない存在」という意味で一般的に子どもや孫に使われることが多いのだそうです。メアリーにとっても愛おしい存在だったはずの子ども(リンゴ)が、浴槽を連想させる白い容器の中で水に浮いています。
これは浴槽で殺されたマークや以前に殺された子どもたちが溺死していることを暗示しているのではないでしょうか。


◎緑のツタと赤いネイル

メアリーの夢の中でどんどん体に巻きついてくるツタには強烈な印象が残りますよね。そしてもう一つ印象的なのはいつからか彼女が赤いワンピースを身に纏い、手足の爪に赤いネイルを施しているところです。

メアリーの爪には何も塗られていないのですが…

 物語冒頭の落ち葉を拾うシーンや

つたに絡まれるシーンでは赤い爪に。


緑の補色(正反対の色)は赤ですよね。生命を感じさせる緑色と血や内臓を連想させる赤色。
枯葉は緑(生命)の葉が枯れる、つまり死んでしまった子どもたちを意味します。すると緑の生い茂るツタはマークの生きている証。
つまり、
(マーク:生きている子ども)
茶色(子どもたち:死んだ子ども)
(母親:緑とは対照的、対立関係)
と色で分類されていることも考えられます。ただしそれもメアリーの統合失調症の症状の一つ。実は妊娠を経た自身こそ穢らわしい存在だと思っていたことも考えられますよね。爪に何も塗られていない時は「普通のお母さん」だったのかも…。

◎まとめ

子どもを愛するがあまり、汚れてしまうことを恐れた母親。メアリー自身も息子のマークも、浴槽でゴシゴシと体を洗われるシーンは荒々しく、痛々しいもの。
世界の誰か、何かに汚されてしまうくらいなら、いっそのこと自身の手で殺してしまおうとしたのでしょうか。
物語終盤、メアリーはまたキャベツ畑にタネを植えます。なぜなら「子どもはキャベツ畑から来るから」です。しかし植えたはずのタネは家のドアに投げられてしまいました。もうこれ以上の悲劇を繰り返さないため、子どもたちなりの抵抗だったのかもしれません…。


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